番外編1.5 こちらにおわすお方をどなたと心得る その4
(SIDE:ミツリカ)
「ということで『ミート王国チーム』の皆様はなかなかお見事な水戸黄門ぷりでした!
御観客の皆様は拍手をお願いします♪」
……いつのまにか、我々やバーカトーノ公国以外の人達がかなり集まっており、観客席が用意されているんですけど…。
審査員席や解説席になんにんか明らかに日本人がいます。
解説&審査員席に例のホテルにいたゆる系のお姉さんがいて、審査員席に元魔王の国・グリフォン国の女王がいるのも非常に気になるところですが、それ以上にどうして審査員席にテレビにもよく出ている熱血元プロテニス選手(いるだけで気温が三度上昇)がいるんでしょうか?
ガルーダ王国関係者と思しき人たちが審査員の中心でしたが、私たちに対する評判はなかなか上々でした。
私、ミツリカに対しては…。
「じいさまより、若くてきれいな女性の方が絶対にいい」とか、
「原作の水戸黄門は『ほぼ地位だけ?』だけど、ミツリカ様は剣も魔法も知識もチートなのがとてもいい」
とか、ずい分と皆様褒めてくれました。
スケさんに対しては…。
「剣の達人で『原作』と違い、奔放なイメージだが、そこがいい」とか、
「TVでこんなスケさんが出てきたら、一発でファンになれる。ぜひサインください。」
既にファン?までできてきているんだけど…。
そして、カクさん。
「スケさんとのコントラストが絶妙じゃ!!違うタイプの美女をコンビにするとはいい意味で王道じゃ!!」
うん、おじさん、少し落ち着こうね。
「一件冷静そうで、実は内面に秘めた熱さがありますね!!わかる!僕にはわかります!!」
うん、熱血元プロテニスプレイヤーさん、お気持ちはわからないでもないですが、少し落ち着きましょうか…。
ヤヒチに対して…。
「弥七なのにカゲロウお銀を兼ねているとは…やりますな!」
超絶イケメンが歯をキラッと光らせながら感心しています。
「まさか、巨乳の弥七にお目にかかれる日が来ようとは?!!生きててよかった!!」
…おじさん、そこまで感動されるほどのことなのでしょうか…。
最後にハチベエに対してですが…。
「一見うっかりしているようですが、実はかなりの切れ者ですね。
どうですか?合同で事業を立ち上げてみませんか?」
ちょっと、イケメンのお兄さん!!うちのメンバーを勝手に口説かないでください!!
「うおおお!!八兵衛が可愛すぎる!!しかもツンデレ属性とか最高じゃ!!!」
おじさん、先ほどからテンションがおかしすぎます!!
ハチベエが完全に引いてるじゃないですか!!
…そして、白銀の勇者がハリセンを持っておじさんをはたきに行こうとしているのを、『完璧な美少女』がなんとか食い止めているんだけど?!!
そんなこんなでどうやら我が『ミート王国チーム』への審査が終わったようです。
…なし崩し的に水戸黄門選手権に参加させられていたけど、終わったらどうなるんだろ…。
「続いて、ガルーダ王国チームの番や!」
関西弁のイケメンの声にこたえるようにラシャール王がステージに上がっていく。
私とは違い、一点の曇りもない笑顔でニコニコしながら歩いていく。
「ガルーダ王国国王ラシャールです。剣の腕も魔法の腕もまだまだですが、今日は水戸黄門役せいいっぱいがんばります!」
さわやかすぎる笑顔でこの人何言ってんの?!
「では、主題歌『ああ人生に涙あり』を唄います!」
えええええ?!!この人何やってんですか?!!
しばし、渋く、こぶしの効いた歌が続いた後、会場は割れんばかりの拍手に包まれました。
ラシャール王のやり遂げた感のあるさわやかな笑顔を見て、私は気付きました。
善良そうに見えて、裏でいろいろ画策する人物…では全然なく、善良でしかも間違いなく頭の中がお花畑な人であることに…。
「やったあ、ラーくん、スゴイスゴイ!!」
一〇歳になるかどうかに見える可愛らしい女の子が背中の羽根をパタパタはためかせながら、ラシャール王に向かって飛んできた。
「やあ、女神ちゃん、ありがとう!一緒に練習に付き合ってくれたおかげだよ♪」
ラシャール王は宙に浮いている女の子とニコニコしながら話をしている。
一瞬妖精かと思ったけれど、背中の羽根は鳥のような真っ白い羽だし、なんだか神聖な空気を纏っているような気もする…。
といいますか、『女神ちゃん』て言ってるよね…。
たしか、特大魔王を倒した後、フェニックス城には女神様が降臨されたとかいう未確認情報があったような…。
「あの、すみません!」
私たちの中でも一番物怖じしないスケさんがラシャール王に問いかける。
「その女の子のこと『女神ちゃん』て呼ばれてますが、女神さまなのですか?そして、お名前はないのでしょうか?」
「女神ちゃんは女神ちゃんだよ♪」
女の子はニコニコして返事をしている。
うん、なんのことかさっぱりわかりませんが。
「もう少し大きくなったら本格的な女神になる予定なんだけど、現時点では正式な女神ではないようだから女神(仮)くらいが正確かもしれないわね。」
白銀の勇者の説明をみんなが首をかしげながら聞いている。
「本当は名前を付ける必要があるのだけれど、神様に名前を付けられるのは神様だけのようだから、現時点では幼名『女神ちゃん』ということになっているの。
女神ちゃんが成人(成神?)したら、本人が付け直すということで。」
白銀の勇者が言うのならそうなのだろうね…。
でも、いいのか?女神様とラシャール王のやり取りを見ていると、小さな女の子と親戚のおじさんのやり取りにしか見えないぞ?!不敬罪にならないのか?!!…本人(本神?)が全く気にしていないからいいのか…。
そして、ラシャール王は女神ちゃんと仲良く一緒に舞台から降りていった。
「ガルーダ王国チーム、佐々木助三郎です。特技は銃の曲射です。」
優しい雰囲気の完璧な美少女が一瞬の後には冷たい雰囲気を纏った射撃者に早変わりしました。
そして、突如現れた大量のゾンビの群れをいつの間にか手にした歩兵銃で次々と吹き飛ばしていきます。
周りを囲んでいたゾンビをあっという間にただの肉塊に替えると、ニヒルに笑って立ち去っていった。
「すばらしい!!冷静なスケさんらしい立ち回りだ!!」
…イケメンのお兄さんが興奮して立ち上がって叫んでいる。
「さすがはノゾミン♪見事な腕前だ!!」
グリフォン国女王…もしかしてあなたはあの美少女とすごく仲がいいですよね?!
水戸黄門かどうか、どうでもいいですよね?!
「ガルーダ王国チーム、渥美格ノ進です。」
白銀の勇者が現れると、会場内は割れんばかりの歓声に包まれた。
「特技は大怪獣ゴメラ倒しです!」
今、大怪獣て言ったよね?!
突然、空間が裂けたかと思うと、裂け間から銀色に輝く巨大な怪物が姿を現した。
KISHAAAA!と叫んだそいつは?!!
「はーっはっはっはっはっは!!見たか、真メカゴメラの雄姿を!!」
いつの間にか現れた小太り、メガネの白衣のおっさんが高笑いをしている。
「我々のロボット技術は世界一イイイイイ!大怪獣ゴメラのパワーを一〇倍にして、この真メカゴメラは作られておるのだあああ!!」
先ほど現れた魔神もかくやという凄まじいエネルギーをほとばしらせながらメカゴメラが吠え続けている様を眺めながら、おっさんがどこぞの漫画の軍人のように興奮して叫んでいる。
「シードラゴン・ジェットアッパー!!」
えええええええ!!!アッパーカット一発で巨大なメカゴメラを吹き飛ばしちゃったよ!!
「ちょっと、瀬利亜嬢!!なんで、解説の途中でやっちゃうの!!」
「ごめん、ドクター。相手の敵意に体が自動的に反応してしまうの。」
テヘぺろみたいな感じで白銀の勇者が謝っている。
ちなみに吹っ飛ばされたメカゴメラは壁にめり込んで半壊してしまっている。
やっていることが勇者というより、スーパーマンとか、アメコミスーパーヒーローの世界だよね。
この人に水戸黄門の格さん役をやらせること自体が無理があるんですけど…。
ちらと観客席のバーカトーノ公王や魔神の方を見ると…顔色が青から白くなって完全に固まっているのが見えた。
目の前の戦闘ならぬ『ワンパン』で、白銀の勇者がいかに規格外かをはっきりと体感したのだろう。
我々も白銀の勇者のすさまじさを体感したけどね…。敵でなくて本当に良かった。
「「「「「「ガルーダ王国チーム、風車の弥七参上!!」」」」」」
えええ?!なんで声がはもっているの?!!とか思っていたら、黒ずくめが六人ほど、宙返りした後、会場に舞い降りた。
「テコンドー弥七!!」
両手にトンファーを構えた忍者がファイティングポーズを取った。
「サムライ弥七!!」
長刀を鞘から抜いた忍者が刀を正眼に構えた。
「ダーク弥七!!」
全身に黒いオーラを纏った忍者が叫ぶ。
「マジカル弥七!!」
トランプのカードを自在に操る忍者が叫ぶ。
「クノイチ弥七!!」
ピンクの忍者装束をまとった忍者が叫ぶ。
「そして、横綱弥七!!!」
魔神三人衆を張り手で吹き飛ばした忍者が再び四股を踏む。
もう、弥七たちだけで魔神にも勝てそうだよね?!!それからどうして誰もかれもがイロモノばかりなわけ?!!
(続く)




