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第2話 旧友との再会

 ヒスクは周囲を見渡すが、人の気配が全くない大草原が広がる土地に前世の親友である魔王と一緒にいた。


「ここはどこなんだ?」

「適当に人がいない無人島へ移動した。それより、お前とこんなところで再会したのは驚いたぞ」

「それはこっちの台詞だ。召喚された魔王が前世の親友って予想もつかんわ」


 ヒスクはその場に座り込むと、魔王も隣に座って現状の確認をする。

 今立っている場所は大陸から離れた小さな無人島のようで、とりあえず落ち着ける場所を選定して魔法で移動したようだ。

 漆黒の鎧に身を包んだヒスクを魔王は見惚れて褒めちぎる。


「その格好、似合っているじゃないか。まさに暗黒騎士って感じの雰囲気が出ているぞ」

「本物の暗黒騎士だよ。小林も立派な角と妖艶な雰囲気で魔王の貫禄があるよ」

「角は正直言うと邪魔なんだよな。髪を洗ったりする時とか寝返りを打った時に朝起きたら変な物が角に刺さってたりするからな」

「切っちゃえば?」

「角は魔力を溜める装置みたいな役割があるから、切ったら魔法が全然使えなくなってしまう」

「そんな役目があるのか」


 ヒスクは魔王の角を改めて眺めると、魔王は恥ずかしそうにして顔を赤く染める。


「そんなにジロジロ見るなよ!」

「ははっ、恥ずかしがり屋な性格は前世と変わらないな」

「お前も中身は全然変わらないな。高校生のままじゃないか」


 二人は前世の高校生に戻ったような感覚で、昔の事を思い出しながら会話が弾んだ。


「この異世界に適応しようとしたけど、やっぱ無理だわ。特に有力貴族の息子と縁談なんて話もあったけど、断るのに苦労したよ。男を抱くとか勘弁だね」

「それは俺も同意。力を誇示する魔族の連中とか押し寄せて結婚してくれって懇願に来る連中がいたけど、全部追い返してやったよ」


 異世界転生して記憶を継承した弊害とも言えるが、男女の関係についてはお互いに苦労したようだ。

 小林が異世界転生したきっかけは普段の不摂生がたたって外出中に亡くなったそうだ。

 気が付くと、魔界で魔族として異世界転生を果たして魔王に君臨することになると、召喚の儀式に呼び出されて前世の親友と感動の再会を遂げた。

 お互いの立場を理解し合うと、魔王はヒスクに頭を下げる。


「すまない。お前の生活と言うか人生を無茶苦茶にする結果になってしまった」

「ああ、別にいいよ。実を言うとあの国とは見切りを付ける予定だったからな。こっちこそ勝手に呼び出して悪かったな。やっぱり、その……召喚されたからには人間を滅ぼすまで帰らない系か?」

「魔族の連中にはそんな考えの奴がいるけど、俺はそんな物騒な真似はしないよ。術者が正式な契約を結んで命令されない限りは安心していいよ。それに今回の召喚は不安定で契約を交わさない方法で呼び出したから、俺を命令できる術者は存在しない。俺が召喚されなかったら、あの場にいた神崎や他の連中は皆殺しだったよ」

「マジか。地味に危なかったんだな」


 儀式に失敗して国が幾つも滅んだと伝承は残されているが、下手したら伝承通りになっていたかもしれなかった。

 心の底で親友が召喚されてよかったとヒスクは安堵する。


「魔界に帰っても、殺伐とした日常が待っているだけだし、罪滅ぼしじゃないけど、しばらく地上でお前と一緒にいてもいいか?」

「水臭いな。大歓迎に決まっているじゃないか。色々とまだ話したいこともあるし、とりあえず俺の用意した別邸に移動しよう」


 ヒスクは喜んで魔王の手を取ると、固い握手を交わした。

 魔王は魔法で地図を取り出して、ヒスクが用意してある別邸までの座標を確認すると瞬間移動の魔法を唱えた。

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