44 新婚旅行が思ったよりも…。その4
ゴメラと別れた後、利尻島、礼文島を一気に回り、北海道最北端、宗谷岬を巡った後、そのまま最北端の温泉豊富温泉に寄りました。
ゴメラとたわむれた後だけにいい汗を流して……どうして気が付くと次の日の昼前になっているのでしょうか…。(苦笑)
エロ光ちゃん!新婚『旅行』に来たのだから、もう少しいろいろ見ましょうよ!!
え?『正月の初夢と一緒で、二日目の夜の夢ならぬコミュニケーション(物理)が大切なんや♪』ですか????意味がわかりません!!
なにかあったら『子犬のような目』で私を見て誘導するのは……今回だけですからね?!
ここだけはと予定に組み込んでいた旭山動物園に行く前に、ランチタイムに旭川ラーメンを堪能します。
そして、いよいよ旭山動物園へ♪
おおっ!!ペンギンさんが園内を歩いているじゃないですか??!!
それから、アザラシさんの遊泳はなかなかダイナミックですね!!
それからそれから……は?!!いつの間にか光ちゃんを引きずり回していました!!
こういう時は光ちゃんは文句ひとつ言わずついて来てくれる(…というか、私が持ち上げて運んでいたような気が…。)ので、油断するとへとへとになっていたりします。
そんなわけで、ちょっと休憩を入れようと動物園中央食堂で一休みします。
中央食堂と言ってもサービスエリアのフードコートみたいな感じで…ですが、中身はかなり充実してますね。
ここは名物と言う『エゾ鹿バーガー』を頂くことにします。
光ちゃんは無難にコーヒーを頼んでますね。
そして、おおっ!!動物パンケーキというものが面白そうじゃないですか!!
ぶっちゃけ小さいホットケーキがいくつかあって、その一つに『かわいいアザラシ君の顔が描いてある』という代物なのですが、かわいい系に目がない私的には大好物なのですよ。
昼間ラーメンを頂いたばかりですが、これと山ぶどうジュースを……えらい食べてますね…。
目の前の相手が光ちゃんでなければクレームが来るか、生暖かい視線で見られそうな素晴らしい勢いです。
一応光ちゃんをちらっと見ると……。
「そのパンケーキ、顔がかわいいよね。わてにも一口もらえへん?」
ああっ?!そう言えば光ちゃんも『可愛いもの好き仲間』でした。
そんなわけでかわいいグッズを買いものしている時でも全く嫌そうな顔をせずにニコニコしながら付きあってくれるため、非常に貴重な人材なのです。
そう言えば、カップルになる前すら『となりのトトログッズのお店』で二時間くらい一緒に二人でお店でいろいろ見繕ったことがあったような…。
「じゃあ、光ちゃんの分もパンケーキ頼もうか?」
「いや、わてもう、かなりお腹ふといねん。少しだけ分けてもらえばええから。」
「じゃあ、このアザラシくんケーキを半分こしよう♪」
そして、アザラシくんパンケーキを半分にしてお互いに食べさせっこをしていると、なぜか生暖かい視線を感じます。
気配をたどって視線の元にさりげなく目をやると…ああ!!クラスメイトの氷室さんではないですか?!!雪女の姫は北海道原産…もとい、北海道が故郷だったことを思い出しました。
私の視線に気づき、氷室さんがやや気まずげに声を出します。
「…あのう、お二人で何をされているのでしょうか?」
「「新婚旅行です♪♪」」
私たちは二人とも開き直って、満面の笑顔で氷室さんを迎えます。
「姫、こちらの方たちはお知り合いですか?」
「…ええ、担任の先生と、クラスメイトです。」
普通の女子より少し高い氷室さんよりさらに長身のショートカットの美女が氷室さんの傍に付き添っています。
おそらく氷室さんのボディガードなのでしょう。
霊力は氷室さんとほぼ同じくらいですが、実戦の鍛えが入っていそうです。もし戦いになればA級モンスターバスター最上位クラスの実力者でしょう。
私と光ちゃんを見て、ただものではないと感じ取っていたらしい付添いの方の表情が急に柔らかくなります。
「担任の先生とクラスメイトの方がご結婚されたのですか?」
どう見ても『バカップル全開』に見えるようで、ボディガードさんは私たちを不思議そうな顔で見ておられます。
「雪菜姉さん、実は……。」
氷室さんが雪菜さんに囁くと、仰天した顔をされ、再び私たちをまじまじと見られます。
「申し訳ありません。事情も知らずに変な詮索をしてしまいました。」
そして雪菜さんは深くお辞儀をして謝られます。
ううむ、私たちの正体を明かされたのですね。そりゃあ、正体を知って『バカップルぶり』を見れば驚きますよね…。
「そんなわけで、わてらは今からさらにイチャイチャするから適当に放置してもろうた方がありがたいんや♪」
「光ちゃん、なに開き直った発言してんの?!里帰りしていた教え子の氷室さんに久しぶりに会ったのだから、もう少し言うことがあるでしょ?」
「ええ?!せやかて、明後日にはまたクラスで再会するやん!
新婚旅行中の今は少しでも『いちゃいちゃタイム』を堪能したいんや♪♪」
むむむむ…光ちゃんは氷室さんの性格をわかった上でわざとこんなコメントをしているから、まだ許せるのですが…。それでももう少しお話してもいいのでは?
「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んでしまうそうなので、私たちはそろそろお暇しましょうか。
雪菜姉さん、担任とクラスメイトはこんな人達だから、よかったら一度学校にも来てみてね。」
氷室さんは雪菜さんに告げると、私たちに手を振って去っていった。
氷室さんたちと別れると、今度は私は意識してペースを落とし…結局また光ちゃんを引きずり回しました…。
「何かに夢中になると、暴走するんはカップル共通やね♪」
光ちゃんは笑って許してくれましたが、今度こそ胆に銘じようと思います!!!
旭山動物園を後にして、しばし、海沿いまで出てドライブを楽しんだ後、道央まで戻ります。
『道央最大級の温泉郷』という層雲峡温泉で今晩は泊まることにします。
チェックインすると、早速大浴場へ突撃します。
光ちゃんが『家族風呂で一緒に入る』ことを強く主張しましたが、それは『夜のお楽しみ』ということで、何とか説得に成功します。
体を洗って、広い浴槽に突入です♪
広々として気持ちいいですね……おや、どこかで見たような気がする美女二人……氷室さんと雪菜さんではないですか?!!
先ほど別れたばかりなのに、こんなところで再会するとは奇遇ですね。
向こうもこちらに気付いて手を振ってくれるので、近寄っていきます。
美女二人はスレンダーで、肌も真っ白でつやつやです。
すばらしい眼福物でございます♪
おや、お二人の顔色が曇りましたが、なにかあったのでしょうか?
視線が私の胸の方に……うん、時々『スレンダー系』の方から、いただく視線ですね…。
こういう時は私が下手に何か言うと、こじれること間違いなしなので、気付かなかった振りをして、上手に他の方に話題を持っていくに限ります。
しばし、学校の楽しかった話などしていると、お二人の表情がほぐれていきます。
特に文化祭の話は雪菜さんに大うけでした。
私や光ちゃん、巧さんが料理をした話をすると、雪菜さんも学校に行ってみたいと言ってくれます。うーむ、料理は人の縁をつなぐものなのだね。
お風呂から上がると光ちゃんがホールで待っていてくれました。
男性より女性の方がどうしても長風呂になるんだよね。
私を見てにっこり笑った光ちゃんが氷室さんと雪菜さんを見て愕然とした表情になります。
「瀬利亜はん、家族風呂を断って大浴場にされたんは、そういう事情やったんやね?!!」
いえいえ、なにを言ってんですか??!!
偶然会ったことを説明すると、光ちゃんは安心してくれましたが…。
「なにせ、三日瀬利亜はんと離れると寂しゅうて死んでまうほど愛してもうてるもんで♪」
それ、自慢することじゃないからね??!!
さすがに疑うような視線をされる二人に光ちゃんはドヤ顔で答えます。
「実は瀬利亜はんは鑑定能力を使えはるんや。使い方によっては『愛情の深さ』まで鑑定できるから、それを見てもろうたらええと思うんや。」
えーと、鑑定能力にはそんな機能もありましたね…。
タブレットを取り出して、機能を限定して光ちゃんを鑑定してみます。
錦織光一 男 人間 23歳
(中略)
特記事項: 瀬利亜はんと三日離れると寂しゅうて死んでまうんや!(確定)
現在『恋愛中』 対象:瀬利亜 愛の深さ:LV50 ※普通の夫婦でLV5
「どんなもんや!!」
光ちゃん、ドヤ顔してどうするんですか??!!
二人とも完全にあきれてるじゃないですか!!!
お二人も「…こういうの『溺愛』とか『愛が重い』とか言うんですよね…。」みたいな会話はやめてください!!聞いている私がへこみます!!
「ところで…石川さんの方はどうなんですか?」
石川瀬利亜 女 人間 18歳
(中略)
特記事項: 親愛表現、愛情表現は男前なくらいどストレートです♪
現在『恋愛中』 対象:光一 愛の深さ:LV55 ※普通の夫婦でLV5
「「「………。」」」
えーと……みなさんの目が点になっているのですが…。
しばし、固まっていた光ちゃんが目をきらきらさせながら私の方を見る。
「わては今まで生きてきて一番感動してるんや!!!こんなにまで愛され人生をおくれるとは、わては世界で一番の幸せもんや!!!」
えーと…光ちゃんが感動して叫んでおられます…。
そして、パッパラパッパッパー♪とタブレットから『レベルアップ音』ぽい音が聞こえてきました。
「おめでとうございます!!光一さんの能力がレベルアップされました。なんと今回光一さんの瀬利亜さんに対する愛情が一気に2レベルアップです!!レベル50からレベル52になりました♪」
氷室さんと完全に固まってしまっておられます。
そして光ちゃんは……。
「よし!レベルアップ記念にそのまま『家族風呂』へ突入や!!」
…そのまま、私は呆然とされているお二人に見送られて、家族風呂に引きずられていきます。
…気づくと……いつに間にか翌日の昼前に…。(苦笑)
この、エロ光ちゃんが!!…そろそろ人のせいだけにするのはやめた方がよさそうですね…。
翌日が学校の始業式なので、その日は札幌でお昼に海鮮丼を頂いて、そのまま懐かしの我が家に帰還したのでした。めでたしめでたし。




