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20 あるモンスターバスターの日記 (ドクターフランケンの憂鬱 後編)

 「はっはっはっはっは、見よ!このブラックシードラゴンマスクの雄姿を!!

 さあ、いざ尋常に勝負!!」

 「……えっと、水着を着て、ビーチボールを持っているということは、『ビーチバレーで勝負!』とか言いたいわけなのかしら?」

 「ふっ、察しがいいなシードラゴンマスクよ!さすがわしの宿敵だけのことはあるわ!」

 「……あのう……ここ渓流なんで、川原が石がごろごろしていてビーチバレーには全然向いていなんですけど…。」

 「ぐぬは!!ぬかったわ!!」

 おいおい、ドクターフランケン、大丈夫ですか?


 「あらあ、大丈夫よ♪今からみんなで海に行けばいいのよ♪」

 「ええ?何を言っているの?!ここは山梨県の山の中でしょ!」

 「あら、麗華ちゃん。それが大丈夫なの♪」


 麗華ちゃんのツッコミにアルさんは涼しい顔で謎の効果音と共に懐から扉状のものを取り出す。

 「じゃーん!どこでもゲートです♪

 これで、湘南の海にあっという間に行けます♪」

 いやいや、その名称と能力は版権に関わるアイテムです!!ヤバイです!!


 「あらあ、瀬利亜ちゃん心配そうな顔をしているけど、大丈夫よ♪

 私が行ったところにしか行けないという『ファンタジー系のテンプレ』だから、全然問題なしよね♪」

 いえいえ、問題ありありです!!それと、私の思考を読まないで下さい!



 そして、私たちは湘南の海岸の砂浜でビーチバレーの勝負を行うことになりました。

 スーパーモンスターズチームは麗華ちゃんとブラックシードラゴンマスクです。

 対する私たちは私とちーちゃんだ。


 ちーちゃんは小柄で天然で普段はほわほわしているだが、運動神経抜群なので、この勝負は私たちが有利だと張り切っております。



 ……一〇分経過し、あまりにも一方的な展開に私と麗華ちゃん、ブラックシードラゴンマスクが呆然としています…。

 ちーちゃん、すご過ぎです!!

 小柄なのにジャンプ力もあり、スピード、反射神経、判断力とも抜群で、私との連携も相手の動きを見透かして、適切なアタックを叩き込みます。

 タイミングや方向など私を遥かに凌駕しています。


 そういえば、モンスターバスターとしての戦闘訓練でも最近では私が『無敵モード』に入らないと、勝てないくらいになってきていたよね…。

 よし、モンスターバスター協会の仕事は将来はちーちゃんに任せてしまって、私はスーパーヒロインに専念するという構想も夢ではなくなりそうだ!


 おっとっと、私たち三人が固まってしまっていたので、ちーちゃんが心配そうに私の方を上目遣いに見上げてくる。

 「ちーちゃん、すごいわ!いつもスゴイスゴイとは思っていたけれど、ここまでスゴイとは思っていなかったから、ビックリしすぎて止まっちゃった♪」

 おーし!最高の笑顔を作ってちーちゃんを見たから、明らかにほっとした顔になってくれたぞ!

 「運動神経のすごさはもとより、要所要所での判断力も最高だわ!私と息を合わせて攻撃したり、カバーしたりする巧みさはちーちゃんが頭がいいこともだけど、優しくて配慮できる素敵な性格がにじみ出ているわね!パートナーになってくれてありがとう!!」

 言いながらちーちゃんを抱きしめてあげると、顔を赤くして照れてくれた。

 よっし!カバー成功!!


 なお、この件で後から光ちゃんに言われました…。

 「瀬利亜はん、親しい相手に元気づける言葉をすごく上手にかけはるよね。しかも『本気で言わはっている』ことが相手に伝わりはるから、すごく効果的やねん。

 とってもいいことされてはるんやけんど……同時にものすごい『フラグ』を立ててはることに気付かれた方がええで。

 千早はんが瀬利亜はんを見る目が『最愛の人を見る目』になってはったから…。」

 ……ええと……私もちーちゃんのことは目の中に入れても痛くないくらい大好きだし、かわいいのですが……同性なので、恋愛対象外なんですよね…。

 ちーちゃんも、うん、きっと恋愛対象外に違いありません!!


 さて、話は試合に戻って、私とちーちゃんが試合の体勢に戻った時、麗華ちゃんは何とか自分を取り戻しましたが、ブラックシードラゴンマスクが……。

 「馬鹿な!そんな馬鹿な!私が、この天才の私がこんなにボロクソに負けるわけがない!!

 この『無敵のシードラゴン』がこんな屈辱的な負け方をするはずがないんだ!!」

 思い切り天を仰いで叫んでいましたが……ボン!!という音とともに頭が火を噴きました。


 「ちーちゃん!みんな!さがって!!」

 私は叫ぶなり、ブラックシードラゴンマスクに蹴りを叩き込み、海に向かって吹っ飛ばします。

 そして、そのまま麗華ちゃんを抱えて、砂浜に伏せます。


 まもなく閃光と共に轟音が響き、海中に没したブラックシードラゴンマスクが大爆発を起こしました。


 「ブラックは精神的にもろいものなのね…。」

 立ち上がった私は海を見ながらつぶやいたが、光ちゃんの叫びで我に返る。


 「大変や!サーファーのみなさんとかがなにごとか思うて集まって来そうや!早よう撤収せんとあかん!」

 「了~解♪では、みなさん、そのままこちらのゲートへようこそ♪」

 アルさんの声に従って、みんなは急いでゲートをくぐって渓流へと戻った。


 大爆発があった上、扉に何人もの人間がくぐっていって消える姿を目撃ことから湘南の海岸は大騒ぎになったそうだが、初夏の海で人出があまり多くなかったことが幸いし、『何かの見間違い」ということで事件は収束してくれたそうだ。

 ただ、真相を知ったモンスターバスター協会日本支部長はまたも卒倒したそうな…。




 「夜はやっぱりキャンプファイヤーよね♪キャンプしている気分で盛り上がるわ♪」

 川原に戻ってからキャンプファイヤーの準備をてきぱきと進め、調理を進めていった。


 鍋料理や様々な料理が並んでいる。

 湘南で入手した魚介類を活用した寄せ鍋と、牡丹鍋。鹿の赤ワイン煮込みなどのジビエ料理も楽しめるのは嬉しいことだ。


 「ちょっと待って!いつの間に鹿なんか捕まえて料理していたの?!」

 麗華ちゃんが私の説明を受けて突っ込んでくる。

 「ああ、この地方ではちょっと気の毒だけど鹿も害獣扱いなの。

 本当は自然林なら餌が豊富にあるから、鹿も人里まで降りてきて畑を荒らす必要がないのだけれど…。」

 「その話は昼間聞いたから!!鹿が害獣かどうかじゃなかくて、いつの間に捕まえたわけ?!!…あと、鍋を見たら鯛とかヒラメも入っているけど、海へ行ってすぐビーチバレーしていたわよね?!!」

 「ふ、よくそこに気付いたわね♪『乙女の秘密』というやつなのよ♪」

 「……わかった、もう突っこみません。大人しくいただくことにします…。」


 そして、ドクターは気落ちしているものの…食べてるよ!めっちゃたくさん食べているよ!絶対にやけ食いだよね?!!

 他のみんなは和気あいあいと山海の御馳走を頂いたのでした。。



~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~



 「はっはっはっはっは、見よ!このブラックシードラゴンマスク三銃士の雄姿を!!

 さあ、いざ尋常に勝負!!」

 ええと、私、羽生麗華…いえいえ、今はスーパーモンスターズ幹部レディマントです!

 私、レディマントは懲りないドクターフランケンとその作品がシードラゴンマスクと対峙する姿をどうしても冷ややかな目で見てしまっていた。


 ドクターの能力は認めます。よく、あれだけの発明をできるものだと感心します。

 でも、相手が悪すぎるんですよね…。

 あの『いろんな意味で規格外すぎる』無敵なスーパーヒロインにどうやって立ち向かったらいいのやら…。


 「はっはっは!!黒い三連星アタックだ!!」

 「シードラゴン七影身!!」

 なんと、ブラックシードラゴンマスクの三連星の攻撃が本物の分身を見た途端に思わず止まってしまう!!


 「隙あり!!シードラゴン猛虎掌!!」

 三体ともあっという間に吹き飛ばされて、バラバラになってしまった。

 「残念ながら『熱く燃え盛る正義の心』を再現しない限り、レプリカでは私には勝ちようがないわ!!」


 「ちきしょう!!アイ シャル リターン(必ず帰ってくる)!!」

 …ええと、われわれはまたも敗走します。


 シードラゴンマスクは我々を『お約束程度に』追いかけて、それからほどほどのところで適当に放置して逃がしてくれます。…ドクターフランケンもシードラゴンマスク…瀬利亜さんも何を考えているのでしょうね…。


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