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97 科学部へようこそ その1

※以前の話を確認するのがめんどくさい人のための登場人物紹介


石川瀬利亜  三年雪組生徒でモンスターバスター。光一の奥様。一人ノリツッコミが特技のスーパーヒロインでもある。


伊集院聡(いじゅういんさとし)  三年雪組生徒で伊集院グループの次期総帥。思い込みの激しすぎる優等生でイケメン。異世界召喚勇者。


三條院楓(さんじょういんかえで)(カエデ・エターナル): 伊集院聡の婚約者で、旧華族。実は地底王国の姫でもある。ツンデレで聡をいじるのが大好き。


マグナ・エターナル: 地底王国『科学研究所』の所長で、王弟。地底科学や地底魔法を存分に操り、謎のロボット(笑)を(趣味で)開発している。

 「科学部の部員を募集しています!」

 どこかで見たことのあるような白衣のおじさんが下校する生徒達に声を掛けています。

 どうみても地底王国のマグナ博士にしか見えないのですが…。


 「おおっ!!そちらの素敵なお嬢さん!科学部へ入部してもらえないでしょうか?

 今なら巨大ロボットの操縦者の体験もできるという素晴らしい特典つきだよ♪」

 地底王国に行くたびに巨大ロボットの操縦を『押し付けてもらっている』気がするのですが…。

 それ以前にどうしてマグナ博士が風流院高校にいて、こんなことをしているのでしょうか?


 「おじさま!何をしておられるのですか?!!!」

 マグナ博士の姪にあたる、楓さんがマグナ博士を見つけて眉を吊り上げて叫んでいます。

 その隣で伊集院君が大きなため息をついています。


 「ああ、今度この学校で仕事をすることになったので、『仲間』と一緒に科学部を立ち上げたのだよ。はっはっは!」

 マグナ博士の発言に私たちには嫌な予感しかしないのですが…。


 「どうして地底科学研究所から風流院高校にトラバーユされたのか、その経緯を聞かせていただきたいのですが…。」

 恐る恐る核心に迫る質問をしてみます。


 「うむ、地底では悪さをする帝国があまりいなくなってしまってね。

 異世界へよく出入りしたりする窓口の風流院高校であれば、『ロボットを異世界で実戦投入…もとい、ロボット技術が異世界の平和のお役に立てるのではないかと思ったのだよ。

 おまけに地底だと『地中の活動が中心』で、空を自在に飛び回る巨大ロボットを活躍させる機会もなさそうだし。」

 とんでもない本音がダダ漏れしそうになってますが…。


 「風流院高校の校長や理事長がよく、その話に乗られましたよね…。」

 「ああ、祝校長も小早川理事長も私の話に『意気投合』してくれてね!三人で熱心に夜通し語り合ってしまったよ♪」

 うん、あのへっぽこスーパーヒーローコンビは相変わらず人を見る眼がないようです…。


 「というわけで、優秀な新入部員を三人確保できたわけだが…。」

 「いえいえ!まだ三人とも了承してませんから!!!」

 マグナ博士に私が思わず突っ込みを入れる。


 「では、科学部の優秀な部員と設備をご覧いただこう!

 三人とも喜んで入りたくなること間違いなしだから♪」

 マグナ博士が自信たっぷりに断言します。

 マグナ博士のドヤ顔を見て、非常に嫌な予感がしますが、私と楓さん、伊集院君は顔を見合わせると博士に付いていくことにします。



 「ここが、風流院高校科学部・地底科学研究所だ!!」

 いつの間にか風流院高校の地下に巨大な施設が作られていました。

 地底王国の研究所よりもさらに豪勢な作りになっています。

 色々な場所を映すモニターがあり、地球防衛軍日本支部の指令室を彷彿とさせる作りです。


 「そして、君たちと一緒に活動する、素晴らしい部員たちだ!」

 マグナ博士のセリフと同時に自動ドアが開き人影が入ってくる。

 …ええと、私たちはまだ入部したわけではないのですが…。


 「おおっ!!さすがはマグナ博士!優秀な人材を三人も確保されたのじゃな!」

 …どうしてドクターフランケンが部員紹介の時に入ってくるのでしょうか…。


 「瀬利亜はん!!!今度は絶対に暴走せえへんさらに強くてカッコイイロボットを開発できたんや!!」

 光ちゃんもこんなところで何をなさっておられるのでしょうか?


 「ということで、こちらの二人の『優秀な部員』を見て、入ってくれる気になったかな?」

 マグナ博士がニコニコしながら私を見ます。

 …ドクターフランケンはまだしも、光ちゃんが部員でのこの流れなら少なくとも私が入らないわけにはいかないようです。


 「…光ちゃん、『事情』を説明してもらえる?」

 おもしろそうな研究があれば、すぐ乗っかるドクターフランケンはともかく、光ちゃんが部員になるには事情がありそうだと感じ、光ちゃんの耳元で囁きます。


 「うん、実は地底王国の王さまからわてやアルテアはんに相談があってね。

 『地底王国周辺に侵攻の意志を持つ国がほぼなくなったから、『危険人物』のマグナ博士にそちらに行ってもらってうまくコントロールできないものか?』と言われたんや。

 まあ、才能はある人やから最初は風流院高校で、来年度からは風流院大学で研究を進めてもらって、何とか暴走を抑えよういうことで『関係者の間』で話がまとまったんや。

 瀬利亜はんも無理ない範囲で協力してもらえると助かるんや。」

 …なるほど、それなら納得できます。

 とすると、『その事実がマグナ博士にばれて支障が出ないため』に校長と充さんが協力してくれたわけなのだね。

 お二人をへっぽこと思って申し訳ないですね。


 なお、この事実を伝えたら、伊集院君と楓さんもため息をつかれながら協力してくれることになりました。


 「はっはっは!早速三人の優秀な部員が入部してくれてありがたいことだ。

 部員のみんなには素晴らしいお知らせがあるのだよ。現在は科学部の巨大ロボットは一体だけだが、遠からず一人に付き一台の巨大ロボットが支給される予定なのだ!

 どうだね?わくわくしてこないかい!!」

 目をキラキラさせながらマグナ博士が私たちに語りかけてきます。

 うん、わくわくどころか、頭がきりきりと痛んできます。

 伊集院君と楓さんも遠い目をしています。


 「では、まずは現在ある巨大ロボットについて説明しよう!

 これが瀬利亜ちゃん専用ロボット『シードラゴンロボ(科学)』だ!」

 マグナ博士が叫ぶと、部室のモニターに女性的なフォルムのカッコいい巨大ロボットが映し出されます。


 「どうしてわざわざシードラゴンロボの後に(科学)と付いているのでしょうか?」

 「うむ、瀬利亜ちゃん、いい質問だ。以前も合体ロボットで同じ名前のロボットがあったのだが、今度は一人乗りのさらに改良したロボットで、しかも『科学部のロボット第一号』なのだよ。だから、前のロボットと違うという意味も込めて(科学)という注釈をつけたのだ。」

 「名前を変えればよかったのでは?」

 「いや、『シードラゴン』なんとか…というように名前を付けるのにネタ切れ…もとい、初心に帰ろうと思ってね♪」

 うん、なんか聞いてはいけないことが聞こえたような気がしました。


 「まあ、(科学)を毎回つけてもめんどくさいので、これからはシードラゴンロボで統一しようと思う。それから、錦織部員が主題歌付きのPVを作ってくれたので見てくれたまえ♪」

 マグナ博士が言い終わると、モニターに別の映像が映りだします。



『 シードラゴンロボの唄 』


1 空を飛べるよ シードラゴン♪

海を行こうよ シードラゴン♪

プールサイドに シードラゴン♪

どこでも活動(オールマイティ)ロボ シードラゴンロボ♪


シードラゴンロボ シードラゴンロボ 地底へ潜るよ♪

シードラゴンロボ シードラゴンロボ シードラゴンロボ♪



2 宇宙怪獣 やっつける♪

地底ロボット 粉砕さ♪

どんなゴメラも 一撃さ♪

地上最強ロボ シードラゴンロボ♪


シードラゴンロボ シードラゴンロボ 乗り手も無敵さ♪

シードラゴンロボ シードラゴンロボ シードラゴンロボ♪


(※作者が歌詞も曲も適当に作って鼻歌で歌ってます♪)



 「シードラゴンロボが空を飛んだり、海を潜ったりするのはわかるんだけど、『プールサイドに腰かけている』のにはどんな意味があるの?」

 「プールサイドに可愛い女の子がいるのは『夏の風物詩』なんや♪」

 …なるほど…女性型の巨大ロボットがプールにいるのも風物詩なのですね…。

 あと、シードラゴンロボが敵をやっつけるシーンはまだしも、私がいろいろな相手を粉砕するシーンは見ていて恥ずかしくなるのですが…。



 私たち三人がPVを見て脱力していたら、科学部の自動ドアが開きました。

 それを見てマグナ博士が喜びます。

 「おおっ!新たな部員が来てくれたようだ!」

 …さて、新たな『犠牲者』は一体誰なのでしょうか?


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