第15話 探索
火の後始末をして、探索の続きを開始する。
道中で木に擬態したトレントやトカゲの容姿をした二足歩行のリザードマンといった魔物に襲われたが、魔王が杖を一振りすると魔物達を制圧していった。
魔王は周囲を見渡すと、目当ての獣がいないかチェックする。
「魔物ばかりで、肝心の猪や兎がいないな」
「魔物が獣の住処を荒らしているのかもしれないな」
「弱肉強食の世界は魔界もここも同じか。それにしても、予想以上に魔物の数が多いな」
「帝国の地方部隊もロンソールと国境に近いここまで遠征して治安活動まで手が回らないのだろう。戦争になる前に下見をしていた時は帝国の監視が手薄な村で治安もそこそこ安定していたが、戦争状態で国全体の治安維持の機能がマヒしているのかもな」
魔物側も戦争状態の治安活動が疎かなこの状況を利用して勢力を伸ばしている。
ロンソールでも、地方部隊の戦力を治安活動から対帝国相手に切り替えて、魔物による被害報告が増えて村の一つや二つが全滅したと言うのは聞き及んでいた。
魔王は深い溜息を付くと、潜んでいた魔物に魔法を唱えて業火の火球を浴びせる。
「冷静に分析してくれるのは有難いが、じゃあ肉は諦めるのか?」
「このまま探索しても、魔物狩りになるのがオチだな。肉は街に出向く機会があったら、買いに行くか」
「それなら、さっきの川で川魚を捕まえて保存食にした方がいいかもな」
「それが無難だな。期待させといて悪かったよ」
ヒスクは魔王に頭を下げて、来た道を引き返し始めた。
肉を断たれた以上、残ってる楽しみはキュールが作ってくれた弁当だ。
魔王の原動力が弁当に移り変わると、重かった足取りも軽くなって元気を取り戻した。
「川の岩場に到着したら、昼食にしてキュールちゃんが作ってくれた弁当を食べるか。どんな弁当だろうな」
「あれだけ川魚を食べて、まだ弁当も食えるのかよ」
「俺の場合、魔力を消費すると食欲が湧いてくる」
「今はお互いに女性なんだから体重管理は気を付けた方がいいぞ」
「ご忠告どうも。魔力の消費はカロリーの消費と変わらんから、今まで魔法をぶっ放した分を計算すると、弁当を食べても問題なしだ」
魔王の魔法のおかげで、道中の安全を確保できたのは事実だ。
本人の持論だが、今まで魔界でも生き残って現状のスタイルを維持しているのだから問題はないのだろう。
川の岩場まで引き返して来ると、二人は岩場に再び腰を下ろして昼食にする。
竹筒に包んだ弁当を開けると、二つのおにぎりがあった。
二人は手を合わせて食前の挨拶を済ませると、おにぎりにかぶりついた。
「塩加減が良い具合で美味しいな」
魔王はおにぎりを頬張りながら感想を述べると、ヒスクもそれに同意する。
「たしかにな」
「キュールちゃんのためにも……やっぱり肉は用意したいな」
「気持ちは分かるが、今回は諦めるしかないだろう」
朝早くから仕度して作ってくれたキュールのためにも、ヒスクは魔王と同じ考えだが、肉の代わりに川魚で我慢してもらうしかない。
「瞬間移動の魔法で、街まで肉を仕入れに行こう」
「いや、持ち合わせの金がないから移動しても意味ないぞ?」
「路銀は……川魚を街で売った後、肉に変えればいい」
魔王は妙案を浮かべると、実行に移すべく再び川魚を獲り始めた。
そんな上手く事が運ぶものかなと懐疑的なヒスクだが、他に代案もないので魔王の妙案に乗ることにする。
川魚が売れなければ、そのまま持ち帰って保存食にしてもらえばいい。
「よし! これだけ獲れればいいだろう。街に移動するぞ」
魔王は川魚を大量に獲ると、瞬間移動の魔法を唱えて街まで程近い街道へ出て来た。




