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第13話 二人の関係?

 夕食が出来上がると、ヒスクと魔王は居間のテーブルに座った。

 オセロの結果は予想に反して、引き分けに終わる形となってしまった。


「二人共、山菜料理はいかがてすか?」


 キュールは二人に料理の感想を訊ねると、ヒスクはヨモギの天ぷらを口に入れて満足気に答えた。


「とても美味しいよ。これだけ作るのは大変だっただろう?」

「ヒスクやマオが美味しく食べるのを想像したら、苦じゃありませんし、むしろ料理は楽しいですよ。まだ沢山ありますので、遠慮なさらずにおかわりして下さい」


 台所から見える追加分の山菜の天ぷらが見えると、キュールは台所に戻って次々と料理を運ぶ。

 たしかに美味しいのだが、おかずが大量に盛られた山菜の天ぷら、炒め物だけでは正直飽きてくる。

 オセロの勝負に勝っていたら、山菜を一人で完食する事態になっていただろう。

 それは魔王も同様で、小声でヒスクに話しかける。


「美味しいけど、この量はさすがに堪えるな」

「村周辺で調達できる食材だと限られてくるからな。肉は野性の猪でも捕まえるか魚は川が近くにあるから川魚を獲りに行くしかない」


 村の外には魔物も出現するので、猪や川魚を獲るのも一苦労だ。

 自給自足できる農地を所有している村人にとって、畑や牧場は食いつなぐ為の生命線と言える。

 課題は色々あるが、豊富な料理の知識と腕があるキュールのおかげで、食べられる山菜の見分け方や美味しい料理を作ってくれるだけでも有難い事だ。


「キュールがいなかったら、この山菜も食べられていたか怪しいものだよ。文句を言ったら、罰が当たるよ」

「まあ……そうだよな。本当にキュールちゃんがいてくれて助かるよ」


 魔王はしみじみとキュールに感謝しながら、山菜料理に手を伸ばしていく。

 温かい食事とそれを囲んで食べる人がいるだけでも、幸運で恵まれているとヒスクは思う。

 台所からキュールは三人分の深皿を用意すると、そこにキノコ類がふんだんに盛られたスープを並べていく。


「調味料はあまり揃っていないので薄口かもしれませんが、体は温まりますよ」

「ありがとう。キュールも早く一緒に食べよう」


 ヒスクは椅子を引いてキュールを座らせると、三人はキノコのスープに舌鼓を打つ。

 改めて考えると、異世界転生をしてから食卓を囲んで料理を食べる機会は少なかった。

 両親とは仕事の都合で一緒にいる機会も少なかったし、数年前に両親が他界してから当主を務めるようになってから、食事は基本的に一人だった。

 顔見知りと落ち着いて食卓を囲むのは、前世以来かもしれない。

 ヒスクは二人の顔を交互に見ると、明日の予定を話す。


「明日は猪や兎を狩りに行くよ。マオも手伝ってくれるか?」

「美味い料理が食べられるなら、喜んで協力するよ」


 肉料理は燻製等にして保存食としても重宝するし、何と言っても食べ応えがある。

 魔王もやる気を起こしてくれたので、明日の狩りは期待できそうだ。


「それでしたら、私は留守番をして畑の様子と家事に取り組みますね。二人分のお弁当を作っておきますので、昼食に召し上がって下さい」

「それは助かるよ。私も料理ができたらいいのだが……」

「そのお気持ちだけ受け取っておきます。よろしければ今度、マオと一緒に簡単な料理をお教えしますよ」

「剣ばかり振るっていたが、包丁を握るのも慣れておかないとな」


 当主や騎士団長の立場で戦場を駆け抜けたり、使用人に給金を支払ったりと料理を作る機会は皆無だったが、今は地位や権力を捨てて、無職になった身だ。

 料理を含めた家事もこれからは学んでいかなければならない。


「剣を振るうヒスクは勇ましくて、私は大好きですよ!?」


 キュールははっきりと言うと、顔を赤く染めてしまった。


「私もキュールの料理は大好きだから、機会があればキュールにも剣の振るい方を教えるよ」

「あ……ありがとうございます」


 両手で顔を隠してしまったキュールは嬉しそうな声を上げる。

 お互いに料理と剣の指南を約束すると、魔王はそんな二人の様子を恋人同士の会話を盗み聞きしているような感じがして肩身が狭かった。

 

 夕食を終えて、ヒスクは自室でロシュから布教用に渡された書籍を読もうと一冊手に取る。

 小窓を開けて空気を入れ替えると、涼しい風が部屋全体を包み込む。

 月明かりの中で虫の声を背景に読書をしようとすると、ノックもせずに魔王が乗り込んできた。


「お前、キュールちゃんと付き合っているのか?」

「……えっ?」


 突然、何を言い出すんだこの魔王。

 オセロの続きでもやろうと乗り込んできたものだと思っていたが、ヒスクは一瞬思考が停止してしまった。

 冷静になってヒスクは反論する。


「あのな……キュールは俺にとって可愛い妹みたいな存在だよ。それに今は俺も女性だし、お前もそうだろ?」

「ほほぉ、ヒスクさんは百合って概念を持ち合わせていないと?」

「すまんが、お前が期待している展開はないぞ」

「じゃあ、俺が彼女の心を射止めても問題ないな」

「どうやって射止めるんだよ……」


 ヒスクは話しているのもバカバカしくなって書籍に目を移してページを開くと、魔王は不敵な笑みを浮かべる。


「問題です。私は何者でしょうか?」

「何者って、それは魔界の魔王……」


 そうだった。

 中身は異世界転生した親友でも、魔王である。


「魔法で私の虜にしちゃおうかなぁ」

「……そんな事したら、お前を討つからな」


 ヒスクは鋭い眼光で魔王を睨むと、まるで娘を嫁に出すのを反対する父親のようになった気分だ。

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