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25 小さな恋の物語 その1 (出会いからゴールインまで)



※主な登場人物


石川瀬利亜  熱血男前スーパーヒロイン。一人ノリツッコミが特技。


錦織光一  瀬利亜はんの婚約者。関西弁を操るイケメン。瀬利亜はんとの夫婦漫才が得意。


神那岐千早 瀬利亜はんラブの人形みたいなかわいい女の子。最強のモンスターバスターの一人。


北川望海 コンバット系の魔法少女にして、スーパーヒロイン。完璧な美少女で、瀬利亜はんを尊敬している。

 私は草むらに入って泣いていた。

 驚愕の事実を突き付けられ、受け入れがたくて、一生懸命その場から走って逃げて、そして、草むらに座り込んでそのまま泣き続けていた。


 その恋は私の初恋でした。

 父はすごくかっこよかったですが、恋愛対象とは少し違いました。

 母を心からパートナーとして愛していることが小さな子供なりにはっきりと感じられたこともあるのでしょう。

 もちろん、父はカッコいいだけでなく、ものすごく優しかったので、大好きでした。


 そして、そんな父の親友で『ダンディーなおじさん』と出会った時、四歳の私の心は天にも昇るくらいときめいたのです。

 少し遊んでもらった後、私は『大きくなったら結婚してください。』とおじさんに一生懸命お願いしました。

 おじさん、齊藤さんはとても困った顔をされた後、やさしく私に言ってくれました。

 「とっても可愛らしいおじょうさん。気持ちはとても嬉しいよ。おじさんが独身で君と同じくらいの年齢だったら喜んでプロポーズを受けていたと思うよ。

 …でもね、おじさん結婚して心から愛している女性がいるんだ。

 申し訳ないけど、君のプロポーズは受けられないんだ。本当にごめんね。」

 おじさんは一生懸命謝ってくれました。


 四歳児とは言え、頭を思い切り殴られたくらいショックでした。

 そして、小さいなりに自分の父が母を愛するようなものだと理解し、なんとかその場はおじさん(今の武術の師匠の齊藤警部)ににっこり笑ってあいさつをしてその場から走って行きました。

 でも、走りながら涙がぼろぼろこぼれてきます。

 まもなく、走る気力も尽きて、草むらに座り込んでえんえん泣き出してしまいました。


 しばらく泣き続けた後、後ろから男の子が声を掛けてくれました。

 「おじょうはん、そないなトコで泣いてどないしてん?

 お兄はんにわけを話してみいや。」


 私よりかなり年上の優しそうな男の子に話しかけられて、私の涙は何とか止まりました。

 まだ、ぐずってましたが、お兄さんに答えようとして、一生懸命泣き止もうとしました。


 「あのね、あのね…。」

 私が話し出すとお兄さんは一生懸命話に耳を傾けてくれます。

 小さな女の子の言うことだからと馬鹿にせずに話を聞き、時々いろいろコメントをくれるお兄さんのことがすっかり気に入ってしまいました。


 お兄さんは私が泣き止んだ後も、しばらく私と一緒に花の輪を作ってくれたりと遊びに付き合ってくれました。


 花の輪をお互いの頭に乗せっこしたとき、お兄さんの携帯が鳴りだしました。

 携帯を見てお兄さんは口を開きます。

 「ごめんな。そろそろわて、行かなあかんわ。可愛らしいおじょうはん♪一緒に過ごせてごっつー楽しかったで♪」

 「もう行っちゃうの?また会えないの?」

 「そうやね…わて、大阪に帰らなあかんねん。どうやろね、簡単には会えへんかもね…。」

 「じゃ、じゃあ!大きくなってまた会えたら、お兄さん、結婚してあげるね♪」

 私が精いっぱい告白すると、お兄さんは一瞬きょとんとした後、くすくす笑い出した。


 「ありがとな、素敵なおじょうはん♪おじょうはん、将来ぜったいにごっつーべっぴんさんになりはるやろうから、楽しみや!ほんじゃ、さいなら!!」

 私が一生懸命手を振るのに合わせてお兄さんも思い切り手を振りながら歩いていった。


 もう会えないかもしれないお兄さんとのお別れは、寂しくはあったものの、あまり悲しくはなかった。

 優しいお兄さんにすごく大切なものをたくさんもらって、その気持ちがとても嬉しかったから…。


 そんなことを思っていると画面が突然切り替わった。


 しばらく前から『小さいころの夢を見ている』のには気づいていたけれど、こういう『昔の思い出を客観的に振り返る夢』は初めて見るような気がする。


 気が付くと、私は公園の噴水の前に立っていた。私にしては珍しくひらひらを着飾った衣装…いえ、ひらひらを着るのは人生初体験でした。


 まもなく、同じく着飾った光ちゃんが一生懸命走ってくるのが見えた。

 そうそう、あの『初デート』の時、光ちゃんが30分前に駆けつけてきてくれたのだよね…とか思っていると、光ちゃんが私の前に走り寄ってきてくれた。


 「瀬利亜はん、待った?」

 「ううん、大丈夫だよ。」

 「そうか…。ところで先に伝えることがあるんや。」

 「うん、なあに?」


 そうそう、この後、光ちゃんが『付き合ってくれ!』と言ってくれて、そのままプロポーズになだれ込むという劇的な展開だったのだよね♪

 それまで『年齢』=『彼氏いない歴』だった私の人生の大転換点なのでした。


 そして、夢はしばし、思い出の通りに進み、私は無事に光ちゃんのプロポーズを快諾したのでありました。


 しばし一緒に初デートを楽しんでいた私たちですが、ある通りに差し掛かった時、光ちゃんが口を開きます。

 「おお!!ラブな感じの素敵なホテルがあるやん♪ちょっと休憩どないやろか♪」

 いやいや、その日はそんなことは言ってませんから!!

 というか、私もひょいひょい後を付いていっているんですけど?!!


 二人で『ラブな感じの素敵なホテル』についつい入っていってしまったのはつい最近の話ですから?!!

 …と言いつつ、私たちはそのままホテルの一室に入っていき……。

 いきなり桃色の夢になってしまっているんですけど??!!


 …というところで目を覚ましてしまいました。現実が桃色なのだったらいいのですけど、夢が桃色というのは困りますね……ん?ベッドで一緒に寝ている光ちゃんが私に後ろからしがみついて…現実も桃色でしたよ!!!

 私のお尻に『謎の物体(笑)』が当たっているじゃありませんか!!

 昨夜ベッドの中で二人のコミュニケーション(物理)を行ったまま寝てしまったから、謎の物体が直接私のお尻にあたってしまっています!

 そりゃあ、桃色の夢を見ますよね…。


 時計を確認すると、そろそろ朝のトレーニングの時間になりそうなので、少々『名残惜しい』気がしますが、ベッドから起き上がることにします。

 …だから、光ちゃん、後ろからしがみつかないでくださいませ!!

 『瀬利亜はん、捨てないで!』て、寝ぼけて何を言っておられるんですか!!

 捨てるわけないので、もう少しゆっくりお休みください!!


 なんとか、光ちゃんを起こさないように、上手に引きはがして、私は寝室を後にします。

 最近はトレーニングにちーちゃんだけでなく、望海ちゃんも参加されるようになったので、遅刻するわけにはいかないのですよ。




 「「お疲れ様でした!!」」

 朝のトレーニングを終えて、ちーちゃんと望海ちゃんが挨拶をしてくれる。


 望海ちゃんは少し息を切らしているけれど、ちーちゃんは涼しい顔をしています。

 二人とも素手での格闘・武器戦闘共に上達がすごく早いです。


 ちーちゃんは特に上達が著しく、ちーちゃん本来の剣士としてももちろん、素手同士での模擬試合でも私が『シードラゴンモード(無敵モード)』に入って能力を引き上げないと私が勝てなくなってきているのだ。

 そう遠くないうちに『無敵モードになってすら』勝てなくなりそうだ。


 そして、ちーちゃんは私に勝つたびに『増長』…どころか、『上達して瀬利亜さんに勝てるようになりました!瀬利亜さんのご指導のおかげです!頑張ったことを褒めてください!!』と言わんばかりに私を『かわいく見上げておねだり』するのです!!

 もう、反則ですよ!その可愛らしい表情は!!

 私は『もてる限りのボキャブラリー』を使ってせいいっぱいボディランゲージも併用して褒めてあげるしかないじゃないですか!!


 そうするとまた、ちーちゃんが本当に嬉しそうに笑ってくれるんですよ!!

 『こんな可愛らしい生き物がこの世にいたのか?!』と毎回感動して思い切り抱きしめてあげるのです。


 それを見ていた望海ちゃんもすぐに『おねだり』をするようになったので、同じように褒めてあげるようにすると、望海ちゃんも各種技能メキメキ上達してくれています。

 こちらも見た目も中身も『可愛らしい完璧な美少女』なので、褒め甲斐も抱き甲斐も素晴らしいものがあります!


 先日、その光景を見ていた光ちゃんがため息交じりに言いました。

 「瀬利亜はんは褒めて伸ばす達人やね。ただ、『フラグを思い切り立てている』ことだけは気い付けはった方がええよね…。」

 以前もそんなセリフを聞いたことがあるよね…。ところで『フラグを立てずに』褒め倒すにはどうしたらいいのでしょうか…。


 そんなことを考えていると、普段着に着替え終わったちーちゃんが話しかけてきます。

 「とうとう、結婚式が三日後になりましたね。」

 「私たち『年齢=彼氏いない歴』女子としては素敵な彼氏をゲットする方法を伝授してほしいところです。」

 同じく着替え終えた望海ちゃんも会話に加わってくる。


 「三日後か…でも、よく考えたら結婚しても生活を含めて前と全然変わらない気がするね。」


 本来は結婚を期に光ちゃんは高校教師を退職して、モンスターバスター協会に就職し、スーパーヒーロー協会立ち上げの準備を始める…予定でした。

 しかし、もろもろの事情により、光ちゃんの後任選びが難航して、学校とモンスターバスター協会が光ちゃんに泣きついて『もう1年高校教師&持ち上がる私たちのクラスの担任就任』を依頼したのでした。

 私『無敵のシードラゴン』、ちーちゃん『護国刀・神那岐の太刀継承者』、そして副担任のアルさん『大魔女』とモンスターバスター最高メンバー一二星が三人もいるクラスの担任を引き受けてくれる人がどうしても見つからなかったのだそうです。

 そんな大人の事情もあり、新学期からも『日常がほとんど変化なし』なのです。


 「結婚間近だと、マリッジブルーになることがよくあると聞きますが、瀬利亜さんはどうなんですか?」

 望海ちゃんが興味深そうに聞いてくる。


 「そうね…。光ちゃんが新しい仕事に就く気満々で、その準備ばっかり進めてきたから、進路が変わって、急遽『担任の準備』に大慌てだわね。

 おかげで結婚関連の雑用を私がほとんど一人でやっているので、少々ブルーな気分だわ。

 こういうのをマリッジブルーというのかしら?」

 「「絶対違うと思います。」」


 「結婚に対する不安が、主に女性の側から出ることが多い…という話です。」

 「そうだったの。だったら全然ないわね。」

 「そうですよね。それは予想通りです。そして、光一さんにもそれとなく聞いてみました。」

 え?望海ちゃん、光ちゃんに何を聞いているの?


 「光一さんの答えは明快でした。

『結婚することに対する不安があるわけないやん。そもそも別れることなんか想定したくもあらへんし。なにしろ、三日瀬利亜はんと会えへんかったら寂しうて、死んでまう自信があるさかい!』

 そう『きっぱり断言』されてました!」

 光ちゃん、なんの自信ですか??!!そんなこと、来年教え子になる女の子に向かって断言しないで下さい!!


 「話は変わって、望海ちゃんご希望の『素敵な彼氏をゲットする方法』だけれど、こっちは『光ちゃんの方から告白』してくれたから、私からコメントできる『ゲットする方法』はないのよね。自慢じゃないけど、光ちゃんと付き合うまでは『年齢=彼氏いない歴』だったから…。」

 「うーむ、では、素敵な幼馴染が身近にいれば…参考になりそうですが…。千早さんは幼馴染に心当たりは?」

 「私の生まれ育った村は近い年代の男性がそもそもいなかったから…今も身近に瀬利亜さん並みに素敵な男性は見当たらないですし…。」

 「そうですね…。私の方もそこそこ魅力的な異姓はみんな彼女がいますし、彼らとて瀬利亜さん並みに魅力的なわけじゃないですからね…。」

 「待って、二人とも!!なんで比較対象が私なわけ??!!」


 「えええええ??!!だって瀬利亜さん、すごく素敵ですし……。」

 「個人的に『男前度指数』という指標を作って、周りの人に当てはめてみましたが、身近な人でダントツに男前度が高かったのは瀬利亜さんです。

 さすがは私が世界で一番尊敬している上司ですね!この出会いは神に感謝するしかありません!」

 これか?!!これが『フラグが立っている状態』なんですか??!!!


 「あの、二人とも、女性が好きなわけではないよね?」

 「「もちろん、瀬利亜さん並みに素敵な男性が現れれば文句なしです!!」」


 ……ここは喜ぶべきところなのですよね??!!誰かそうだと言ってください!!


 続く


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