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70 あるモンスターバスターの日記  (なぜか人生相談その3)後篇

 翌日は日曜日で、ちょうどよかったので、うちの家族ごと皇宮に招かれました。


 如月君はすでに我が家にも何度も来てくれていて、両親も弟も交際には賛成してくれていました。


 「こんなしっかりした真面目な青年とお付き合いできるなんてすばらしいわ!」

 と母は如月君をべた褒めし、

 「更紗姉ちゃんは天然でドジだから、隼人兄ちゃんみたいなしゃんとした人がサポートしてくれた方が絶対いいよ。おれも賛成」

 と二つ年下の(わたる)も賛成してくれ、

 「更紗はいい子だけど、かなりドジだからね。如月君みたいなしっかりした人にお願いできれば私も肩の荷が下りるよ。」

 と、父も非常に好意的に……私の評価がえらいことになっているのですが?!!


 特に航は童顔のくせに私より背が高く、私より成績がよく、私より料理がうまく、私より……がーーー!!!この完璧超人が!!!

 しかも完璧超人のくせに偉ぶったり、姉を馬鹿にしたりせず、むしろ私がいろいろやらかすたびに黙って後始末を……すまん、航!姉さんはあんたに助けてもらってばかりだった…。


 私以外の三人の家族はみんなよくできたお人よしの常識人なのです。

 ですので、如月君のことも旧家の御曹司…みたいにぼかして伝えていました。


 そんなわけで、アルテア先生たちに連れられて皇宮への旅…アルテア先生が皇城へのゲートを開けられた時からずっと呆然としながら三人ともついて来てくれてます。

 学校の先生がいきなり『どこでもドア♪』ですからね…。

 その後、如月君の『実家』の馬鹿でかいお城に顔パスで入っていくときはいつも冷静な航の目が点になっていたし。




 「どうぞ、気楽におくつろぎください。」

 現在は皇室の皆様と春日家の四人、そして付添いのアルテア先生と石川さんがテーブルを囲んでお茶をしています。

 ニコニコしながらおば様…皇后さまが私たちにあいさつをしてくれてます。

 我が家の三人は…完全にガチガチに固まっています。


 「こちらの不手際で説明が行き届いていなかったようですので、私が説明させていただきます。」

 ロッテンマイヤーさんが用意してあるホワイトボードにいろいろ書き込みながら説明を進めていきます。


 「地球と同じ座標の別次元にあるここ幻魔界は、我が帝国一つしか人間の国は存在しません。

 そして、帝国には普通の人と、獣人や精霊などの『ちょっと違う人』と合わせて五千万人の住人が暮らしています。

 なお、面積は北アメリカ大陸くらい…と聞いておりますので、かなり人口密度は薄いようですね。

 更紗様たちがお住まいの日本の国の人口だけで一億二千万人とか本当にスゴイと思います。


 我が国は立憲君主国で、皇帝は権威はありますが、政治的には儀礼的な役割しか果たさないので、皇族と言っても熾烈な権力闘争などはありません。

 ですから、更紗様も『一定水準の礼儀作法と知識』だけを身に付けていただければ全く問題ありません。

 皇帝陛下、皇后陛下、皇太子さまも更紗様を大歓迎されてますので、その点でもご安心していただけると思います。

 また、『開かれた皇室』が謳い文句であり、国民の支持も非常に高いので、『隼人殿下が留学先で素敵なお嫁さん候補を見つけてきた』と説明すれば、国民のみなさまも納得してくださいます。」


 ロッテンマイヤーさんが淡々と家族に説明してくれてます。

 三人とも現実を受け止めるのが精いっぱいのようで、うんうん首を縦に振っています。


 「姉ちゃんと、隼人お兄ちゃんやご家族のことは何とか納得いったけど、どうして姉ちゃんの同級生の石川さんが皆さんとそんなに仲良しだったり、学校の先生のアルテアさんが『どこでもドア』を使えたりするの?」

 ようやく我を取り戻したらしい航がツッコミを入れている。


 「私は事件に巻き込まれた時、ブリちゃんと一緒に解決することができて、それがきっかけで家族ぐるみで付き合うようになったのよ♪」

 「ええと…。教師というのは普通の生徒が思っているよりずっと物知りなの。ほら、おばあちゃんの知恵のようなものだと思ってもらえばいいから♪」

 石川さんとアルテア先生の突っこみどころしかない説明を聞いて航が口をぱくぱくさせてます。


 「まあ、事件と言っても大怪獣ゴメラの大軍が襲ってきたのをブリギッタ様と一緒に撃退していただきましたから、文字通り『救国の英雄』なわけです。

 同様の事件を都合五回くらいブリギッタ様と組んで解決していただいてますから、お二人は救国の戦友と言っていい間柄なのですよ。」

 ロッテンマイヤーさんが涼しい顔ですごい説明をしてくれてます。

 父と母は完全に遠い目をしてしまっています。

 そして航は…。

 「大怪獣ゴメラの大軍を撃退とか冗談を言わないで下さい!そんなことはあのシードラゴンマスク様くらいにしかできないです!!」

 …航!大正解です!


 石川さんが冷や汗をだらだらかきはじめ、ブリギッタさん、おじ様、おば様、アルテア先生、そしてロッテンマイヤーさんまで妙に嬉しそうな顔に変わられてます。


 航はみんなの変化に最初きょとんとしており、まもなく、石川さんの銀色の髪に気付き…。

 「え?石川さんはシードラゴンマスク様と同じ銀色の長髪だよね…。でも、ネット情報だと、シードラゴンマスク様は髪の毛は黒で、変身後銀色に変色させることで正体の発覚を食い止めているということだったはずだけど…。」

 航がネット情報との違いに頭を悩ませています。


 「そうそう、そうなのよ♪ほら、私髪の毛が銀色だから、時々勘違いされるのよね♪」

 石川さん、目を泳がせながら、どんな言い訳をされているんですか!!


 「あのう…瀬利亜様。素手で大怪獣ゴメラを殴り倒せるのは瀬利亜様以外ほとんど皆無に近いのでは?あまりすっとぼけておられると話が進まなくなって困るのですが…。」

 ロッテンマイヤーさんがさりげにとんでもないことばらしながら困った顔をされてます。


 「そうだねえ。ゴメラを純粋に素手で殴ったり蹴ったりで瞬殺できるのは地球上で瀬利亜ちゃんとスーパーマッスルぐらいじゃないかしら♪」

 「アルさん、何を言っているのかしら!他にも…ライトニングレディ…は電撃を使うか……スーパージライヤ…は忍術だし、ミラクルファイターは……巨大な敵は相手にしないし……ちょっと待って!他にも誰かいたはずだわ!!」

 石川さん!話が完全に横道にそれてます!!


 「じゃ、じゃあ、石川さんがシードラゴンマスク様なわけ??!!

 それでブリギッタさんはシードラゴンマスク様の戦友??!!」

 航がものすごく嬉しそうに叫びます。


 「航君、よかったねえ♪すごい人と知り合いになれたし、親戚になれるんだよ♪」

 「というか、アルテア先生はなにものなんですか?!!」

 「ふっふっふ、乙女の秘密です♪」

 「アルさん、それをやりだすと時間がいくらあっても足りなくなるからとっととばらして次の話に移りましょう。」


 結局二人の正体がばれた後、航とブリギッタさんが意気投合し、婚約による両家の親交はさらに一歩前進したようです。



~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~



 「お帰り、姉さん♪」

 「お帰り、更紗ちゃん♪」

 今日も自宅に戻ると航とブリギッタさんがダイニングで迎えてくれてます。


 あの後、ブリギッタさんが特訓でゲートの魔法を身に付け、家にちょくちょく遊びに来てくれるようになりました。


 さっぱりした姉御気質で偉ぶらないブリギッタさんは家の両親にえらく気に入られています。

 また、航とはとても気が合うらしく、いろんな話を和気あいあいとしているようです。


 「ブリギッタちゃん。今日は夕食食べて帰る?」

 「はーい♪おばさまのご飯はすごくおいしいから楽しみです♪」

 「あら、そんなに褒めたってなにも出ないわよ♪」

 「いえいえ、『おふくろの味』を習いたいくらいです♪」

 「まあ、ブリギッタちゃんたら♪いっそうちにお嫁にこない?」

 「ええ、いいんですか?それもいいかもしれませんね♪」

 いや、よくないよ!!ブリギッタさん、皇太子ですよね?!!


 とはいえ、小さいころから私と一緒に遊ぶことが多く、浮いた話一つなかった航がブリギッタさんとはすごく仲良さそうなのですよね…。

 ブリギッタさんが時々顔を赤らめるように航に反応しているし…。

 ブリギッタさんと結ばれる場合はブリギッタさんが皇太子だから、ロイヤルファミリーに『婿入り』ですか?!

 まさかね?!まさかであってください!!



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