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65 暗黒魔王と至高の勇者 その1

 私たちがオータム国の王宮の前に着くと、警備の人がびっくりしていたが、すぐに通してもらえました。サーヤさんと『烈火の勇者』である伊集院君がいたので、顔パスだったのです。


 そして、すぐに大きな会議室に通されました。

 そこには王族や貴族と思しき人たちが何十人といて、今まさに会議の最中というところでした。

 「烈火の勇者様とガルーダ王国アリス姫、至高の魔術師サーヤ様、グリフォン王国ミーシャ王がお越しになりました!」


 同行してくれた騎士のおじさんが声を掛けると会場中の人達がこちらに顔を向ける。

 なんでも暗黒魔王の降伏勧告は西大陸の多くの国に及び、前回の魔王事件で解決の中心になったオータム国で対策会議が開かれていたのだそうです。

 この会議には各国の王やその代理の人達が集まっていたのです。


 「みなさまご安心ください!」

 アリス姫の声が会場中に響きます。

 「今回は『烈火の勇者様』以外にも名だたる勇者様方にお越しいただいております。

 必ずや暗黒魔王の野望を止めて御覧に入れましょう!」

 アリス姫の言葉に会場が大きく盛り上がります。


 「みなさま、本当にありがとうございます。

 ですが、少し面倒な事にもなったのです。実は…。」

 四〇代半ばに見えるオータム国国王が困惑した表情で話し始めた。


 暗黒魔王の降伏勧告の後、各国の調査部隊が簡単に粉砕され、困窮していた時、西大陸最大の国・北のグレート帝国がその存在を隠していた勇者の存在を明らかにしたのです。

 異世界から召喚した後、何年も鍛え上げていて、『烈火の勇者の比ではなく強い』と豪語するのです。

 勇者は『至高の勇者』と名乗り、至高の勇者一行は暗黒魔王の先遣部隊を簡単に蹴散らしてしまったのです。


 それだけならよかったのですが、グレート帝国は『暗黒魔王を退治する代わりに各国は帝国の支配を受け入れろ』とオータム王国に集まっていた首脳に圧力をかけてきたのです。

 『暗黒魔王に屈するか』『グレート帝国に屈する』か、それとも可能性は少ないものの両者を何とか退けるか…そんな形で会議が紛糾していた時に私たちが到着したのです。


 暗黒魔王だけなら『粉砕して終わり』な気がしますが、グレート帝国と勇者が絡むとなると外交問題も絡んで話が難しくなります。

 アリス姫やサーヤさんもどうしたものかと考えた時にいろいろ調べていたアルさんが口を開きます。


 「そうだねえ…。暗黒魔王や至高の勇者を粉砕するだけならこのメンバーだと何とかはなりそうなんだよね。ただ、その後の政治的な配慮をしっかりしないといけないね。」

 「アリス姫!こちらの方は?」

 アルさんの発言内容にビックリしたオータム王が慌てて尋ねてくる。


 「異世界でも最高クラスの魔王使いのアルテアさんです。あの『最強勇者』のご友人でもおありなのです。」

 「なんですって、あの『魔王と大魔王と特大魔王を倒したという最強勇者』のご友人の魔法使いの方がお越しなのですか?!すばらしい!」

 うん、いつの間にか『最強勇者』なんて称号が付いていたのですね…。


 そんな時、再び会議室の扉が開かれ、騎士の一人が駆け込んできました。

 「大変です!暗黒魔王の使者とグレート帝国の使者の両方が来ています!」


 お互いを牽制しながら魔王の使者と帝国の使者が会議室に入ってきました。

 魔王の使者は『黒ずくめのローブをまとった魔族』のようです。

 強大な魔力から魔法型の魔族と推測されます。地底のプリンセスで地底魔法を使う楓さんよりさらに上手のように感じます。


 帝国の使者は女性剣士のようですが、持っている装備から魔法にも精通しているような感じがします。望海ちゃんに近いぐらいの実力者かもしれません。

 確かにこの二人なら単身で使者として少々の事態からは自力で脱出できそうです。


 「弱小王国の皆さん、我らが暗黒魔王様に従う準備は整われましたかね?」

 「ぬかせ!我らの至高の勇者様に簡単に蹴散らされる暗黒魔王の軍などに従うものなどおらぬわ!」

 暗黒魔王の使者とグレート帝国の使者は互いに睨みあっています。


 「ちょっと待っていただこうかしら?わざわざ戦争をして『多くの犠牲者を出すような無駄なこと』をしなくてももっといい方法があるわ。

 暗黒魔王陣営、グレート帝国陣営、そして『烈火の勇者陣営』で競技をして、勝った側の条件を飲むというのはどうかしら?

 例えば、暗黒魔王陣営とグレート帝国陣営が勝った場合にはここに集まっている王国のメンバーは勝った側の支配下に入る。

 そして、烈火の勇者陣営が勝った場合はオータム王国を始めとするメンバーは今まで通りに独立を保つ…というのはどうかしら?」


 私のセリフに暗黒魔王とグレート帝国の使者はほおっと興味を引くような雰囲気を見せます。

 そして、オータム国王を始め、集まっていた使者たちは絶望的な顔に変わります。

 それを察してサーヤさんとアリス姫たちが彼らをなだめるようなジェスチャーをするので、なんとか王様たちの顔が平穏に戻ります。



 「なかなか興味深い話だな。それで、一体どんな競技をするというのだね?」

 まず暗黒魔王の使者が口を開き、グレート帝国の使者も興味深そうに私を見ています。。


 「ええ、実はこんなプランがあるの…。」

 そして会議場にいるメンバー全員私の話に耳を傾けだしました。



~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~



 「『参加メンバー10人の中からテーマに合わせた人材を選んで競技に出す』か。なかなか面白そうじゃないか。」

 オータム王国の競技場に暗黒魔王陣営の一〇人が到着します。

 暗黒魔王は確かにただものではありません。

 黒ずくめになっているため、詳細はわかりませんが、人間なら三〇くらいの男性でしょうか?

 全身から噴き出る暗黒の魔力が凄まじく、強大な魔法使いのようです。

 ただし、それだけではなく、戦士の心得もあるような感じです。


 望海ちゃんにちらっと確認すると

 「私では真っ向勝負では勝つのは厳しいですね。どんな汚い手を使ってもいいのでしたら、何とかなりそうですが…。」

 とコメントしていました。

 それではモンスターバスター一二星クラスに近い実力者ということですね。

 一筋縄ではいかなそうです。


 その他のメンバーもレベル一〇〇~三〇〇くらいでしょうか。強者ばかりで構成されています。




 「暗黒魔王はこんなものかね。案外大したことなさそうだな。」

 至高の勇者は一八〇センチを超す…日本人のイケメンではないですか?!

 やや釣り目の長髪の二〇歳くらいに見える男性です。

 いかにも『俺様系』の感じです。

 魔力もすごそうですが、剣士としても超一流の感じです。


 こちらも望海ちゃんにちらっと確認すると…

 「レベルでは暗黒魔王より少し上ですね。私では真っ向勝負ではさらに勝つのは厳しいです。ただ、うまくまとまりすぎている感じがするので、こちらもどんな汚い手を使ってもいいのでしたら、何とかなりそうですが…。」

とコメントしていました。


 暗黒魔王同様相当な強敵のようですが、最悪の場合は望海ちゃんでも何とかなる…知ってましたけど、望海ちゃんすご過ぎです。

 将来さらに強くなったらどんどん手に負えなくなるような気がします。

 望海ちゃんが非常に善良で優しい子でよかったです。


 なお、グレート帝国のサポートメンバーは男性二人、女性が七人です。

 しかも空気的に『ハーレム状態』のようです。


 個人的にはこういう俺様系の男性は苦手ですが、俺様系に魅かれる女性も、イマイチ好きではないかもしれません。


 先ほどの魔法剣士の女性は思っていたよりもきつめの美女で、魔法使いも美女で…本当にハーレムだよ!!許せん!女性の敵だ!!



 「それで、烈火の勇者チームはどんなメンバーなのかな?」

 半分馬鹿にしたような雰囲気で至高の勇者がこちらを見やります。


 「ええ、びっくりしないでね。スゴイメンツが揃っているから♪

 『烈火の勇者』『至高の魔術師』『真なる癒し手』『にぎやかし勇者』『ゆるふわ勇者』『美少女勇者』『コンバット勇者』『パパ勇者』『電脳勇者』『格闘勇者』の一〇名だわ♪」


 私の紹介とメンバーを見て、至高の勇者と暗黒魔王の一行は大笑いを始めた。


 「おいおい!こんなメンバーで我々に勝とうと思っているのか?」

 「ふ、侮られたものだな。我らの力を思い知るがいい!」


 ふっふっふ、今のうちに笑っているがいいのだわ♪

 どさくさに紛れてアルさんに一人強力な助っ人を連れてきてもらっているのです。

 今回の競技に於いては『彼の底力』を存分に思い知ることになるでしょう♪


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