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45 あるモンスターバスターの日記 (初めてのホラーハウス) その1

※1 この話は第1話の約半年前の話になります。


※2 主な登場人物


石川瀬利亜  熱血男前ヒロイン。一人ノリツッコミが特技。


神那岐千早 瀬利亜はんラブの人形みたいなかわいい女の子。モンスターバスター。

 ちーちゃんが家に来てくれてから2か月ほどになります。

 一緒に訓練したり、秘密結社スーパーモンスターズの変態怪人たちと戦ったりして、ちーちゃんはますます強くなってくれております。

 そこで、さまざま事件に対応できる証明ということで、今回の任務がモンスターバスター協会から依頼されました。

 某県の片田舎に旧華族のものであったうち捨てられた洋館があるのです。

 そこは悪霊たちのたまり場になって非常に危険なのだそうですが、秘密結社スーパーモンスターズがしばらく前から大暴れしていたため、手つかずになっていたのです。

 この屋敷にたむろしている膨大な数の悪霊退治(あるいは成仏)をなるべくちーちゃん一人の力で事件を解決するように…という話です。


 私はお目付&サポート&お手本を示すのだそうです。

 必要な時はもちろんガンガン力技で行くのですが、あまり凶悪でない悪霊の場合、丁寧に説得したら比較的簡単に成仏してくれたりするのです。

 ちーちゃんは巫女としての能力も高いので、本来は私以上にうってつけの人材なのです。

 その実践も兼ねて、なるべく建物も壊さないように…ということなのです。


 え?巫女であるちーちゃんはともかく、あなたは悪霊にどう対応するのか?ですか?

 ご心配なく、モンスターバスター御用達のいろいろなサポートアイテムや裏技があるのです。

 緊急時には私一人でも十分に対応できると思います。


 さて、最寄りの駅を降り、まずはちーちゃん一人に情報収集をして貰うことにします。

 こういう対人交渉もモンスターバスターの大切な仕事です。


 この事件解決を依頼してきた村役場に着くと、ちーちゃんに窓口に向かってもらいます。


 「すみません。少しお話をお伺いしたいんですが、よろしいでしょうか?」

 ちーちゃんが窓口に行くと優しそうなおばさんが出てきて話を聞いてくれてます。

 …ですが、ちーちゃんが一生懸命モンスターバスター証を提示して話をしても、困ってどうされたものか…と言う感じになっています。

 むむむむ!どうもちーちゃんを『小学生』と勘違いされているようですね。


 これ以上長引くとちーちゃんがトラウマになりそうなので、私が介入することにします。


 「すみません、よろしいでしょうか?」

 『できる女性オーラ』を出しながら、私がその女性に近づきます。


 「角式家の旧館の件で依頼を受けたモンスターバスターです。この子は私のアシスタントを務めてもらっています。」

 私はビジネスレディスマイルを浮かべるとモンスターバスター証を提示します。

 ビジネスレディオーラを出していると、ハーフで長身の私は20代半ばくらいに見えるらしいです。

 すぐさま女性が事情に詳しい上司の方を呼びに行ってくれ、そのまま別室で詳しい話を聞くことになります。


 ちーちゃんがトラウマになっていなければいいけど…と思ってちらっと見やると…私の方をものすごく尊敬するようなキラキラした目で私を見てくれています。

 ……うーむ、少しちーちゃんに悪いことをしたような気になります。

 こういう交渉の仕方もきちんとレクチャーしてあげた方がいいですね…。



 頭がバーコードの人のよさそうな課長さんが旧館についていろいろ説明してくれます。


 曰く、戦前は隆盛を誇った旧華族の角式(かくしき)家でしたが、戦後に遺産争いやなんやらがあって、名探偵も登場する連続殺人事件があったとかで屋敷が放棄されたのだそうです。


 そんな不気味な屋敷が何十年と放置されたのだそうですが、ついに遺産相続者が気味悪がって権利を放棄し、去年村に寄贈が決まったのだそうです。


 そこで、屋敷跡を有効に活用しようと調査を行ったところ、大量の悪霊に脅されて、調査員さん達は死ぬような思いで逃げ帰ったのだとか…。


 相手が悪霊ということで、退魔能力には定評のあるB級モンスターバスターのお坊さんが調査員さんと共に赴いたところ、そのお坊さんは悪霊たちに散々脅されてノイローゼになり入院中なのだそうです。

 その代わりのモンスターバスターの派遣が要求されたのですが、そのころから秘密結社スーパーモンスターズが暗躍し、多くのモンスターバスター達が戦線離脱したため、洋館はしばらく放置されざるを得なくなりました。

 そして、つい最近スーパーモンスターズの侵攻が一段落したため、私とちーちゃんのところに依頼が来たのでした。


 「悪霊の起こした事件であれば、遺産相続に絡む殺人事件の詳しい情報があった方がやりやすいですね。どういった事件だったのでしょうか?」

 「それが、格式家の一族自体がその事件で村から去って一人もいなくなってしまい、詳細が分からなくなっているのです。事件解決に関わった警察官の方もお亡くなりになってますし…。」

 うーむ、それではその情報はなしで行くしかないですね。緊急時には『説得(物理)』一本槍で行くしかないかもしれません。



 私たちが洋館までの地図をもらい、役場を出ようとすると、一人の女の子が私たちの前に歩いてきました。

 小柄なかわいい系の中学生でしょうか…いえいえ私のオーラセンサーが見破ります。

 ほぼ合法ロリ…私と同い年くらいでしょう。

 衣装がいわゆるシャーロックホームズ風の探偵服と帽子、そして、なぜかパイプまで持っていますが…。この子はいったい?!


 「あなたたち、もしかして格式家の悪霊退治を依頼されたモンスターバスターさん達よね?」

 「え?どうしてわかるわけ?」

 私の問いに女の子は帽子に右手を当ててふっと笑います。


 「なあに、初歩的な推理ですよ、ワトソンさん♪このさびれた村の人のあまり来ない村役場に遠方からこんな場所に似つかわしくない女性二人が来たこと。

 さらに『格式家の由来』という地図付きの小パンフを持っておられることから簡単に類推できます。」

 ほほお、この子は一応名探偵の卵さんということなのでしょうか?

 「極めつけは村役場の窓口でモンスターバスターの証明書を提示されたことです。」

 いえいえ、それ推理でもなんでもないよね?!ドヤ顔で何を言ってるんですか!!


 「私は銀田一初(ぎんだいいちはじめ)、角式家遺産相続事件を解決した名探偵銀田一京助ぎんだいいちきょうすけの孫にあたるわ。」

 「それじゃあ、私たちに声を掛けてきたのは…。」

 「ええ、私はその事件に関しては祖父からいろいろ話を聞いているし、事件の資料も徹底的に読んでこの『灰色の脳細胞』の中にインプットしているわ。

 だから、今回の事件解決の協力をさせてほしいの。」

 目をキラキラさせながら合法ロリ探偵は私に訴えかけてくる。

 「わかったわ。事件の知識のある人がいてくれれば解決に役に立ってくれると思うわ。

 ご協力感謝します。モンスターバスター協会からも些少だけど『協力手当』も支給してもらえると思うわ。」

 「やった!よろしくお願いね!ふっふっふ、これが『美少女名探偵』銀田一初のデビューになるのだわ!!」


 こうして私たちは初ちゃんを仲間に加えて洋館まで歩いていった。


 初ちゃんは地元の高校の二年生で私たちと同級生なのだそうだ。

 「なんですって?!二人とも高校二年生なの??!!信じられない??!!!

 …え?千早ちゃんは飛び級で高校二年だけど、先月14歳になったばかり…そうか、おかしいと思ったのよね…。」


 そうなのです。先月ちーちゃんが誕生日を迎えたので、家で誕生日パーティをやったのです。そうしたら『生まれてからこんなに思い切り誕生日を祝ってもらったのは初めてです!!』と泣いて感激してくれたのです。

 私のプレゼントのトトロのぬいぐるみが『家宝のように部屋に飾ってある』のにはさすがに照れくさくなってしまいます。

 おっとっと、話が逸れました。


 「で、瀬利亜さんは…身長が高いのはハーフだから置いておいて……出るとことが出て……どうして神様は不公平なんでしょうか!!!」

 「初ちゃん、なにを言っているの?!その美貌、知性、可愛らしい雰囲気は神様があなたに与えた素晴らしいギフトじゃないの?!!もっと自分を信頼してあげて♪」

 うん、ぷりぷりしていた初ちゃんが大人しくなってくれました。

 なってくれたのはいいのですが、恥ずかしそうに顔を赤らめておられるのは気のせいでしょうか?



 そして、いよいよ洋館の前にたどり着きますが…。

 変です!古ぼけてすごく不気味な雰囲気なのですが、数十年前に放置された洋館の割には建物はもちろん、敷地内も想像以上に崩壊が進んでいません。

 それなりに雑草や木が生い茂ってますが、せいぜい数年間『手入れを怠った』くらいにしか見えないのです。


 さらに、洋館からはとんでもない妖気が感じられます。恐らくかなりの悪霊がいるものと推測されるのですが……問題は生き物、それも妖気を持った生き物がかなりいるらしいことです。

 これは…一筋縄ではいかないかもしれません。

 ちーちゃんもそれを感じ取って表情が厳しくなります。


 「瀬利亜さん、これを見てください。」

 初ちゃんが門の横の『ブザー』を指さします。

 これは…罠なのでしょうか?どう見ても電気が通っているような『生きたブザー』に見えますが…。

 ここは慎重に行きたいところ…。

 『ピンポーン♪』

 「初ちゃん!!何を押してるんですか?!!これどう見てもおかしいですよね?!!」


 「瀬利亜さん。虎穴に入らずんば虎児を得ずです。ここは正面から堂々と入っていきましょう。その際にこのシャーロック初の知識を推理をお役立てしてみせましょう♪」

 ううむ…こうなっては初ちゃんの言う通りに動くしかないですね。


 チャイムを押された後、返事はなかったものの、門にかかっていた鍵が外れる音がした。

 さあ、洋館に乗り込んでいきましょう。


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