番外編3 栄冠は君に輝くか?! その8
(SIDE瀬利亜)
現在、ライトニングレディの猛攻の前に私は防戦一方になっています。
もともと格闘技の達人で、その卓越した移動能力、速さで対応が難しい相手ですが、近接戦になった際に明らかに今までとはずっと手数が増えてます。
それもあり得ない攻撃パターンが続いているのです。
最初は戸惑いながら、なんとか必死に防戦し続けました。
そして……ライトニングレディが右回し蹴りを入れた直後、その右足を『透明な壁を蹴る』ようにして、新たな攻撃の始点にしたのを見て、私の背中に鳥肌が立ちました。
彼女は『空間に自在に力場を作り』、そこを足がかりに攻撃や防御を行っているのです!
その卓越した移動能力、格闘戦能力と合わせることで攻防の幅が恐ろしく広がりますが、適切な場所に適切なタイミングで力場を作らなければ、かえって行動がちぐはぐになってしまいかねません。
ライトニングレディはその一連の作業を流れるように自然にこなしています。
「能力」に目覚めてから相当修練を積んでいるのは間違いありません。
しかも、現時点で以前の対戦時より修練を積んだ私と互角以上に格闘戦で戦っているのですから、格闘戦能力自体もずっと磨き続けているわけです。
ライバルながら頭が下がるひたむきさですが、だからこそ、このまま押し込まれるわけにはいきません。
ライトニングレディが『奥の手の一つ』を使ってきたのですから、私もそれに応える必要があるでしょう。
私は薄く笑うと、さらに全身に氣を込めた。
(SIDE健人)
思い切り攻勢に出ていたライトニングレディがさっと瀬利亜から距離を取った。
瀬利亜からはさっきまで以上に強烈なオーラが出ているように感じるのだが、これは一体?!
「観客の皆様も今の一連の攻防に疑問が多々あると思います!
そこで、私『奇跡の超人ミラクルファイター』がわかりやすいように少々解説を行いたいと思います。」
いつの間にか解説席にいたミラクルファイターがマイクに向かってしゃべっている。
それに対して観客からも歓迎の歓声が聞こえてきた。
「まず、ライトニングレディがガンガンと攻勢に出たのは『空間に足場』を自由に使って底を攻防の起点に使ったから。
自分だけが使える攻防の起点を自由に設置し活用できるなら、格闘戦に於いて有利になるのは少しでも格闘技をかじったことがあれば分って頂けると思う。」
おおおおおおおっ!!!!!とミラクルファイターの解説に会場内が沸き返る。
「格闘技だといまひとつわかりにくいけど、たとえばテニスで会場内に自由に動かせる反射板を操作してよければ圧倒的に有利になるのは明白で、それを聞いた皆さんはほとんど反則ではないかとも思えるんじゃないだろうか。
だがな。力場を設置してコントロールしたり、その力場を攻防に利用するためにライトニングレディはすさまじい鍛錬を続けたことは間違いない。
自身の能力を存分に活用するのはむしろスーパーヒーローの本分だ。このことは称賛されてしかるべきであって、非難されることじゃあない。」
ほおおおおお…と会場内がミラクルファイターの解説に耳を傾けている。
「そして、一部の人達は気づいていると思うが、シードラゴンマスクの纏う闘氣がすごく高まり、それに対してライトニングレディが大きく距離を取った…これが今の現状だ。
これはシードラゴンマスクが『近づいた相手の気配に対して自動反撃する闘氣の鎧』を纏い、それをライトニングが察知したのだよ。
達人中の達人は意識した攻防以外に『反射的な攻防』も上手に使いこなすのだよ。ただし、反射的な攻防は一歩間違えると相手の反撃を食らって自爆する危険もあるから、使い方が難しくもあるがね。」
ミラクルファイターの解説に会場内は静まり返った。
俺の考えていた以上に高度な攻防があり、本当にびっくりさせられる。
勇者と言われて称賛されていた俺だが、今回の試合を見ているだけでもいくらでも向上の余地があるのだと痛感させられてしまう。
今回の大会が終わったら俺もさらに修練を積まなければ…。
「しかし、自動反撃する闘氣の鎧をまとうと、『闘氣』そして、そのもとになる氣力を大きく消費するはずなんだがね。シードラゴンマスクはほとんど影響がないかのような涼しい顔をしているな。さすがは規格外のスーパーヒロインだ。
……おおっと?!!シードラゴンマスクが全身から発する闘氣をさらに大きく上げて来たぞ!!これは、勝負に出るつもりだな!!
しかも、ライトニングレディも同じく全身から出す闘氣を大きく上げているぜ!!しーごらごんマスクの攻撃を真っ向から受けて立つつもりか?!
二人ともさすがだねえ!実力ももちろん、スピリットが根っからスーパーヒロインだ!!
『頂上決戦』の勝負が着くのが近いか?!!!」
二人の出す闘氣のオーラがさらに高まり、会場の空気が大きく震えた。
会場中を動き回るすさまじい激闘がしばらく続いたが、最後は瀬利亜がライトニングレディを場外に叩きだして勝利した。
とっさに『気合で作った力場から攻撃』して、それに対してライトニングレディの対応が遅れたのだそうだ。
「試合だったから勝ったけど、実戦だとこれからだった。本当に対応力のある素晴らしいスーパーヒロインだわ。」と瀬利亜が絶賛していた。
うん、とっさに気合で力場を作ってしまえる瀬利亜も十分すぎるくらいすごいと思います。
(SIDEグレートホークこと、ケツアルコアトル)
今回の試合では私はほぼ何もしないうちに終わってしまった。いや、うさぎさんゴッデスにさまざまな攻撃を仕掛けはしたのだよ。
ただ、とんでもない結界を何十にも張られたり、分身をたくさん作られて、その対応をしているうちに下の方で決着が付いてしまっていたのだ。
これでは実質シードラゴンマスクとライトニングのシングルマッチだよな。
まだまだ私自身も修行の余地が多々あると『新鋭気鋭の女神様』に教えて頂いた試合になった。
(SIDE健人)
「いよいよ最終競技は『巨大ロボット決戦』や!
各チーム全員が巨大ロボットに乗り込んでの競技やで!!」
聞いてないよ!!競技者まで全く聞いていないサプライズ競技、それも巨大ロボットとは明らかにやり過ぎだ!!
…と思って瀬利亜に眼をやると……瀬利亜も疲れたような顔をしていた…。
うん、瀬利亜すら聞いていないのね…。
「各チームのロボットはなんと、魔法陣で召喚するで!!」
サプライズにもほどがありすぎるんだけど?!!
(SIDE瀬利亜)
競技開始前にアルさんが六体の魔道人形を懐から取り出しました。
以前も説明したことがあるかもしれませんが、アルさん自身と意識が共有できるという超高性能のロボットのようなもので、使える魔法もアルさんと同じというチート魔道具です。
七人のアルさんが呪文を唱えると、召喚用の魔方陣が出てきました。
魔方陣の下からもはや見慣れたシードラゴンロボが浮かび上がってきました。
さらにうさ耳の女性型ロボットと、もう一体女性型フォルムの巨大ロボットが姿を現します。
「さあ、合体なのにゃ!!観客のみにゃさんはその眼でしかと見るにゃ!!」
姿を現したうさ耳型ロボットからの吸引ビームによってトラミちゃんが体内に吸い寄せられ、さらにシードラゴンロボともう一体のロボットからは私に向かって吸引ビームが届きます。
ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん♪ ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん♪
悪に染まりし者どもよ♪(ぴょんぴょんぴょん!)
今こそ その眼でしかと見よ♪(ぴょんぴょんぴょん!)
こちらにおわすお方こそ♪
おそれおおくもシードラゴン♪
さがれ!さがれ!さがれ!さがりおろう!(ラビットイアー!)
カモン!カモン!カモン!シードラゴン!(グレートラビットイアー!)
最強うさ耳!(最強最強……)最強うさ耳!(最強最強……)
うさ耳シードラゴン♪(うさ耳シードラゴン)
どこぞからパクったと思しき歌が流れながら、三体のロボットが合体し、うさ耳になったシードラゴンロボが降臨します。操縦はなし崩し的に私です。
以前どこぞの異世界で『水戸黄門選手権』をやらかした時の猫耳シードラゴンロボの二番煎じのような気がしますが、こちらの観客の方たちのほぼすべては猫耳シードラゴンロボを見たことがないのが不幸中の幸いです。
特に突っ込み八兵衛こと橋本君がチームにいなかったことは本当に良かったです。
競技自体はロボット搭乗経験が一番豊富な我がうさぎさんチームが優勝したことを付記しておきます。
そして、その結果総合優勝もうさぎさんチームでした。
なお、ロボットの活躍の場を増やしたい『一部の人達』がスーパーヒーローオリンピックを一年に一回の開催にしようと工作していましたが、一昔前の軍産系のようなマッチポンプな言動はだめだと私が説得(物理)して、取りあえず二年に一回のままで行くことになりました。
光ちゃんもアルさんも変な人たちの説得に流されようとしないでください!!
(了)




