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29 小さな恋の物語 その5 (出会いからゴールインまで)

 『神話クラスの敵・レジウス』との戦いで心身喪失に陥ってしまった私は、南の島にある別荘(沖縄県にある離島)で光ちゃんとちーちゃんに看護を受けながら静養していた。

 完全に記憶が飛んでしまっていたが、二人の手厚い看護によって、私の記憶も断片的に戻っていった。


 一〇歳の時にとある事件で両親が行方不明になってしまった私は天涯孤独の身になってしまったこと。

 その直後、両親の要請を受けていた巧さんが執事として親代わりに面倒を見てくれるようになった。

 また、ほぼ同時に両親の親友だったアルさんがちょくちょく家に遊びにきてくれるようになり、年の離れたお姉さんのように面倒をみてくれたこと。

 斎藤警部の道場に入門し、光ちゃんの妹弟子になり、光ちゃんにも妹のようにかわいがってもらうようになったこと。

 最近ちーちゃんが家に下宿してくれるようになり、姉妹のように仲良くさせてもらっていたこと。


 確かに私は家族を失ってしまったものの、代わりに新しい家族が私を孤独にしないように誠実に大切に扱ってくれたこと。

 全員『そのままの私』を大切にし、私の意志をずっと最大限尊重し続けてくれていたことに気が付いたのだ。


 モンスターバスターになって、トラブル解決に奔走するうちに人間やそれ以外の存在を問わず、思っているよりずっと多くの親子や夫婦などの家族関係、友人関係がうまくいっていないことを思い知らされた。

 そんなトラブルを解決するのは『本人たちが自分たちの関係のいびつさ』を自覚する以外はないのだ。

 夫婦が『単なる同居人』になって、お互いに本音で話すことなどあり得ない…本音で話せる夫婦の方が少数派だと気づいた時はものすごくショックだった。

 だから、光ちゃんとの間のようになんでも本音で話せるような相手を旦那さんにできればいいな…とずっと思っていた。


 今までは止まらずにずっと走り続けていたけれど、記憶を一旦リセットしてゆっくり振り返ることで自分にとって何が大切か、どうしたいのかが見えてきたのだ。

 強敵に負けたことは非常に痛手だったものの、私自身を振り返る絶好の機会を同時に与えてもらえたのだった。


 『記憶喪失事件』がなかったら、光ちゃんはまた新しい彼女を作っていただろうし、私も『ダンディー系のおじさん』にアタックして玉砕していたに違いありません。

 いやあ、たまには記憶喪失になるのもいいかもしんない♪


 なんてことを思っているうちに、ビーチバレーの準備が整ったようです。

 では、レッツプレイ!!




 望海ちゃんすご過ぎです!!運動神経はちーちゃんに一歩譲りますが、相手の心理を読み取ったフェイントや私との連携は神業のレベルです。


 ちーちゃんとの時ほど圧倒的ではないですが、麗華ちゃん&偽ゴールドチームに圧勝です!!

 麗華ちゃんは呆れたような表情をし、偽ゴールドとドクターは…呆然と立ちすくんでいます。

 望海ちゃんは『褒めて♪』とおねだりの表情をしているので、喜んで褒め倒します。

 私の貧困なボキャブラリーでせいいっぱい褒めると、自分的にはすごく恥ずかしいのですが、望海ちゃんにとってはあまり気にならないようで、すごくうれしそうです。ちーちゃんがちょっとうらやましそうな顔をしています。

 後でちーちゃんのフォローが必要かもしれません。


 「ちょっと思ったんやけど…瀬利亜はんとちーちゃん、あるいは望海はんがチームを組むんやのうて、ちーちゃんと望海ちゃんのチームを作った方が強いんちゃうん?」

 「光ちゃん、鋭い!さすがダーリン!!」

 …えーと、ドクターと偽ゴールドの表情が愕然となりました。


 「「待ってください!!」」

 ちーちゃんと望海ちゃんが同時に声を上げる。

 そして、ちーちゃんが望海ちゃんに目配せをして、望海ちゃんが続きを話し始める。


 「確かに、純粋に戦力だけを考えたら、私と千早さんが組んだ方が強いビーチバレーのチームができるかもしれません。

 しかし、スポーツで大切なことは楽しむことです。勝利のみを追求するのはプロの仕事です。我々アマチュアは楽しむことの方が大切です。

 したがって、『瀬利亜さんと一緒にプレイする』ことが非常に重要な意味を持つわけです。

 あ、もちろん、千早さんと一緒にプレイするのは全然嫌ではないですし、とても楽しいと思います。しかし、『瀬利亜さんと一緒にプレイする』ことは私たちにとってまさに『至福の時間』と呼ばせていただいていいでしょう!!」

 望海ちゃん、なにを懸命に力説されているのでしょうか??!!

 いやいや、ちーちゃんも光ちゃんもうんうんうなずいているのですが?!!


 「…そうか、私にはオリジナルのような人望が全くないわけか…。」

 いえいえ、なんで話がそっちの方向に行ってしまうわけ?!!



 「あらあ、だって、ゴールドちゃん、まだ生まれたばかりだもん。麗華ちゃんにとっては好き嫌い以前の話だと思うよ。それに麗華ちゃんは『ツンデレ』だから、付き合っていくうちに可愛くデレてくるから、それが楽しみになってくると思うな♪」

 アルさんも、変な方向に煽らないで下さい!!


 「ちょっと、アルテアさん!!人を勝手にツンデレ扱いしないでちょうだい!!」

 いえいえ、麗華ちゃん、あなたは究極に近いくらいのツンデレです…。


 「そうか、私も頑張って女子力を磨けば、ビーチバレーマスターに!!!」

 偽ヒロインが女子力を磨こうとする話は聞いたことないですから!!!

 それと、女子力とビーチバレーは一ミリたりとも関係しないからね?!!!


 「よし、次のシリーズを作る際は『女子力アップ』が大きな課題だ!!

 わっはっはっは!!見ているがいい、シードラゴンマスクよ!!

 今度は女子力を達人クラスに磨いた究極の偽シードラゴンマスクを完成されてくれるわ!

 楽しみに待っているがいい!!」

 「だ・か・ら・!女子力とビーチバレーは無関係だからね??!!

 そもそもどうして私の偽物を作り続けるわけ?!!

 高性能のアンドロイドを作りたいなら『オリジナル』にしなさい!!」


 …私のツッコミを受けて、ドクターが愕然とした表情に変わる。

 麗華ちゃんもミーナちゃんもジト目でドクターを見ている。


 やれやれ、これで偽シリーズとの対戦も終わったようです…。

 …と思ったら後日談になりますが、『完全オリジナルシリーズ』作成後も相変わらず、うちに連れてくるようになりました…。

 ええ、『偽シリーズとビーチバレー』は『季節行事』になりましたよ!!


 その後、浜辺でなぜかバーバキューになり、キャンプファイアーまでやることになりました。

 バーベキューには無農薬の野菜、和牛肉、黒豚肉などのほか、なぜか、熊肉やティラノサウルスの肉まで焼くことになりました。

 ……モンバス御用達の魔法のアイテムボックス内部は時間が経たないので、時々『謎素材』が残っていたりするのです。


 さらに周りに人の住んでいない無人島であるのをいいことに、アルさんが用意された魔法の花火を打ち放題です。

 どこぞの花火大会よりも豪華でしたが、何発か成層圏を突破したようなのです。間違って、事故ったりしてないですよね?



 夜遅くなり、麗華ちゃんやドクターは家に戻り、みんなもそれぞれの家や部屋に戻るなか、私と光ちゃんは久々に別荘にお泊りです。

 私と光ちゃんの関係を劇的に変えたこの場所で『初コミュニケーション(物理)』としゃれ込もうかと思いましたが……よく考えたら二度目でした。(苦笑)


 よし、今度は山の中に温泉付きの別荘を!!……普通に温泉旅館に泊まればいいか♪


 そんなこんなで、待望の結婚式まであと二日…いえ、日付が変わってあと一日です。

 お・や・す・み・ダーリン♪


小さな恋連作もこれで終了です。

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