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番外編1.5 こちらにおわすお方をどなたと心得る その5

 「ガルーダ王国チーム、うっかり八兵衛参上!!」

 男の太い声が地下の会場中に響き渡った。

 高さはほぼ二メートルくらいだろうか?そして、何よりもごつい!!さっきの横綱弥七もかなり筋肉質のようだったが、その二割増しくらいの筋肉ダルマのようだ。

 さらにその全身からは白銀の勇者にも匹敵しかねない闘気がほとばしっている。

 何よりの問題は原作のうっかり八兵衛そのままの衣装なんだけど?!!

 その上、ハチベエよりもやや顔立ちは整っている感じだが、これではうっかりではなく、『北斗の◎兵衛』だよね?!!

 

 「では、私の『うっかり』ぶりをとくとご覧じろ!!

 いくぞ!!おおおおっと、うっかああり!!!!」

 言うなり、『八兵衛』は猛スピードで壁に向かって突っ走る。


 ズガシャーーン!!轟音と震動とともに、壁に大きな穴が開き、その穴から涼しい顔をした八兵衛が戻ってくる。


 「はっはっは、『うっかり』壁に穴をあけてしまったよ!

 さあて、次なる『うっかり』は……。」

 八兵衛はしばしあたりを見回していたが、やがて魔神に目を向けると、全身からとんでもない闘気をほとばしらせながら魔神にむかって一歩一歩近づいていく。


 「待て!これ以上魔神様に近づくと、容赦せぬぞ!!」

 「ほお、少しはやるようだが、お前さんは何者だね?」

 「俺は魔神三人衆の一人、氷雪のザラクだ!!」

 青白い衣装をまとった細身の男が、八兵衛を睨みつけながら叫ぶ。


 「よかろう!!ではこの俺の全力を止めてみよ!!」

 八兵衛がファイティングポーズをとると同時に、ザラクの右手から青白い閃光が迸った。

 次の瞬間、八兵衛は氷の柱と化して固まっていた。


 「はっはっはっは!!この俺の氷嵐地獄の前には……。」

 そこまで言って、ザラクは固まった。

 覆っていた氷があっという間に砕け散り、先ほど以上の闘気を放った八兵衛がザラクを睨みつけていたのだ。


 「言うだけの実力はあるようだな。だが、その程度の攻撃ではこの俺の『うっかり』を止めることなどできん!!

 うっかりラリアート!!!」

 八兵衛は一気に加速すると、丸太のような左腕をザラクに叩きつけ、ザラクを吹き飛ばした。


 「はーっはっはっはっは!!この世に俺の『うっかり』を止められるものはいない!!」

 八兵衛が胸を張って高笑いしているよ?!!


 「ちょっと待って!!なんでマルクさんが、八兵衛役やっているの?!!僕が八兵衛じゃなかったわけ?!!!それから、今までの行動は全部『うっかり』じゃなくて、確信犯だよね?!!」

 日本人ぽい、お兄さんが原作の八兵衛そのものの服装で出てきたんだけど…。


 「おお?!!これはこれは、『ツッコミ八兵衛』どの!!相変わらず、見事なツッコミぶりに感服したぞ!!」

 「マルクさん、なに言ってんの?!それから、マルクさんのうっかりはむしろ体を使ったツッコミとでも言うべきものだからね?!!」

 ツッコミ八兵衛はさらにうっかり八兵衛に向かって突っこんでいく。


 「橋本君、なかなかいいところに気付いたわね。」

 ええと、白銀の勇者が涼しい顔をして出てきたのですが。


 「いっそのこと、二人ともツッコミ八兵衛ということでどうかしら?

 あらゆる局面で的確なツッコミを入れられる橋本君が、ツッコミ八兵衛一号。

 体を張った力技で全身でツッこむマルクさんがツッコミ八兵衛二号。

 『技の一号』と『力の二号』ですごくバランスがとれてるわ!」

 白銀の勇者がどや顔で宣言しているよ?!




 「最後が邪神チームの番や!」

 関西弁のイケメンの声に続いて、猫のお面を被ったひょろ高い男性と、全身に黒いローブをまとった禍々しいオーラを放った集団が一斉に会場に入ってきた。

 

 「今までの二チームは個別のキャラクターをアピールしてきました。しかーし、我々はチームとしての水戸黄門で勝負したいと思います。

 それでは皆の衆!!行くぞ!」

 猫の仮面の邪神が一歩前に進みでる。


 「私が『千のお面を持つ邪神(おとこ)』、『這い寄る黒猫』こと、水戸光圀です♪」

 短くかり揃えた銀髪の頭を下げながら邪神が自己紹介する。


 「そして、こちらが『海のように大きな漢』、渥美格ノ進とその下僕どもです!!」

 一人の黒ずくめがローブをはぎ取ると、いつの間にかすごく大きくなった異形の存在がそこに立っていた。

 黒っぽいグレーのタコのような頭をしたその怪物は両手に長いかぎ爪、口のあたりにはいくつもの触手が蠢き、背中にはコウモリのような巨大な翼を生やしていた。

 さらに背後には半漁人のような眷属たちが何十と動き回っている。

 これ、どう見ても創作神話のクトゥ◎フだよね?!!

 海のように大きな漢…どころか、海に眠っている邪神だよね?!!


 「続いて、こちらが『炎のような情熱を持った漢』、佐々木助三郎とその下僕どもです!!」

 さらに一人の黒ずくめがローブをはぎ取ると、巨大な炎とも呼ぶべき存在が顕現していた。


 …その後、空中にいくつもの触手の塊のような巨大な浮遊体が現れたり、いくつもの蹄をもった巨大なイソギンチャクのような邪神が現れたりとわが目を疑うような存在ばかり現れました。

 さらに問題なのは全員原作の水戸黄門一行の扮装をしていることです!!

 邪神達の水戸黄門コスプレとか、誰得なんですか?!!!


 「これはこれは…なかなか個性的な水戸黄門ご一行ですね♪」

 ねえ!ゆる系の審査委員長のお姉さん!!どうしてこの光景を見て、のんきにそんな論評ができるんですか!!!

 観客席でも公国関係者と連れてこられた女性たちは真っ白になって固まっているし、新たに召喚された?観客たちもドン引きなんですけど?!!


 「それでは、これから我々の本格的なパフォーマンスを……おわあああ!!」

 猫仮面の邪神のセリフの途中で炎の邪神が巨大な炎の塊を猫邪神に投げつけたんですけど?!!


 猫仮面の邪神はブリッジで素早く炎を避けると叫んだ。

 「にゃにをするんですか?!

 まさか、先日あなたの分のプリンまで食べてしまった仕返しですか?!」

 何をやってんですか、この邪神(ひと)たち?!


 炎の邪神が放った炎球は壁まで飛んでいくと、轟音と共に破裂し、壁を溶かしてしまいました。

 どんだけ高温なんですか?!


 「おのれ!そっちがその気ならこっちはこうです!!」

 猫仮面の邪神が気合いを込めると、右手にどす黒いオーラをまとった光が集まりだした。

 私も魔法をかじっているからわかるけど、見た瞬間あれのヤバさがわかった。

 この男、バカみたいな恰好をしているけど、確かに邪神だよ!!


 そして、猫仮面の邪神がその暗黒の球体を炎の邪神に投げようとした時、審査員席の方から凄まじいプレッシャーが会場全体を襲った。

 会場中が凍りつき、我々が力を振り絞って審査員席を見ると……あの優しそうだったゆるふわのお姉さんが両目から金色の光を放ちながら笑顔で立ち上がっていた。

 ただ、目の奥が笑っておらず、全身から湧き上がる闘気は並み居る邪神達をはるかに上回っているんですけど…。


 「ニャントロくーん、何をやっているのかな?少し『やりすぎ』じゃないかな?」

 癒し系お姉さんの視線を受けて、猫仮面の邪神が完全に固まっている。


 「いえ、これはですね…。ほんのじゃれ合いと言いますか…。」

 「ふううん。ただのじゃれ合いで、原爆に匹敵しかねない破壊魔法を使っちゃうんだ。」

 席を立ったお姉さんがゆっくりと歩きだし、猫仮面の邪神はじりじりと後ろに下がる。


 「ちょっと、君らも一緒に弁解を……あああ?!クトゥ◎ア以外は全員パックれやがった!!」

 固まってしまっていた猫仮面邪神と炎の邪神以外の邪神はいつの間にか姿を消していました。


 「では、お二人は喧嘩両成敗ね♪」

 全身から凄まじい圧力を放ちながら審査員長のお姉さんが懐に手を入れると、何かがお姉さんの前に飛び出し……えええええ?!!お姉さんが七人に増えているよ?!!


 そして、瞳からさらに強烈な金色の光を放ちながらお姉さんたちが呪文を唱えると、膨大な魔力が噴出すると同時に、お姉さんたちの前に巨大な六芒星の魔方陣が出現した。

 この人、どんな大魔法を使うの?!!



~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~


(SIDE瀬利亜)

 ニャントロさんたちが喧嘩を始めたのを見て、私は飛び出して『仲裁(物理)』しようとして気づきました。

 アルさんが激オコで私と同時に立ち上がっていたのです。

 これは私でも止められません。

 まあ、私の代わりにアルさんが『仲裁(物理)』してくれるでしょうから、放っておいてもいいですね。


 おおっと、アルさんが六体の魔道人形を懐から取り出しました。

 アルさん自身と意識が共有できるという超高性能のロボットのようなもので、使える魔法もアルさんと同じというチート魔道具なのだそうです。


 七人のアルさんが呪文を唱えると、召喚用の魔方陣が出てきました。

 一体何を召喚しようというのでしょうか?


 魔方陣の下から浮かび上がってきたものは…ロボットだよ?!巨大ロボットが浮上してきたんですけど?!!しかも、シードラゴンロボですがな!!

 空中にシードラゴンロボが全容を現した後、さらに猫耳の女性型ロボットと、もう一体女性型フォルムの巨大ロボットが姿を現したのですが?!


 「さあ、トラミちゃん!やっておしまいなさい!」

 「あいあいにゃー!!悪党ども、その眼でしかと見るにゃ!!」

 姿を現したトラミちゃん猫耳型ロボットからの吸引ビームによって体内に吸い寄せられ、さらにシードラゴンロボからは私に向かって吸引ビームが届いたんですけど…。



にゃんにゃんにゃんにゃんにゃん♪ にゃんにゃんにゃんにゃんにゃん♪

悪に染まりし者どもよ♪(にゃにゃにゃん!)

今こそ その眼でしかと見よ♪(にゃにゃにゃん!)

こちらにおわすお方こそ♪

おそれおおくもシードラゴン♪


さがれ!さがれ!さがれ!さがりおろう!(キャットイアー!)

カモン!カモン!カモン!シードラゴン!(グレートキャットイアー!)

最強ネコ耳!(最強最強……)最強ネコ耳!(最強最強……)

猫耳シードラゴン♪(猫耳シードラゴン)



 どこぞからパクったと思しき歌が流れながら、三体のロボットが合体し、猫耳になったシードラゴンロボが降臨します。操縦はなし崩し的に私です。


 さて、流れ的にはここでニャントロさんたちを『仲裁(物理)』するところですが、絵ツラ的にどう見てもただのいじめにしか見えないですよね…。


 「ちょっと待ってください!!私たちはいくら邪神と言っても、あんなの相手にできるわけないでしょ!!」

 うん、ニャントロさんのそのお気持ちはわからないでもないですね…。


 「ニャントロ神、安心するがよい!そんなこともあろうかと、真メカゴメラをちゃんと修理しておいたのだ。安心してこれに乗られるがいい。」

 私たちのプレゼンの時に出てきたドクターフランケンが胸を張って言います。


 「いや、真メカゴメラはさっきロボットの中の人に一撃で粉砕されちゃったでしょ?!さっきよりも悲惨なやられ方をする未来しかみえにゃいんだけど?!」

 「大丈夫じゃ!ニャントロ神が操縦したら真メカゴメラの性能は自動操縦時の約五倍じゃ!では、健闘を祈る!」

 ドクターのセリフと共に真メカゴメラから吸引ビームが放たれ、ニャントロさんを体内に取り入れてしまいます。


 「さあ、それではこれから『天誅』タイムの始まりというわけね。」

 私は猫耳シードラゴンロボを駆り、真メカゴメラに向かい合います。


 「ちょっと待って!話せばわかりますから!!」

 「残念だわ。こと、ここに至っては敵ロボットを粉砕する以外の選択肢は残されていないの。」

 ニャントロさんが降参しようとしますが、私はあっさり拒否します。


 「くそ、こうなったら……死なばもろともだ!!」

 真メカゴメラは吸引ビームを魔神に向けて、そのまま魔神を体内に取り込んでしまいます。


 「うおおお、何をする!!離せええ!!」

 「元はと言えば、私がこんな目に合うのは魔神(おまえ)が変な悪だくみをするからだ!!地獄に一緒に付き合ってもらおう!!」

 おお、ニャントロさんが今回の事件全体の幕引きの手助けをしてくれるようです。

 せっかくなので、そのまま乗ることにします。


 「邪悪な魔神よ!天に代わって成敗致す!猫鳴拳(にゃいめいけん)!!」

 右手に雷をまとって、真メカゴメラに右ストレートを叩き込みます。


 真メカゴメラは吹っ飛んでいき、そのまま爆発四散します。


 蛇足ですが、合体前の三体目のロボットに乗ったのは橋本君でした。


~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~



 その後の話です。

 魔神を召喚したバーカトーノ公国は各国から非難を浴びて首脳部が丸ごと失脚、遠縁の新公王政府によって、牢屋行きになりました。


 ミート王国及び、ハッチ商会と『ミツエモン商会』は提携し、ミート王国内にいくつかスーパー銭湯付きホテルを立ち上げることになりました。


 なお、『第一回異世界合同水戸黄門選手権』はミート王国が優勝しました。

 他の二チームは水戸黄門から離れすぎ…『似せる気すらない』のは大会の趣旨に相応しくない…という審査員長のコメントがありました。

 物まねやパロディはオリジナルを尊重する必要があるということですね。


(完)


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