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50 修学旅行 その1

石川瀬利亜:熱血男前ヒロイン。一人ノリツッコミが特技。


錦織光一:3年雪組担任の関西弁を操るイケメン教師。瀬利亜はんとの夫婦漫才が得意。


リディア アルテア サティスフィールド:三年雪組副担任で、ゆるふわな世界最高の魔法使い。瀬利亜はんが大好き。


橋本太郎: 三年雪組のお調子者で、ツッコミ王。


氷室琴美: 二年雪組の『リアル悪役令嬢』にして雪女の姫。ツンデレ美女。


 去年の秋にリアル天空のラピュタ…ならぬ、高さ一キロを超える浮遊型魔道要塞『星舟』が現れて、世界が征服される寸前になるというとんでもない事件があり、修学旅行が延期になっておりました。


 そこで、ようやく落ち着いた5月の終わりに修学旅行に行くことになりました。


 ただ、風流院高校が普通の修学旅行をしたのではおもしろくないということで、クラスごとに行き先の変わる『ミステリー修学旅行』になったのです。


 いろんなバスが校庭に到着し、生徒たちがクラスごとに乗りこんであちこちへ走り出していく。普通の『高速バス』みたいなバスもあれば、二階建てバスやキャラクター仕様のバス…待てい!!なんでシードラゴンマスク仕様のバスがあるんですか??!!


 …キャラクターバスは置いておいて、まるで宇宙船みたいなカッコいいバスもあったりします。へえ、星組の皆様宇宙船バス?に乗りこまれましたね。

 ええええ??!!!!宇宙船バスはそのまま宙に浮いて飛んでいっちゃったよ!!!

 いくら非日常を体験するためとはいえ、どんな体験をするんでしょうか??!!

 後で星組の皆さんに体験談を聞いてみましょう。


 さて、雪組のバスが一台だけ遅れていましたが、ようやく到着……なんですか!!あのふさふさボディに、両側にたくさんの足!!!前に付いているのが猫耳少女の顔でなければ、隣のトト◎に出てきた猫バ◎にしか見えないよね??!!


 一体どこに連れて行かれるのか不安になりながら、バスに搭乗します。


 「みにゃさま♪この度はよろしくお願いしますにゃ♪」

 運転席には運転手の衣装を着た猫耳の少女が鎮座している。

 ……石川家に時々『夕食を食べにくる』未来の猫娘型人造人間・トラミちゃんにしか見えないのですが…。


 「トラミちゃん、運転免許は持っているの?」

 「大丈夫にゃ♪このバスは地上を走らにゃいから、免許なしでも問題ないにゃ♪」

 「それじゃあ、どこを走るつもりなの??!!アニメ映画のように屋根の上を突っ走っていくわけじゃないよね??!!」

 「その気になればそれもできるけど、今回は違うのにゃ♪

 どこを走るかを想像するのも行先も含めてミステリーツアーの醍醐味にゃ♪」

 うーむ、運転手のことも含めて不安しかないのですが…。


 「石川!その猫耳少女もお前さんの知り合いなのか?」

 「その通りなのにゃ♪瀬利亜ちゃんを破滅的な運命から救うために二二世紀の未来の世界からやってきたのにゃ♪」

 橋本君の問いに答えたトラミちゃんの『爆弾発言』にクラス中がざわめく。


 「…と思っていたのですが、実は人違いだったのにゃ。でも、瀬利亜ちゃん優しいし、おいしいご飯を食べさせてくれるので、時々遊びに来させてもらってるにゃ♪」

 「この猫娘、人違いで迷惑を掛けた挙句、『突撃!隣の晩御飯』して、さらに迷惑をかけているのか??!!」

 橋本君がジト目でトラミちゃんを見ている。


 「いえ、確かにトラミちゃんはおもしろ少女だけど、迷惑以上にいろいろ活躍してくれているから、来てくれたこと自体は大いに助かっているわ。基本善良だし、私が『目さえ離さなければ』少々暴走しても大丈夫だし♪」

 「暴走することが前提になっているのか!!」

 「その通りにゃ♪瀬利亜ちゃんがいてくれれば全然問題なしなのにゃ♪」

 「本人が暴走することをドヤ顔で認めているよ??!!」


 「それでは、そろそろ出発しますので、皆様シートベルトをお締めください。」

 バスガイドさんがみんなに注意をする。……えーと、この声どこかで聞いたことがあるのですが…。


 「みなさま、本日は楽しい修学旅行です。猫娘バスの添乗員として四日間皆様にお付き合いさせていただく、サーヤ・エレメントリー・ガイアです。よろしくお願いします♪」

 いやいや、なんで異世界のハイエルフの魔術師のサーヤさんがガイドなんですか??!!


 「聞いていいでしょうか?サーヤさんがガイドということはもしかして、行き先は異世界でしょうか?」

 かなり嫌そうな顔で橋本君が突っ込む。

 「正解でーす♪それでは、皆様の智慧と勇気で村おこしに成功された成果やその他めずらしい物の数々をぜひご体験ください♪」

 「では、出発するにゃ♪」

 

 サーヤさんがにっこり笑ってみんなに手を振ると、トラミちゃんがバスを走らせ始めた。

 猫娘バスが目からサーチライトのような光を発すると前の空間に大きな穴が開いた。


 「これは空間ゲート?!もしかして猫娘バスを作ったのは?!」

 「その通り、私でーす♪」

 私の問いにアルさんが答える。

 これはキチガ◎に刃物…というやつではないでしょうか?

 ……まあ、アルさんが一緒に行動するのであれば、何とかはなるのでしょう。


 猫娘バスはジャンプすると、外が真っ暗な空間の中に飛び込んでいった。




 「ようこそ、カソノ村へ♪」

 カトリーヌさんや村人たちが迎えてくれました。

 …えーと、先月来たばかりなんですけど…。


 「勇者饅頭や勇者せんべい、さらに世界的に大人気の勇者のぬいぐるみもありますよ♪」

 私たちに売りつけてどうするんですか??!!

 というか、アルさんや遥ちゃんたちは喜んで買おうとしているんですが?!!


 「最近はリアルタイプミニチュア『勇者立像』が大人気なんですよ♪」

 サーヤさん、それはシードラゴンマスクのフィギュアですよね?!!!

 大人気になっちゃったんですか??!!

 「光ちゃん!!!こんなところで何個も買おうとしないでください!!!」

 「瀬利亜はん、誤解や。これはわての分だけやないんや。アメリカの友人たちからも頼まれてるさかい。それに、『Made in カソノの村』の分はプレミアが付くんや♪♪

 既にオークションではえらい高値がついとるんや!!

 あ、もちろん、わてや友人たちは絶対に手放さへんけどね♪♪」う


 …えーと、とんでもないことになっているようです…。

 あと、旦那様が自分のフィギュアのコアなコレクターであることは喜ぶべきことなのでしょうか…。


 「では、今から『勇者対決スタジアム』に……。」

 「行ってもしょうがないよね?!それよりはイチゴのハウスとか、村おこしの結果が見れる場所へ行こうよ。」

 私がサーヤさんに提案して、イチゴハウスの方に移動します。


 移動は猫娘バスなので、あっという間にたくさん立ち並ぶ『イチゴハウス』の前に到着します。

 生のイチゴを頂いたり、イチゴパイやイチゴのショートケーキを頂いた後、次の場所に移動することにします。


 「温泉には入られないのですか?テーマパーク風になっていて、各国の王族や貴族の方たちにも大人気なんですよ♪」

 「修学旅行に出発してすぐの昼間にいきなり温泉はどうかと思うの。

 猫娘バスは『ゲート機能』があるから、あちこち回って、夜ここで泊ればいいんじゃない?」

 「了解しました。では、トラミさん。次の目的地へお願いします。」

 サーヤさんがトラミちゃんに声を掛けると、猫娘バスはまたもやゲートを開けて、その中に飛び込んでいった。




 バスは今度は火山地帯と思しき、岩だらけの山脈の谷間に現れた。

 ごつごつした岩は溶岩が固まってできたもののようだ。

 「続きましては、『ドラゴン谷』です。大小・年齢様々なドラゴンが生息する地で、一流の冒険者ですら、入りこんだら命がいくつあっても足りないという超危険な地域です。

 間違ってもバスから外に出ようとはされないで下さい♪」

 サーヤさん!!涼しい顔で、なにを危険地帯のことをガイドされているんですか??!!!


 「サーヤさん!!!ドラゴンたちが近づいてきているんだけど!!!!!!」

 橋本君がたくさんのドラゴンを確認して震え上がっている。


 スーパーヒロインセンサーによると、ドラゴンたちは敵意は見せていないようですが、ファンタジー世界の頂点に立つモンスターたちです。

 猫娘バスはアルさん製作なので、かなり防御力は高いと思いますが、念のためにトラミちゃんに敵対的に取られかねない行動は控えるよう伝えた方がよさそうですね。


 「彼らは敵意はなさそうなんだけど……。ええ??ひっくり返ってお腹を見せているんだけど??!!」

 窓から外を見ながら氷室さんが叫んでいます。


 お腹を見せるというのは『降伏のポーズ』なのですが、なんだか嫌な予感がしてきます。


 「うわあああ!!!馬鹿でかいドラゴンが飛んできた!!」

 橋本君が真紅の巨大なドラゴンが飛翔してくるのを見つけて大騒ぎしています。

 全長二〇メートルを超える巨大なドラゴンで、高い知性を感じさせる瞳をしています。

 どうやら話が通じそうです。


 「この谷の主でドラゴンロードです。古の火竜で、千歳を超える強大な竜ですので、できれば怒らせるような行動は控えてください。」

 だ・か・ら、サーヤさん!涼しい顔で解説しないで下さい!!


 古竜は軽やかに猫娘バスの前に舞い降りると、素早くお腹を見せて、ひっくり返っています!!古竜まで降伏のポーズを取っているんですが??!!


 「すまん、この前の勇者と、同じくらい強い仲間が何人かいるのだな。わしの命を差し出すから、他の竜は見逃してはもらえないだろうか?」

 竜がいきなりとんでもないことを言いだしたよ?!!竜にそんなことを言われる筋合いはないんですけど??!!


 「いきなり何を言いだすんですか!!!こちらは敵意のない相手はドラゴンさんだろうが、俗にいうモンスターさんだろうが、傷つけたり、攻撃しようとは思わないから!!頭をあげてください!」

 私は外に出て、古竜に叫ぶ。


 「さすがは魔王たちを一撃で仕留める勇者だけのことはある。だが、先日わしらは大魔王に脅されたとは言え、あんたの仲間の城を大魔王軍と一緒に攻めてしまったのだ。わしの命はどうでもいいから、みんなの命は…。」

 「あなたの命もいらないから!!大魔王も今は改心して、魔界で畑を耕しているから、大丈夫!!竜たちも誰も傷つけるつもりはないから安心して!」

 「なんと、諸悪の根源をも改心すれば許すのか?!まさに王者の器だ!!ぜひ、我ら竜族をあなたの舎弟に加えていただきたい!!」

 「……えーと、私は弟子や舎弟は取らない主義なので、『友達』ということでお願いしていいでしょうか?」

 「サーヤ殿、これが勇者の地での教え『ケンソンの心』というやつなのですな!!わかりました!竜族の間に『勇者の精神』を子々孫々まで伝えて参りましょう!!」

 ……ええと、サーヤさんはドラゴンロードとは顔見知りだったのですね…。

 ヤラセではないけれど、ある程度こうなることは予想済みで仕掛けたのですね…。


 というか、気が付くとサーヤさん、竜たちに『勇者のぬいぐるみ』を売りつけているんですけど??!!

 え?竜たちも喜んでくれているし、ぼったくっているわけじゃないからいい?

 ……実はサーヤさんはぬいぐるみの売り上げで入るサーヤさん自身の収入は全て現金か『勇者のぬいぐるみの現物』の形であちこちの孤児院に寄付しているので、私利私欲で動いているわけではないのですよね…。


 「ドラゴンロードさん。『勇者の精神』をずっと伝えるのでしたら、『勇者の像』みたいなのがあった方がいいですよね?」

 アルさん、なにを言いだすのですか??!!

 ええ?!私の倍くらいある、『勇者像』を谷の真ん中に設置しちゃったよ!!


 さらにドラゴンたちがみんなあがめだしたよ!!!

 その像はそんなことをするためのものじゃないからね!!!!


 私と一部生徒のMPを大きく削った後、猫娘バスは次の目的地に向けて出発しました。


 「じゃあ、次は瀬利亜さんたちが突っ切った特大魔王城と魔界ツアーを…。」

 「行きません!!もう少し、平和な場所にしてください!!」


 次の目的地は…現在考慮中です。


続く。


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