38 体育教師襲来! 婚約破棄編 その後 その1
前話を確認するのがめんどくさい人のための登場人物紹介
春日更紗: 勉強もでき、可愛くて愛想のいい美少女元副会長。異世界転生だとか、乙女ゲーとかマニアックな言葉を使いたがるぞ♪ なんでもヒロインらしいよ♪
如月隼人: 成績優秀、真面目で長身のイケメンと評判の元生徒会長。乙女ゲーのメインターゲットですが…。魔界の皇子だとか何とか…。異世界転生者のようです♪
平岡和則: 乙女ゲーの攻略対象のワイルドなイケメンで、正体は狼男。いろんな裏事情に詳しい。
北川望海: 新入生だったが、『諸事情』により、三年雪組に編入された成績超優秀な完璧な美少女。スーパーヒロイン『マジカルコンバットガール』で戦闘のスペシャリストでもある。
石川 瀬利亜
奥さまの名前は瀬利亜。旦那様の名前は光一。
ごく普通の二人はごく普通の恋愛をし、ごく普通の結婚をしました。
(※あくまで奥様の視点です…。)
ただ一つ違ったのは奥様はモンスターバスターだったのです。
春日更紗です。一年から書記と会計が選出され、新生徒会が発足しました。私はようやくお役御免で、現在受験勉強に集中するため、元会長の如月君と図書室通いの毎日です。
…結局如月君に『ほだされて』付きあうことにしました。
ええ、『ほだされた』んです!!そういうことにしておいていてください!!
今日は体育の授業で私たちの三年星組と雪組の合同授業です。
なんでもカイザス先生が『諸事情』により、退任されて今日から新しい先生が就任されるというので、みんながざわついています。
超絶イケメンで、しかもものすごく紳士で優しかったため、多数の女生徒から嘆きの声が出たそうです。
…まあ、私はカイザス先生が『美少年が好き』で、『謎すぎるヒーロー』だとわかっていたので、そこまで残念とは思いませんでしたが…。
『鑑賞用』の人材としてはアイドル以上でしたから、その点では惜しかったですが…。
さあ、新しい先生は……はああああ??!!!でかい!!ごつい!!
プロレスラー並…いえいえ、並のプロレスラー以上ですよね??!!
ほぼ二メートルは上背があるだけでなく、筋肉の付き方が人間離れしています!
ちらと周りを見ると、うちのクラスは全員がほぼ呆然としており…雪組は…あの石川さんが愕然とされています。
単にごつすぎる先生が来られたからというよりは…もしかして知っている人なのでしょうか?
「今日から体育を担当する、『兜鋼児』だ!みんなよろしくな♪」
兜先生はフリップを取り出すと、みんなに意外とさわやかな笑顔で笑いかけてきている。
イケメン…とまではいきませんが、優しそうなごつめのちょいイケメンのようなので、少しホッとします。
しかし、取ってつけたような名前は…周りのみんなもぎこちない笑顔になっています。
ん?石川さんが額に青筋を立てられて『特大ハリセン』を取り出しておられるのを北川さんが一生懸命制止されています!!
石川さんのこの反応はもしかして、スーパーヒロインシードラゴンマスクのお仲間の方…なのでしょうか??
それを踏まえてみれば……兜先生の筋肉は凄まじいくらいのハリがあり、全身からエネルギーがほとばしっているような気がします。
幸いなことに雰囲気は優しそうなので、間違っても悪人ではなく、むしろヒーロー関係者ではないかという感じです。
「更紗。少し嫌な予感がするから『鑑定』してみるよ。」
隣にいた如月君が私に囁きます。
言われてみれば先日の異世界召喚時に如月君は『鑑定魔法』を身に付けたのでしたね。
ただ、先日一緒に召喚された北川さんが生徒会書記に選ばれたので、後で聞いてみるのもよさそうです。
書記になった後、雪組に編入されたので、三年生でも書記のままなのだそうです。
北川さんが書記として超優秀というのと、『スーパーヒロイン』を生徒会に入れて、緊急時に備える…という意味もあるとか聞きました。
なんでも三年生への編入試験が五〇〇点中六〇〇点だったとかで……今度は山縣先生だけじゃないんですね!!どの先生達ですか??!!一〇〇点余分に入れたのは??!!
話がそれましたが、鑑定を終えた如月君が先ほど見た石川さん以上に愕然としています。
「如月君、なにがあったの?」
小声で囁くと、如月君は大きく深呼吸して、気持ちを落ち着けたようです。
「…ああ、後で説明するよ…。」
如月君は額に手を当ててため息をつきます。
一体どんな鑑定結果だったのでしょうか?聞きたいような、聞きたくないような…。
如月君が私に囁こうとした時、以前も感じた奇妙な感覚が私を捉えます。
如月君も顔色を変えたその時、私たちの足元に以前も見た妙な幾何学模様が現れた。
「この魔方陣、前回見たやつと同じだ!!まさかまたあの町に?!!」
如月君が叫びます。
なんですって?!!また例のファンタジー西部劇の街から召喚ですか?!!
「そこの女の子!危なーーい!!!」
異変に気付いた、兜先生が凄まじい勢いで私を助けようとして走ってきます!!
ええええっ!!そんなタックルを喰らったら即死しそうなんですが??!!
それに気づいた如月君は私を必死で引き寄せてかばおうとしてくれますが、如月君の手が届く寸前、私は誰かに抱えられて、兜先生から大きく引き離されます。
「なにやってんの!!!あなたのその勢いだと、この子が圧死しちゃうじゃない!!少しはセーブすることを覚えないと!!」
…ええと、石川さんが兜先生の突進に気付いて、私を抱えて逃げてくれたのですね…。
私をお姫様抱っこしたまま『通り過ぎた』兜先生を睨んでいます。
「そ、そうか…すまん…。」
兜先生は叱られた子犬のようにしゅんとなっている。
うん、いい人ではあるようなんですが…。
「瀬利亜さん、まずいです!!その魔方陣は『春日さんにロックオン』されてます!!春日さんの安全を一刻も早く確保を!!」
ええっ??!!北川さんがタブレットを操作しながら私に近寄ってきたのですが…。
その時、周囲に閃光が走り、私は浮遊感に包まれて気を失っていた。
「春日さん、大丈夫?」
私をお姫様抱っこしたまま石川さんが私の顔を覗き込む。
おっとっと、私は瞬間気を失っていたのだね。
慌てて石川さんの手から降りると、お礼を言って頭を下げた。
石川さんは相変わらずの男前ぶりです。
周りを見ると、石川さん、如月君、北川さん、兜先生…そして、なぜか狼男の平岡君までいるのですが…。
そして、私たちの前には以前も見たことのある『西部劇風の風景』とシスターマリアと村人たちがいた。
この村を今度はどんな脅威が襲ってきたのでしょうか?
「今度は一体なにがあったのかしら?」
石川さんがシスターマリアに向かって話す。
「先日は村をギャング団の脅威から救っていただいてありがとうございます。
おかげさまで、少しずつ村に人が戻ってきています。
しかし、現在、カイタク村は大変な事態になっているのです!!」
マリアさんの深刻そうな顔にみんながうなずきながら引き寄せられていく。
「皆様に是非『村おこし』に協力してほしいのです!!」
「あほかーーーい!!!!」
……村中に瀬利亜さんの使った巨大ハリセンの大きな音が響き渡りました。
「うううう…説明を聞いて下さいよ…。」
半泣きになりながらマリアさんが詳細を語り始める。
なんでも、ギャング団を撃退した後、少しずつ逃げていた村人が戻ったり、新しい村人が移住して来てくれたものの、その前に多くの男性が村を離れていたため、全然人手が足りず、村の畑や商店も全然以前の状態を回復しないのだそうだ。
そこで、女性・老人・子供達だけでできるようなことを北川さんのような『異世界の技術』を持った人達なら何とかしてくれるのではないかと失礼を承知で召喚したのだとか。
しばらく石川さんはため息をつかれてましたが、ふと何か思いつかれたようです。
「そうだわ!今までは戦闘系ばかりを鑑定していたけれど、今度は『文科系』や『モノづくり系』の能力や技能を中心に鑑定したらどうかしら?」
おお、ナイスアイデアです!!
みんなは北川さんに鑑定してもらうことにしました。
春日更紗 女 人間 17歳
レベル 4
HP 28
知力 33
(中略)
【技能】料理LV3 家事LV2 ゲーム(乙女ゲー)LV3 学業:A
【称号】異世界勇者 前副会長
うううう…。学業こそ、悪くないですが、それ以外に大した技能がないのですよね…。
まあ、『転生前の知識』も含めていろいろアイデアを出させていただきます。
如月隼人 男 魔界の皇子 17歳
レベル 77
HP 770
知力 32
(中略)
【技能】家事LV2 ゲーム(戦略もの、美少女ゲー)LV3 編み物LV5 学業:A
【称号】異世界勇者 前会長
ええっ??!!如月君、編み物ができるの??!!ねえねえ、教えてくれる?え?よろこん で?!!やったあ!!これでさらに如月君と一緒にいる時間が……。
皆様の視線が生暖かくなりました。失礼しました!!
平岡和則 狼男 人間 17歳
レベル 66
HP 1200
知力 24
(中略)
【技能】 ゲーム(RPG、美少女ゲー)LV5 情報収集LV5 学業:C
【称号】異世界勇者 肉体派狼男 早く彼女が欲しいです…(ノД`)・゜・。
鑑定を見ている平岡くんご自身が口をぱくぱくさせています。村おこしに仕えそうな技能はほぼなさそう…情報収集能力があるから、話し合いには有効でしょうか?
北川望海 女 人間 15歳
レベル 301
HP 1450
知力 101
(中略)
【技能】情報収集&分析LV113 魔法いろいろLV126 料理LV7 家事LV5 ゲーム(サバゲー)LV33 学業:AAA
【称号】異世界勇者 戦場を選ばない完璧な兵士 銃の魔法少女 生徒会書記
北川さん、いろいろおかしすぎるよ?!!技能がチート過ぎるのもおかしいけど、技能のゲームの内容が他の人と根本的に違うよね?!!つーか、サバゲー技能じゃなくて、軍事系の技能がさらにチートだったよね?!!……今までのメンバーの中では一番使えそうです。
兜鋼児(本名マルク・シャガール) 男 マッスル星人 45歳
レベル 1211
HP 786312
知力 24
(中略)
【技能】情報収集&分析(肉体強化限定) LV13 食べ歩きLV12 教師技能:B(肉体言語)
【称号】異世界勇者 完璧な筋肉 モンスターバスター一二星 体育教師
兜先生、突っ込むところしかないんですが??!!レベルもそうですが、ヒットポイントが人間基準じゃなくなってます!!よく見たら人間ですらなくて、『マッスル星人』てなんですか??!!
技能も食べる系と肉体系のみ……。さっき如月君が鑑定して絶句するはずです。
石川 瀬利亜 女 人間 18歳
レベル 奥さまはいつも精進してまっせ♪
HP かなり高いし、闘気バリアーでしっかり守ってます♪
MP 魔法は使えないけど、999999
知力 77
(中略)
【技能】料理(LV16) 家事(LV13)交渉(能弁含む)LV33 状況判断LV40 村おこしLV30
【称号】 異世界召喚勇者 魔王と大魔王と特大魔王キラー 奥さまは夜も勇者♪
石川さんものすごいチートで、同時にものすごく変です!!
MPの異常な多さは兜先生以上にスゴイです…。技能はそのまんまの『村おこし』があって、しかも高レベルというのはスゴイですね…。
ああっ??!!北川さんが石川さんを思い切り敬意のこもったキラキラした目で見ています!!
ただ、石川さんご本人はめげておられます。これ以上はないくらいへこんでおられます…
「あのう、最後の『奥さまは夜も勇者』というのは何を意味しているのでしょうか?」
シスターマリアの質問に兜先生以外のみんなが固まります。
その質問をしちゃダメでしょ!!
「エ?、多分大シタコトジャナイと思イマスヨ…。」
瀬利亜さんが顔を赤らめながらセリフが棒読みになっておられます…。
誰か助けてあげてください!!
「マリアさん、察してあげてください。」
おお、北川さんがなんかどや顔で語り始めました。
「瀬利亜先輩は勇者の中の勇者ですが、女子力の高さもチート級なんです♪
ですから、旦那様のハートも優しさと圧倒的な女子力で鷲掴みにされているので、想像を絶するくらいのラブラブなご夫婦なんです!!私もこんな恋愛をしてみたいと思います!!」
北川さん!!全然けなしてないですけど、その発言は火に油を注ぐようなものです!!
ああっ!!石川さんが卒倒された!!
……えーと、私も『夜も勇者』になるくらいにラブラブしてみたいです…。




