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番外編3 栄冠は君に輝くか?! その6

(SIDEライトニングレディこと、マリーザ・アルバネーゼ)


 いよいよスーパーヒーローオリンピック二日目はメイン競技に入ってくる。


 初日の競技も非常に興味深かったが、ややエンターテインメント重視のような気がした。

それでも各チームの特色がいろいろ出て、それぞれのチームの実力者たちのスゴサが見えてきて、自分が非常にわくわくしているのが感じられる。


 スーパーヒーローオリンピックという競技の結果自体にはさほど興味はないが、スーパーヒーローの道にまい進している仲間たちがどれだけ自分を磨きあげたのかが目に見えてくるイベントだけに参加するだけでもすごく意義があると感じる。


 そして、今まで自分がどの程度精進出来てきたのかが結果として見えるのは本当に励みになる。

 前回のオリンピックでも優勝こそできなかったものの、あの尊敬する人と接戦を演じることができた。

 最後は押し切られてしまったが、『逆境でもあきらめない』ことの大切さを確認させてもらうことができた。『あの時』と同様に…。




 その日、私とランディアは他の三人のスーパーヒーローと共に怪物を召喚する邪教集団殲滅の任務に就いていた。

 私の探知能力を活用し、教団のアジトを速やかに突き止めた。

 そして、ランディアや他のメンバーと協力して、構成員たちをあっという間に無力化することができた。

 しかし、私たちは油断していた。彼らの扱う『異界の怪物』がどれだけ規格外の存在かを知らなかったのだ、


 その犬に似た醜悪な怪物は体の頑強さや攻撃力の強さもライオンなどの猛獣を遥かに超えた文字通りの化け物(モンスター)だった。

 しかし、そいつの真の恐ろしさは恐ろしいほどのスピードと、さらに自在に『空間を渡る』能力だった。

 その化け犬とでも呼ぶべき怪物はこちらの攻撃をすり抜けて、あっという間に仲間の体を鋭い爪と牙で切り刻んで、戦闘不能にしてしまった。

 カラテやジュウドウを身に付け、チームの中では一番攻守のバランスの取れていたランディアも五分とかからずに戦闘不能になった。


 私も死を覚悟した。

 しかし、私が倒れたら、他の四人も殺されることは間違いなかった。

 仲間の三人が倒れた際にSOSを発信していたので、助けが来るまでなんとか時間を稼ごうとした。


 不思議なことに私は奴がどう動いてくるのかが『なんとなく視え』た。

 不意に自分の傍に出てくるのを予測し、どの攻撃もぎりぎり躱すことができた。

 それでも、なかなか思ったようには体は動かなかったものの、必死で逃げているうちに、少しずつ自分のビジョンに体が付いていくようになった。


 そんな時間がどれくらい続いただろうか。私の体は疲れから、少しずつ切れが悪くなり、敵の爪や牙の攻撃がかするようになってきた。 

 体のあちこちが酷く痛み、心が少しずつ絶望に蝕まれそうになった。

 それでも、自分がやられたら仲間たちやランディアが確実に殺されてしまうのだ。

 私はなにがあっても救援が来るまで倒れるわけにはいかなかった。



 痛みと極度の疲労で目がかすみそうになった時、扉がぶち破られ、銀色の影が飛び込んできた。

 人影が飛びこむと同時に化け犬はその人の背後から姿を現し、鋭い爪で襲い掛かった。


 (危ない!!)

 救助に来たその人が切り裂かれる姿を予想した私はしかし、次の瞬間仰天した。

 爪による攻撃をまるで見えているかのように流れるような動きで躱すと同時に、化け犬にひじ打ちを叩き込んだのだ。


 「GYAUUUUUNN!!」

 化け犬は素早く空間を渡って逃げ、その人に向かって威嚇する体制を取った。


 「ほとんど効いていないようね!全くとんだ化け物だわ!」

 銀のコスチュームを纏ったその女性はカラテのような構えをして化け犬を見据えながら言った。


 その構えと纏っている空気を見てすぐに分かった。この人はランディアとは別次元の武道の達人だと。

 化け犬もそれを察知したようで、私たちと対峙していた時と違い、その人をものすごく警戒するように動いていた。


 その人と化け犬との対決は私たちの時と立場が逆転した。

 なんと、その人は空間を渡る怪物にあっという間にすり寄って攻撃を仕掛け、化け犬の方が避けながらなんとか反撃を試みる流れになったのだ。


 化け犬の鋼鉄の扉を引き裂き、コンクリートの壁を簡単に砕く鋭い爪は恐ろしい速さで女性に襲い掛かっていったが、女性は流れるようにその攻撃を避けた。

 そして、女性の細腕が銃弾をも弾く化け犬の体に当たると、怪物ははじけ飛んで痛がり、女性から距離を取って身構えた。

 私たちと戦った時からは信じられない光景をしばらく見ているうちに、女性が相手を攻撃する際や攻撃を受ける時には腕や足などが淡い光のようなものを放つことに気付いた。

 後でわかったことだが、スーパーヒーローに多い、武道の達人や超能力者は生命エネルギーとも言うべき『氣』を戦いに活用し、攻撃力や防御力を大きく上げるのだ。

 その女性は攻守に自在に氣を扱い、また、相手の氣を読むことで攻撃を当てたり避けたりしていたのだ。


 それからしばらく女性と化け犬は死闘を繰り広げたが、化け犬はあちこちから真っ青な血を流し、女性も避けきれなかった傷を少しずつ増やしていった。

 化け犬は段々動きに精彩がなくなってきだしたが、女性は傷が増えてもその動きの正確さは変わらず、いや、ますます動きが研ぎ澄まされていくように見えた。


 少しずつ追い詰められていった化け犬が最後の力を振り絞るように襲い掛かった時、女性の纏う光が爆発的に増え、攻撃をかわした彼女の左手が化け犬の左目を貫き、頭に突き刺さっていた。

 「GYEEEEEEEEE!!!!」

 苦しそうな悲鳴を上げて、化け犬は動かなくなった。


 そして、左手を化け犬の頭から抜いた女性は振り返って私を見た。


 私は息を飲んだ。怪物の青い血に全身がまみれ、傷だらけの彼女がとても神々しく見えたのだ。

 「大丈夫?大きな怪我は無いようだけど。

 それと…なんとかまだみんな生きているようね。一刻も早く手当をしないと!」



 それから二人でランディアたちの応急手当てを必死で行った。

 彼女とはいろいろと話をしたけれど、いっぱいいっぱいで何を話したのかあまり覚えていない。ただ、私から状況を聞いた彼女が言ってくれた言葉が私の脳裏に今も刻まれている。


 「よく頑張ったのね。こんな規格外の怪物を相手に大切な仲間を必死で守り切ったのは本当にすごいことだわ。私はアメリカに来て本当に素晴らしいスーパーヒロインに逢うことができたのね!」

 見ず知らずの私たちを必死に守って戦ってくれたその女性はその暖かい笑顔と言葉で私のスーパーヒロインとしての人生を根本的に変えてくれた。


 それまで漫然とスーパーヒロインとして活動していた私は…あの日以来…。



(SIDE健人)


 二日目は注目度の高い『タッグ戦』と『五人全員参加の最終競技』が行われる。

 張り切って臨んだ本日最初の競技は……『レッツ・プレイ・ミュージック♪』………はあああああああ?!!


 俺たちは焦った。特に俺は楽器は学校でレコーダーとか、カスタネット、トライアングルくらいしか扱ったことはないんだけど?!


 「大丈夫!みんなができることを合わせれば、なんかとなるわ!

 まずは音楽に関して自分のできることを自己申告して!」

 瀬利亜は一見涼しい顔で言っているが…付き合いの長い俺には冷や汗をかいているのがはっきりとわかる。

 学校時代は音楽は苦手だと言っていたな…。ダンスとかは得意なようなのだが…。




 「続いてはうさぎさんチームは五位や!!うさぎさんクノイチのハープの弾き語りは非常に高得点や!さらにうさぎさんキャット(笑)のドラムの演奏も迫力あったで!!」


 エイムスのがハープを非常に高いレベルで演奏し、かつ、透き通った歌声を披露したことが高得点につながったようだ。

 さらにトラミちゃんの秘密道具のドラム演奏が思ったよりも高レベルで、エイムスとうまく合わせてくれたことも評価されたようだ。

 後の三人は『全員マラカスで盛り上げ役』…音楽に合わせて踊りまくった瀬利亜以外の二人は『ほぼ背景』だったね…。


 「みんな、よくやってくれたわ!!このメンツでよく五位に入れたわ!これもみんなの頑張りのおかげだわね!!」

 「にゃはははは!!その通りだにゃ♪エイムスの唄は最高によかったにゃ♪私ももっと精進して次回は優勝を狙うのにゃ♪」

 俺以外の四人はめちゃめちゃ盛り上がっているよ?!

 みんなどんだけポジティブなの?!!



 なお、二位は日本チーム、一位はモモンガさんチームだった。


 日本チームはボーカルの千早ちゃんがめちゃめちゃ歌がうまく、その他のメンバーのサポートも非常にうまかった。


 しかし、圧巻はモモンガさんチームだった。

 チーム全員がギターやドラムなどを息の合った抜群の演奏をこなしたうえ、全員歌がうまく、さらに『忍者の掟』というミュージカル風寸劇までこなしたのだ。


 「さすがは忍者さん達ね。最近は忍者さん達、わくわくランドでのアトラクションで『演奏ミュージカル』にチャレンジしているのよ。」


 …ええと、知りたかったような知りたくなかったような舞台裏情報が入ってきました。


 そして、いよいよ俺たちはメイン競技の一つ、『タッグマッチ』に挑むのだった。

(続く)


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