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番外編1 この紋所が目に入らぬか その1

 これからは『奥さまはモンスターバスター 時々 異世界召喚勇者』の番外編になります。 

 本編自体が『ゴメラ VS モンスターバスター』の番外編ですが、そのさらに番外編(笑)になります。

 時系列もネタを思いついたままバラバラ……今までもバラバラでしたが、今まで以上に時系列がバラバラになる…かもしれません。



登場人物


ラシャール王:  アリス姫の兄で、ガルーダ王国国王。ものすごくシスコンであることを除けば、人間としても王様としても良識ある人。某番組の影響で『世直し旅』を考える。


石川瀬利亜:  地上最強のスーパーヒロインでモンスターバスター。今回は『格さん』の役でラシャール王の世直し旅に同行予定。


北川望海:  優秀なモンスターバスターで、武器戦闘のエキスパート。今回は『助さん』役で同行予定。


橋本太郎:  元瀬利亜の同級生。ツッコミ力の高いフツメン。今回は『うっかり八兵衛』役で同行予定。


石川トラミ:  未来の世界の猫娘型人造人間。暴走力はメンバー中随一。今回は『風車の弥七』役で同行予定。


 「先日、アリスに『水戸◎門』という映像活劇を見せてもらったんですよ。」

 アリス姫の故郷であるガルーダ王国の王様にして、アリス姫の兄のラシャール王が開口一番こう言ったのです。


 この段階で嫌な予感しかしないのですが、予想通りラシャール王は次にこう言ったのです。

 「我が国の保護国のとある領域で最近治安が大きく悪化したようなのです。私直々に視察に行こうかと思うのですよ。」


 そのセリフ自体も予想の範囲内でしたが、その次のセリフも悪い意味で予想の範囲内でした。


 「私が行くとなると、危険だからと宰相たちが猛反対するのです。ですので、瀬利亜さんかご友人たちの中で、『執事さん』と同じくらいかそれに準じるくらいの強さのメンバーに何人か同行していただきたいのです。」

  モンスターバスター一二星並の猛者である『執事さん(元特大魔王)』と同じくらいの猛者が同行しなくてはならないのですね…。

 

 なかなか難しい依頼が来てしまいましたが…ふむ。『風流院大学の授業の一環』として依頼を受ければ何とかなるかもしれません。




 「というわけで、この一行で『ファンタジー世界の視察とトラブル解決』の授業を行うことになりました。」

 「『というわけで』の意味も分かんないし!それから、どういう理由でこのメンバーで行くのかもわかんないんだけど?!」

 私の説明に橋本君が叫びます。


 「ラシャール王は視察の主体だから、当然の参加だわね。

 それから、『助さん』役には、望海ちゃんがふさわしいと思ったの。

 本来は剣の達人ということで、ちーちゃんにお願いしようかとも思ったのだけれども、『世直し旅』には情報収取と作戦立案も大切だから、『綜合的な戦術立案もできる』望海ちゃんに白羽の矢を立てたのよね。」


 「いやあ、高く評価していただいて光栄です♪」

 望海ちゃんが照れながら笑っている。


 「そして、『格さん』役兼、ラシャール王の護衛として私もメンバーに入れたのよ。

 今回の視察を宰相たちを納得させる決定打にもなったしね。

 それから、『風車の弥七』役にトラミちゃんを抜擢したわ。忍者の人達のスケジュールの調整が効かなかったので、さまざまな『未来の道具』が忍術っぽいということで選ばせていただいたわ。」


 「今までの話は『水◎黄門』をモデルにする説明にも、僕がメンバー入りする説明にも全然なっていないんだけど?!」

 再び橋本君が叫びます。


 「話を受けた前提として『風流院大学の授業の一環』になるということがあるので、私と望海ちゃんは大学の講師という立場で、橋本君とトラミちゃんは学生という立場で受けることになります。

 また、『◎戸黄門』をモデルにするのは、『王道を使うのが結局は強い』という法則に基づきます。

 斬新なアイディアを使う方がいいとばかりに、『テンプレを避ける』という人たちがいますが、みんなに受け入れやすい、共感しやすいが故のテンプレや王道なのです。

 シナリオやキャラクターがしっかりしていれば、王道やテンプレを上手に活用した方がみんなにも受け入れやすいし、完成度も高くなるのですよ。」


 「それって、小説やアニメなんかの話でしょ?!実際の視察に対しても当てはまる話なの?!」

 「宰相たちラシャール王の臣下の人達を納得させるために題材として使ったのだから、それでいいのよ♪」

 「………。」

 こうして、橋本君を無理やり納得させ、我々は『世直しの旅』に出発したのです。




 我々はトラミちゃん運転する猫娘バスで街の近くまで走っていくと、そこから商人風の格好になって街道を歩いていきます。

 「ここは我がガルーダ王国の保護国であるバーカトーノ公国の中のアークダイカーン子爵の治める街でオウミの街なんだ。」

 ラシャール王の説明に我々はうなずきます。


 「オウミの街は交通の要所であり、代々栄えてきた街なのだが、ガルーダ王国に出入りする商人の間からアークダイカーン子爵から不当な要求を多々突きつけられたという話がいくつも訴えられたんだ。

 ただ、バーカトーノ公国はあくまで我が国の保護国ではあっても一応独立国だし、その上、我が国と隣接するミート王国の保護国でもあるのだよ。

 したがって、直接調べたり、情報を要求すると外交上の問題になりかねないので、こうしてお忍びで調べようということなんだ。」


 ラシャール王の説明を聞きながら私たちは街に向かっていき、門にたどり着きます。


 白い街壁に囲まれたオウミの街の門で門番たちに身分証の提示を求められます。

 「はい、私どもはガルーダ王国首都のフェニクスタウンで服を商わせていただいております。名は『ミツエモン』と申します。

 今回は支店を出す場所のリサーチで旅をしているのです。」


 ラシャール王がどこかで聞いたような設定を話すと私たちは街の中に入っていきました。


 オウミの街はフェニックスタウンよりは小さいとはいえ、商業の街として栄えているだけあって、なかなかの賑わいを見せてくれていました。

 しばし街を歩いた後、私たちは中央通りに近い宿を取りました。

 まずはこの街での拠点確保です。


 「いらっしゃいませ、何名様になられますか?」

 フロントに座っていた10代半ばくらいのゆるい巻き毛の金髪のお嬢さんが私たちに声を掛けます。

 そして、入ってきたラシャール王を目を止めると、顔を赤くして固まってしまいました。


 「瀬利亜さん、我々はアリスさんのお兄さんということであまり気にしなくなってましたが、ラシャール王は一般的にはすごい美形なんですよね…。宿の女の子が固まってしまうのは仕方ないですが、このままでは話が進みそうにないですね。」

 望海ちゃんが私に囁くと、前に出てフロントの女の子と話を進めていきます。


 一応男女別に一部屋ずつ取りました。そして、部屋の中に石川邸に通じる『異世界ドア』を設置します。三日以上家を空けると、『光ちゃんが危機的な状況に陥る』ので、外泊するときはアルさんが提供してくれた『石川家に通じる異次元ゲート』が必須になっているのです。


 ゲートを設置して、調査のために街に繰り出そうとした時、宿の入り口の方が騒がしくなりました。

 そして、女性の悲鳴と複数の男性の怒鳴り声が聞こえてきます。

 私たちが急いでフロントに行ってみると、震える受付の女の子をかばうように中年の男性が立っており、ガラの悪い男達六人がニヤニヤ笑いながら二人を見ています。


 「そろそろ、この宿を売るという返事をもらいたいんだがね。」

 六人の中でもひときわ体が大きく、目つきの鋭いひげもじゃの男が男性に向かって話しかけます。


 「その話は断ったはずだ。由緒あるこの宿を売る気はない!」

 この宿の主人と思しき男性が男たちを睨みながら叫びます。


 「へえ、それじゃあ…例えば、宿に泊まっているお客がいなくなったらどうなるのかな?」

 リーダーらしき男は近づいてきた私たちを一瞥すると、再び主人に向き直るといやらしい笑みを浮かべます。

 これは、言うことを聞かないと宿のお客さんに危害を加える…という脅しのようですね。


 「ご主人、すみません。この『ゴミ』達は一体何者なんですか?」

 冷え切った声で望海ちゃんが主人に話しかけると、チンピラたちの顔色が変わります。

 優男二人と若い女性三人の宿泊客は彼らからしてみればただの一般客に見えたのでしょうが、そこからのまさかの暴言ですから。


 チンピラたちと宿の人達は気付いていないようですが、望海ちゃんが完璧な兵士パーフェクトソルジャーモードに変わったのに気付いた橋本君は青い顔をしています。


 望海ちゃんの言葉に切れたチンピラたちが武器に手を掛けるのを見て、私は動くことにします。

 望海ちゃんに任せても『精神エネルギーを打ち出す銃』で、チンピラたちは死なせずに制圧するのは間違いありませんが、銃を使うと目立ちすぎるので、私が制圧した方がいいでしょう。

 そして、私が動くとほぼ同時にラシャール王も動き出します…ええ?!ラシャール王?!!


 数秒後、ラシャール王がチンピラリーダーともう一人を、私が残り四人のチンピラをぶん殴ってあっさりと気絶させます。


 宿のおじさんとラシャール王の強さを知らなかった橋本君がその光景を見て呆然とし、受付の娘さんは…。

 「ミツエモン様…素敵♡」

 ラシャール王を見て、目を輝かせています。


 「それで、一体どういうことなのでしょうか?」

 チンピラたちを簀巻きにした後、私はフェニクスタウンの衣服店『ミツエモン』一行のアシスタントという立場で私が宿の親父さんに質問します。


 ちなみに受付の娘さんと親父さんは親子で、宿の食堂を仕切っているお母さんと三人で宿をやっているそうです。

 お父さんがドナンさん、お母さんがサリバンさん、娘さんはカレンさんというのだそうです。

 この宿は親父さんのおじいさんが50年前に始めた街でもかなり人気のある宿であり、最近まで問題なく繁盛していたそうです。

 ところが、領主が代替わりした途端、現在のアークダイカーン子爵に優遇された一部の商人たちが横暴に振る舞い始めたのだそうです。

 御用商人の『ジョウシュウ』商店が通商を大きく任されたり、メインの通りの商店をいろいろ買いあさって自分の店にしたりしているのだとか。

 今回もジョウシュウ商店がこの宿を相場と比べて『格安』で買いたたこうとし、その手先のチンピラが押し掛けてくるようになったのだとか。

 ううむ…これはゆゆしき問題ですが、同時にジョウシュウ商店を調べれば悪事の証拠が出てきそうだとわかりました。見つけた宿ですぐに手がかりが見つかるとは僥倖です。



 さて、宿の部屋に戻って作戦会議です。


 「早速ジョウシュウ商店を調べてみたいわね。」

 「了解だにゃあ♪私に任せるにゃあ♪」

 いやいや?!!トラミちゃんに任せたら潜入捜査ではなく、いきなり力技、しかも未来の道具を使った『大破壊』をやらかせてくれそうだよね?!!


 「ふっふっふっふ!潜入任務なら(それがし)に任せて頂こうか。」

 私たちの前に黒い人影が音もなく舞い降りたのでした。


 (続く)

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