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26 小さな恋の物語 その2 (出会いからゴールインまで)

◎月△日 終わった――!!招待状出しやら衣装合わせ、その他細かい事務作業がようやく終わったぞ!!あとは結婚式、披露宴の本番を迎えるのみ!!


 「そうですか、武術道場での出会いの前にすでに光一さんと会っておられたのですね。それにしても『 大きくなってまた会えたら、お兄さん、結婚してあげるね♪ 』という小さい時の瀬利亜さんの言葉が実現するとはすごく素敵ですね!!

 私もそういう素敵な出会いを体験したいですね♪」

お茶をしながらの私の話を望海ちゃんが目をキラキラさせながら聞いてくれている。


 「二人とも体験そのものは覚えていたのだけれども、その相手が私と光ちゃんだということにはつい最近気づいたんだよね。私は小さくてその時のお兄ちゃん(光ちゃん)の顔をよく覚えていなかったし、光ちゃんの方は『再会した時とイメージが違いすぎ』て全然わからなかったそうなの。」


 『とっても可愛らしい銀髪の小さな女の子に告白された』というイメージと、再会した私が一一歳になって『しぐさも含めて男前になっていた』イメージが全然一致しなかったため、光ちゃんは『別人判定』していたのだそうだ。




 父の親友であり、実は初恋の人でもあるという齊藤警部の武術道場に私は一一歳の時に入門した。私が一〇歳の時に父が行方不明になるまでは父に教わっていたり、その後も『執事として親代わり』になってくれた巧さんにも護身術を教わっていたのだが、『徒手空拳で戦えるようにする』のが私にとって一番合っていると、判断したのだ。

 斎藤警部の道場に入門した際に、最初に模擬戦を受け持ってくれたのが、当時一六歳の光ちゃんだったのです。


 見た感じかなりの実力者である光ちゃんを見た時に、そのオーラから『まっすぐないい人』であることはすぐに分かったのでした。

 ただ、明らかに『年下の小娘』を相手に試合することをとても不満そうにしているのも同時にわかったので、内心私は非常に困ったのでした。

 できれば仲良くしたいようなお兄さんと下手な試合をして遺恨を残しても…と一瞬考えたものの、試合が始まった瞬間それどころでないことに気付いたのだ。


 光ちゃんの闘気の上昇具合からこの『強敵』に対して下手な戦い方をしたら、年下の女の子など大怪我をしかねない相手だとすぐに分かりました。

 そこで、『全力で行く』ように切り替えると、そのまま光ちゃんの眼前に踏み込みます。

 隙を見せたら非力な私ではあっという間に潰されます。

 光ちゃんが動く寸前に一気に全身の闘気を高めて光ちゃんを投げ飛ばします。

 はっ?!手加減の仕方がわからない!!!


 それまで練習相手になってくれた父や巧さんは圧倒的に実力が私より上なうえ、『娘(義理の娘)相手の愛情たっぷり』の練習です。

 今回の模擬戦のように『倒すか倒されるかの試合』は初体験です。


 加減を間違えていて、斎藤警部のお弟子さんの優しいお兄さんに怪我をさせたりしたらえらいことです。

 私は慌てて駆け寄って叫びます。

 「大丈夫?怪我してない?」


 「大丈夫や。びっくりしただけや」

 自分より年下の女の子に負けて恥ずかしいはずなのに、光ちゃんは照れ臭そうに笑うだけだった。

 光ちゃんが無事そうなのと、全然気にしてなさそうなのがわかって、私は思わず安どのため息をついた。

 「よかったあ。無事だったんだね。」


 私の声を聞くと光ちゃんは嬉しそうに笑った。

 「わいの完敗や。おじょうさん、勝者の名前を教えてくれへんか?」

私が嬉しくなって、笑って手を差し出した。

 「瀬利亜です。石川瀬利亜。お兄さんは?」

 「光一や。錦織光一。これからよろしゅうな♪」

 こうして私たちはお互いを『親友認定』したのでした。


 なお、後で光ちゃんに『自分より年下の女の子に負けて悔しくなかったのか?』と聞いたら笑って答えてくれたのだった。

 「実力差がありすぎて、腹が立つより呆然としてもうてね。それ以上に瀬利亜はんがあんまり一生懸命わてのことを心配しはるんで、瀬利亜はんの『男前さ』に感動してもうたんや。」


 なお、齊藤警部が後でぼやいていました。

 「瀬利亜嬢の相手を光一にしたのは、少し天狗になっている光一をちょっとびっくりさせて武術に本気にならせるつもりだったんだけどな…。瀬利亜嬢が予想以上に強くて、光一が自分の才能に限界を感じて、プログラミングや電子技術の方に本腰を入れるようになるのは予定外だったよ。

 まあ、瀬利亜嬢が光一の抜けた穴を十二分に埋めてくれたけどな。」


 なんと、私が齊藤警部に弟子入りしたことで、光ちゃんの進路が大きく変わってしまったのでした。

 そのことで申し訳ないということを言ったところ…光ちゃんが笑って首を振ってくれたのでした。

 「いやいや、パソコン仕事の方が夢中になって取り組めたし、こっちの方が才能があったから、かえって助かったんや♪」



 またしても夢を見ているのに私は気付きましたが、今度は場面が温泉に切り替わります。

 …これは、1年前に悪の秘密結社が某温泉地で悪事を企んでいるという情報が入ってきたので、私と光ちゃんと充さん(風流学園理事長)が潜入捜査をしたときのことじゃないですか?!


 この時は私たち三人は一般客を装って、『幼稚園バス襲撃事件』を起こした怪人集団が温泉で悪事を起こした時、そのまま現行犯で捕縛しようとしていたのです。


 「瀬利亜さん、どない?怪人らしい連中はどれくらいおりそう?」

 「うーん、思ったよりかなり多いのだけれど…。」


 私たちは混浴の外湯に入りながら注意深く周りの様子を探っている。

 最初は光ちゃんと一緒に(一緒でなくても)混浴の外湯に浸かるなんて死ぬほど恥ずかしかったのです。

 ですが、任務ということで『シードラゴンモード』に切り替えて、なおかつ、気配を最低限に調整して、二人で入りながら索敵をしているのです。


 モードを切り替えたので、私は羞恥心を感じなくなってますが、光ちゃんの方がかなり恥ずかしそうにしています。


 「怪人が二十人くらいいるのだけれど…。」

 「に、二十人て……。」

 私の話に光ちゃんが叫びそうになるのを何とかストップをかけて話を続けます。


 「人数はたくさんいるし、怪人たちもそこそこ強そうなんだけど、彼らからほとんど悪意や敵意を感じないのよね…。

 どうする、一人くらいを拉致って、事情聴取(物理)してみようか?」

 「いやいや、それ敵に事情聴取しとるんがばれたらヤバイよね?!」

 「そうだよね…。持久戦にするなら、浴槽に入ったままだとのぼせるから、いったん出た方がよさそうね。」


 私たちがお風呂から出ようとすると、一人の女性と当たってしまう。

 「あら、ごめんなさい。」

 「いえいえ、こちらこそ…。」

 そう言って互いに相手を見て、目が点になる。


 「あなたは怪人結社スカルス&ジョーズの女幹部、レディ・シャーク!

 なんで、ほぼ幹部のコスチュームで温泉に浸かっているの?!!」

 「そういうあなたは、一瞬わかんなかったけど、シードラゴンマスク!!

 銀色の髪をそのままで仮面なんか被っても意味ないじゃん!!

 …いやいや、そんなことを言っている場合じゃなくて!!」


 レディシャークが顔色を変えて、私から距離を取る。


 「この温泉に来たのは悪事をするためじゃないから!ただ、『温泉地の視察』をして、『温泉郷・スカルス&ジョーズ』を作る参考にしたかっただけなの?!お願い!見逃して!!」

 レディシャークはいきなり私に向かって土下座をした。

 それに続いて、周りにいた「妙な気配の男女」もレディシャークに続いて『生まれたままの姿』で土下座を始めた。


 「……みなさんから敵意を感じないから、話を聞いてみてもいいわ。

 とりあえず、上がって服を着てから話を聞かせてくれる?」


 海外から日本に進出してきた『秘密結社・スカルス&ジョーズ』は私たちと戦って、組織がほぼ壊滅状態になったのだそうだ。

 その時、怪人モグラーマンが偶然質のいい温泉を掘り当てたので、温泉施設を作ることで一発逆転を狙うことにしたのだそうだ。

 しかし、海外の秘密結社に温泉施設の経営ノウハウなどは当然なく、みんなで参考にしようと思って、秘密結社全員で視察に来たのだとか…。


 彼らを倒すだけなら一瞬ですが、追い詰められてめそめそしている彼らを粉砕したらこっちが悪者みたいになりそうです。

 …どうでもいいですが、彼ら男女を問わず例外なく美形なのですよね…。


 「私にいいアイディアがあるのだが♪」

 おおっ?!青年実業家の側面を持つ、充さんが何か閃かれたようだ!



 『スカルス&ジョーズ』は充さんの会社と提携し、『温泉テーマパーク・スカルス&ジョーズ』を立ち上げることになりました。

 充さんは提携により、潰れかけたテーマパークをいくつも再生させている『テーマパーク再生王』としてその筋では有名なのでした。

 少し前にモンスターバスター協会と共同で立ち上げた『わくわくランド』も卓越した技術と奇想天外なアトラクションで大人気なのでした。


 そんなわけで、事件はあっさり解決し、充さんとスカルス&ジョーズの皆様は帰っていかれました。


 「どうする?私たちはもう少し温泉に浸かってから帰ろうか?」

 「そやね…。せや!家族風呂に一緒に入るいうんはどないやろか?!」

 いえいえ!あの時はそんなセリフは言ってませんから!!


 ええ??!!また、私は一緒に付いていっているよ?!!

 一緒に家族風呂に入ったのは『ひと月前』の話だからね?!!

 ……またまた桃色の夢に変化してしまったのですが??!!


 …というところでまた目を覚ましてしまいました。現実が桃色なのは、単に幸せでいいのですけど、夢が桃色というのは『覚めた時のがっかり感』が酷いのですよ…。


 ……ん?昨夜もベッドの中で二人のコミュニケーション(物理)を行ったまま寝てしまったから……『合体が解除されていない』じゃありませんか?!!

 うん、そりゃあ、桃色の夢を見てしまいますよね…。


 トレーニング開始までにはまだ1時間以上ありますね…。

 『夏には南の島のリゾートに行くんや♪』ですか…、寝ぼけてそんな夢を見ておられるのですね…。わかりました。夏も一緒に楽しみましょうね♪


 P.S. もうひと寝入りしようかと思ったら、なんと、光ちゃんが目を覚ましてしまい、コミュニケーション(物理)を再開することになってしまいました。

 トレーニングはギリギリセーフで間に合いました。(苦笑)

 この、エロ光ちゃんが♪♪


 続く


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