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番外編1.5 こちらにおわすお方をどなたと心得る その2

 「どうして私たちが国外から来たと思われたのでしょうか?」

 私より先に我に返ったハッチがゆる系の美女に答えを返す。


 「ほらあ、あなたのお連れさんが私の着ている『外国語の書いてある水着』を見て、とても驚いた顔をされているからね♪」

 「なるほどー。…ということは、その水着と温泉はとても深い関係にあるわけですね。」

 ハッチが納得してうなずいている。

 いやいや!!私はかえって疑問が大きくなってしまったよ?!


 「ほらほら、背中は温泉つながりだよ♪」

 その美女が背中を見せると感じで羽合温泉(はわいおんせん)という達筆で書かれた文字が書いてあったよ?!!


 「うわー♪じゃあ、お姉さんは温泉にはお詳しいんですね!」

 「うん、それなりにはいろいろ知っているよ♪」

 私が衝撃で固まってしまっているうちに、我が一行の中でもっとも社交性の高いハッチと謎の美女は温泉やこの施設の談義をしばし繰り広げていた。


 そして、私が我に返った時は、「じゃあ、お互いに温泉を楽しみましょう♪」と言いながら美女は去って行ってしまった。


 「ハッチ!もう少しあの女性から話を聞きだすのです!!」

 「え?どうされたんですか?!」

 私の剣幕にハッチがたじろいでいる。

 …非常に頭の回転が速いとは言え、異世界や転生の知識のないハッチにはわからないのは仕方ないが、『明らかに羽合温泉(はわいおんせん)のことを分かっている』あの美女は転生者か召喚者で間違いない。


 私たちは慌てて癒し系美女の後を追ったが…それほど速く歩いていなかったあの目立ちすぎる女性の姿をなぜか見つけることができなかった。



 翌朝、私たちは再び温泉コーナーにやってきた。

 いやあ、朝風呂っていいね♪

 とか思いながら女湯に入った私たちは全員言葉を失った。

 どう見てもお風呂全体が昨夜と比べて豪華になっているよ?!!


 砂風呂やハーブ湯、『泳ぐための温水プール』なんてのもいつの間にか増設されているし…。いや、冷静に考えると、明らかに『面積が増えている』のだけれど…。


 「あれ、ハッチさん。また来てくれたのね。じゃじゃーん!言ってもらったことを参考に改良してみたよ♪」

 昨夜のゆる系のお姉さんがニコニコしながら声をかけてくれた。

 あなた一体何者ですか?!!!


 お姉さんは鼻歌を歌いながら去っていった。



 朝食のバイキングの後、緊急会議である。

 「あの女性は一体何者なんでしょうか?特に胸!!」

 「スケさん!胸は関係ないでしょ?!!…ヤヒチはあの人のことどう感じた?」

 私はスケさんを嗜め、ヤヒチに問いかける。


 「それが…皆目見当がつかないのです。」

 ヤヒチが困惑した目で私を見る。


 「なんとなく、ただものではなさそうなのですが…悪意や敵意を一切感じないのですよ。感じる雰囲気は王都の大神官に近い感じなのですが…。」

 「そうですねえ。一緒に組んだ冒険者たちでもあそこまで『素朴な雰囲気』の冒険者はちょっといなかったですね。…ところで、『危険察知のネックレス』には反応はあったのですか?」

 続くスケさんの発言に私ははっとする。

 王国の国宝である魔法具『危険察知のネックレス』は私が旅に出る時に必須であると宰相から渡されたものだ。私、あるいは周りの人に悪意を持った存在に近づくと反応し、その相手を私だけにわかるように映像を私の脳内に投影してくれるという優れものなのだ。


 「……危険察知のネックレスは全く反応がなかったわ。」

 「ミツリカ様。ということは、あの女性はガルーダ王国の関係者で…。」

 「ええ、おそらくは召喚者である白銀の勇者、あるいは勇者と一緒に召喚された人物だと思われるわね。」

 カクさんの問いかけに私は答える。


 「なるほど、白銀の勇者はこの『ぬいぐるみ』のように銀髪に銀色の衣装を着ているから、さっきのお姉さんは『勇者のツレ』というわけだね。」

 …いつのまにか、カクさんがプリ◎ュアかセー◎ームーンのキャラのようなぬいぐるみを持っているのだけれど…。


 「ええと、カクさん?そのぬいぐるみはどうしたのかな?」

 「地下のぬいぐるみ店とホテルのフロントにも売ってたよ。白銀の勇者のぬいぐるみだって。」

 …言われてみれば、以前白銀の勇者のぬいぐるみが売っているという情報はもらっていたよ。

 最初に情報をもらった時には『なんて商業主義に乗っかった勇者だ!』と変な偏見を持ってしまったけど、ここのホテルの『一晩での進化』具合と、勇者をサポートしていると思しき『癒し系の美女』や今回のアークダイカーン子爵捕縛事件などを踏まえると、思っていたよりもずっと組織的、かつ良心的な『勇者とそのサポート集団』かもしれないと評価を改める必要がありそうだ。


 そうなると、『ミツエモン一行』をつつくよりは、現在進行形でいろいろと悪事を企んでいると思しきバーカトーノ公国を徹底的に調べる方が優先度が高そうだ。

 私たちはハッチにお願いして、『ドナン・ホットスプリングホテル』でオワーリ商会に『ミツエモン商店』とのつながりを作ってもらうことにした。

 同時に、私たち自身は公国の王都へ向かいつつ、その道中でいろいろ情報収集をすることにしたのだった。



 数日後、夕刻前に私たちは王都への街道沿いの村に着いたのだったが、通りを歩いても道行く人達の顔が妙に沈んでいるのが気になった。

 村の中の一際大きな家の前にたくさんの人が集まっており、若くてきれいな女性を中心にして、どの顔も皆悲嘆にくれているのが見えた。


 「どうかなさったのですか?」

 私たちがその集団に近づいていくと…




 まったく許し難いことです!

 ここの領主・ワールリョウシュ男爵は重税を掛けた上に払いきれないとなると、美人で評判の村長の娘さんを代わりに召し上げるというのです。


 「許せん!とっととその領主をぼこぼこにして、娘さんを解放しましょう!」

 スケさんが右拳を振り上げて力説する。


 「スケさん、慌てないで。そもそもこの事件はワールリョウシュ男爵が単独で行ったものなのでしょうか?それとも…。」

 カクさんの言葉にみんながはっと気づく。

 ひそかに公国全体で大きな陰謀が進みつつあるような状況の現在、背後にもっと大きな動きがある と疑うのはとても自然なことだ。

 そこで、私たちは……。




 「へっへっへっへ!さて、娘っこを差し出す準備はできたかな?」

 領主の手下と思しきガラの悪い兵士たちが一〇人くらいで村長宅前にやってきた。

 彼らの姿をみた村人たちは怖がって一様に引いていく。


 「もちろん、お断りします。」

 私がニコニコ笑って突っぱねると、リーダーらしき兵士が私を睨みつける。


 「なんだ、貴様は?!…ほお?よく見ると、全員なかなかきれいなツラしてるじゃねえか。なんなら代わりにお前らが来てもらってもいいんだぜ?」

 リーダーは今度は嫌らしい目つきで私たちを見ながらニヤニヤ笑いを始める。


 「そうだね。できるもんならやってもらってもいいよ♪」

 私が兵士を挑発するように笑うと、リーダーは額に青筋を立ててどなった。

 「お前ら、こいつら全員捕えてしまえ!」

 兵士たちが向かってくるのを見て、私は仲間に伝える。

 「スケさん、カクさん!やっておしまいなさい!!」

 「「はっ!」」


 私とハチベエが見守る中、スケさんとカクさんはあっという間に兵士たちを制圧・昏倒させてしまいます。

 「あわわわわ!!!」

 腰を抜かしたリーダーはずるずると後ずさって逃げようとしますが、私たちが周りを取り囲むと、ガタガタと震えながらやけくそのように叫びます。

 「く、来るな!!俺たちに何かあったら領主さまが容赦しねえぞ!」

 「へえ、どんなふうに容赦しないんだね?そ・れ・と!領主さまからはどんな命令が下っているのか詳しく教えてくれないか?」

 カクさんが剣を抜き放って近づいていくと、男は首をがくがくと縦に振り続けた。




 「なるほど、ワールリョウシュ男爵だけでなく、いろいろな領主がここしばらく重税のかたに若くてきれいでスタイルのいい女性を無理やり連れて行くよう公王から命令を受けているわけなのだな。

しかし、一体何のために?」

 チンピラ兵士たちの案内で領主邸に行った私たちは、とっとと領主邸を制圧した。

 本来ならもう少し時間をかけていろいろ調べるところなのだが、『時間がないのでは?』という妙な胸騒ぎがしたので、思い切って強硬手段に出たのは正解だったようだ。

 全て吐いて気絶した男爵を前に私がつぶやくと、いろいろ考えていたスケさんが口を開いた。

 「…もしや、なにがしかの凶悪な存在を召喚するための生贄ではないでしょうか?」

 うわああ、その展開ラノベでもよくあったよね。この流れで行けば、『邪神』とかを召喚するのだろうか。


 「となると、事態は一刻を争うわけだね。よし、本国にも増援を依頼しつつ、一気に王都へ行くぞ!」

 私の指令にみんながうなづいた。



~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~


 『正義の直観』で、夕刻前に私たちは王都近くの街道沿いの村に寄ったのだが、通りを歩いても道行く人達の顔が妙に沈んでいるのが気になった。

 村の中の一際大きな家の前にたくさんの人が集まっており、若くてきれいな女性を中心にして、どの人達の顔も皆悲嘆にくれているのが見えた。


 「一体何があったのですか?」

 完璧な美少女の望海ちゃんが完璧な笑顔で、村人の一人に話しかける。

 すると…。


 なんということでしょう!!

 ここの領主・ワルワール子爵は重税を掛けた上に払いきれないとなると、美人でやさしくて気立てがいいと評判の村長の娘さんを代わりに召し上げるというのです。

 赦せません!頑張る乙女の応援団長である私の目の前でそのような悪行を放置しておくわけにはいきません!!




 「へっへっへっへ!さて、娘っこを差し出す準備はできたかな?」

 領主の手下と思しきガラの悪い兵士たちが一〇人くらいで村長宅前にやってきた。

 「シードラゴン流星拳!!」

 えらくむかつくので、リーダーっぽい兵士以外を瞬殺します。


 「あなたたちの悪巧みの数々を教えていただけませんかね?」

 完璧な兵士パーフェクトソルジャーモードに入った望海ちゃんがコンバットナイフをリーダーの顔に押し付けながら淡々と語ります。

 現時点でそろそろモンスターバスター一二星への昇格の話も出ている望海ちゃんが「ちょっとだけ」殺気を出すと、リーダーは顔を真っ青にしてがくがくと首を縦に振ります。


 詳しいことはワルワール子爵でないとわからない…ですか、そうですか。

 それでは、ちゃちゃっと子爵のところにいって『事情聴取(物理)』をさせていただくことにしましょう。


(続く)


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