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第19話 親友同士の語り合い

 食事を終えて、キュールは食器の片付けに入ると、ヒスクは自室に魔王を連れ込んで相談を始める。


「すまないが、キュールが学校へ通う事になったら、魔法で送迎を任せてもらってもいいか?」

「それは全然構わないが、お金は大丈夫なのか?」

「正直言うと、厳しいな。街で仕事を探してくるよ」

「親バカだなぁ。俺も仕事を探すから、二人で働けば学院へ通わすことはできるだろう」

「でも……」

「ここで厄介になっているんだ。国を滅ぼしたり誰かを殺したりと命令されるより遥かにマシだよ」


 召喚された魔族は大抵の場合、ロクな願いしかしない召喚者と当たる割合が多い。

 自分勝手な願いより、人の為になる願いを叶える方が魔王もやりがいがある。


「すまん、恩に着るよ」

「気にするな。問題は仕事だけど、あれはどうだ? 冒険者ギルドでドラゴン退治とか難易度が高そうな依頼をこなしていくとかさ」

「そんなに都合よくドラゴン退治がいつもあるとは限らないし、冒険者は収入が安定しないな」


 ヒスクが暗黒騎士だった頃、部下が暗黒騎士を辞めて冒険者に転身したのを思い出した。

 一攫千金を狙って冒険者になると豪語していた部下だったが、それなりに今も冒険者として活躍しているのか、または依頼に失敗して亡くなってしまったのか、どうなったかは知らない。

 冒険者とは危険が伴う仕事で、魔物退治や事故に巻き込まれて亡くなるケースは珍しくもない。


「俺は魔族の魔王だから、魔物退治はボーナスステージみたいなものだよ」

「その内、ギルドでお前の討伐依頼がされそうで怖いよ」

「そうなったら、勇者でもぶっ潰して俺の懸賞額が上がったところで、お前に退治されれば金を残せるな。英雄扱いされて今後の生活も安泰だろう」

「冗談でも親友を討つような真似はしないよ! そんな金でキュールを学院に通わせたり、今後の生活を手に入れても嬉しくもない!」

「馬鹿、声がでかいよ。全く……生真面目な性格をしているな」


 魔王ならギルドの討伐依頼を簡単にこなすことはできるだろう。

 しかし、正体がばれて逆に討伐依頼される側に回ったら目も当てられないし、こうして一緒に暮らすこともできなくなる。


「まあ……とにかくだ。ここにはキュールと同い年の話し相手もいないし、あいつの将来を考えたら街で勉強した方がいいと思う。俺のようになってしまわないようにな」

「……キュールちゃんもそうだけど、お前にも未来がある。お前の人生は詰んでないし、悲観するな」

「俺は国や家も捨ててここに流れ着いたんだ。これからの人生、キュールに俺のような惨めな思いはさせたくない」

「言いたくなかったが、お前はキュールちゃんを出汁にして現実から逃げているだけだ。そんなものは只の自己満足なんだよ」

「だ……黙れ! 魔族のお前に俺の気持ちが分かってたまるか!」


 ヒスクは魔王に詰め寄り、胸倉を掴んで怒りをぶつける。

 ヒスク自身、この怒りを魔王に向けているのは筋違いだと分かっている。

 魔王の言っていることは正論で、誰かに指摘されるのが怖かった。

 魔王はそのままの状態で言葉を続ける。


「魔族になってもよ……人間だった心は捨てずに持ち合わせているつもりだ。国や家を捨てても俺の知っている親友は自力で復活するタフな野郎だ」

「お前の見込み違いだよ……俺はそんなに強くない」

「いいや、強いね。お前はお前が思っている以上に凄い奴なんだよ。本当に見込み違いなら、その時は魔界に帰らせてもらうよ」


 ヒスクは魔王の胸倉を掴んでいた手を引っ込めて、俯いたまま魔王の言葉に耳を貸した。


「どうしてだろう……何の根拠もない精神論なのに、お前が言うと納得してしまうよ。それも魔法の効果か何かか?」

「そんな魔法はねえよ」

「そうか……すまなかったな」

「まあ、人生なんてなるようになるさ。気負いしたところで損するだけだ。良い仕事もきっと見つかるさ」


 魔王の言葉でヒスクは胸につかえていた気持ちを取っ払ってくれたような気がした。

 ヒスクは魔王に感謝の握手をすると、一つだけ訂正を入れた。


「そうだな。仕事を探して頑張るよ。でも、今の俺は女性だからタフな野郎はどうかと思うぞ」

「はぁ……ほんと生真面目な野郎だ」

「だから野郎じゃないってば」


 魔王はめんどくさくなったのか、耳を塞いで部屋を出て行った。

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