弱小土地神による徒然草より
日本に住むとある弱小土地神の独り言
※ 何かしらの宗教にこだわりがある方は 回避 してください。
※ 一神教の神様の扱いが酷いですが、話の展開上酷い扱いになっただけで私の思想とは関係ありません。
私自身はクリスマスにケーキを食べて除夜の鐘を打って神社に初詣に行く適当な宗教観です。結婚式は人前式でしたし、多分葬式は仏式だと思います。
ここは日本。
有りとあらゆる神々や妖怪が居心地良く暮らせる稀有な国です。
当然ながらアマテラス様や観音様の様な大きなお屋敷を国内に持っている神様が偉いのですが、だからと言って他の弱小神様や木っ端妖怪がいじめられることはありません。
そして国外から来日した神様やモンスターもいじめられることはありません。
元々日本には八百万の神や全国各地に伝わる多種多様な妖怪が受け入れられており、多少他所から来ていた見慣れない神様や妖怪がいたところで自分が知らないだけでしょ?という感じで受け入れられていました。
ただ、日本の神様や妖怪……長いのでまとめて"人"と書きましょう。ずっと"神様や妖怪"とか"神様やモンスター"なんて面倒過ぎます。
……話を戻します。
えー、他所から来た人達もその場その場では受け入れられてはいましたが、日本の人達の間では認知度が低いので、いても周辺地域の噂にはならず、日本の人達と親交を深めるのには苦労していました。
考えても見てください。
人々に全然知られていない"西洋竜のバハムート"の話をする光景を。
A「こないだかわった人に会ったんだ」
B「へー、どんな?」
A「なんか竜らしいんだけど、長くなくて…」
………
B「Aがこの間かわった人に会ったんだって」
C「へー、どんな?」
B「それがよくわかんないんだよねー。竜だって言うけど長くないらしいよ。全然想像つかない(笑)」
C「へー」
これではCはもうDとバハムートの話はしないででしょう。
このように、バハムートについて日本の人達の共通認識というものがないので、バハムートはどこへ行っても他所で目撃された"竜らしきもの"と同じものとして認識されず、毎回「私は西洋で竜と呼ばれるモンスター……妖怪?怪獣?の一種でバハムートと言います」という自己紹介から日本の人との付き合いを始めるのです。
これではいじめられないにしても快適とは言い難いですよね。
しかしここ最近人間の世界ではゲームや小説、漫画、アニメなどに世界各地の神やモンスター、精霊、妖精などがしょっちゅう出てくるようになり国外の人達の認知度が上がってきた為、以前にも増して日本の神様等などとコミュニケーションが取りやすくなって更に居心地がよくなりました。
人間が面白がって量産しているから神様達にも浸透しているのです。
例えば、先ほどのバハムート。
ある神様Aが「こないだバハムートに会ったんだ」言ったとしましょう。
昔ならばそれを聞いた相手Bは「何それ。どんなの?」と聞いたはずです。
しかし今では「ああ、黒い西洋竜でしょ。実物ってどんな感じ?」と言ってもおかしくないくらいに認知されているのです。
そしてBはどこかで黒い西洋竜を見かけたら「バハムートさんだよね?私Aと知り合いなんだ!」
と言うかもしれません。
あちこち旅行して現地の人に声をかけるようなフレンドリーな人にとってはとても気分が良いですよね。
ちなみにバハムートは魚だ、とかいうツッコミは聞きません。
すでに竜のバハムートは一人歩きをしているので魚のバハムートとは別人です。
八百万を超える世界中の人達にまったく被りのない名前をつけるなんてムリだし、日本にも太郎さんとか沢山いるんだからバハムートが沢山いても問題はないと思います。
とにかく。
こうして、元来の柔軟性や近年のサブカルチャーによって日本はとても居心地の良い国になりました。
ただ、たまに巡回に来る一神教の神様は怖いです。
彼らは天使を使ってあちこちの情報を集めてますが、たまに世界各地を回って自分の目で確認したりします。
っていうか、やたら日本に現れるのは彼らの威光が届きにくいからなのか、遊び場が沢山あるからなのか、どっちなんでしょうね!?
楽しげに歩いているのをたまに見かけますが、地元の私達にはとても迷惑です。
というのも、彼らは無断でそこら中を歩き回るし、好き勝手に振る舞うからです。
彼らは自分以外の神を認めていないので、他人はみんな自分の格下だと思っています。
なのでその土地にいる神様に挨拶もしないで好き勝手します。
彼らは「神は自分しかいないのだから神への捧げ物とはすなわち自分への捧げ物だ」と思っているので、勝手に祭壇に上がり込んで飲み食いしたり寝泊まりしたりもします。
……伊勢の神宮はアマテラス様に、出雲大社はオオクニヌシ様に捧げられたお宮です。
けっして一神教の彼らに捧げられたものではありません。
なに勝手に食っちゃ寝してってるんでしょうね。
ちなみに、好き勝手された神様達は……
近所の利かん坊を見る様に温い視線を投げて放ってあります。
彼らが近くに来たと聞くと大事なものを隠し部屋に仕舞って静観します。
というか彼らには家主の神様が許可した範囲のモノしか見えていないので、許可のない部屋はなんとなく嫌な感じがするので入りませんし、ほとんど認識もしてない様です。
そして長居ししようとすると段々居心地が悪い様な気がしてきて次の目的地に向かいます。
彼らは気が付いていないようで自分がその場に飽きたのだと思っていますが、実は家主の神様の幻術で追い出されているのです。
しかしなぜ2〜3日は彼らを追い出さずに静観するのでしょう?
日本の神様は優しいんじゃない〜、なんて思いました?
実は違います。
彼らは頑なに自分以外の神様を認めないので、話が通じないのです。
日本の人達がどう言っても、何度言っても癇癪を起こして「悪魔め、退治してやる!」とか叫び出すので面倒になったのです。
しかも彼らは幻術で作ったなんちゃって祭壇で食っちゃ寝して満足しているので実害なしと判断されました。
まあそれだけの用意をするのも面倒なんですが、一応日本にも彼らの信者がいるし、日本から追出す労力もかかるのでこの辺りで妥協したのです。
このようにチラホラと問題はありますが、日本は素晴らしく居心地の良い国なのです。
【弱小土地神による徒然草より 完】
初投稿の為、システムの使い方等がおかしいかもしれません。
気付いた方は教えていただけると嬉しいです。
誤字脱字、お話の矛盾などの指摘もお待ちしております。
ご指摘は可能な限り修正致します。