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12 あるモンスターバスターの日記(迷子の子猫ちゃん♪)その1

(※時系列的には1話の約1年半前、6話の半年後くらいの話です。)


 ◎月X日 迷子の迷子の子猫ちゃん♪ あなたのおうちはどこですか?

 おうちを聞いても『わからにゃい』♪ 名前を聞いても『わからにゃい』♪ 

 にゃんにゃんにゃにゃん にゃんにゃんにゃにゃん 泣いてばかりいる子猫ちゃん♪

 モンバスのお姉さん♪ 困ってしまって『どげんしたらよかとですか??!!』



 話は少しさかのぼります。



 高校へ進学する春休みになりましたが、休み中でもモンスターバスターのお仕事は待ったなしでいろいろありました。

 その日は朝一で事件を解決(保育園バスを乗っ取った犯人の怪人たちを粉砕)し、近所の公園で桜を見ながら一休みしていました。


 もうすぐお昼だな、お弁当買って花見でもしようかな…とか思ってのんびりしていると、妙なものが走っていくのが見えました。


 人間より一回り小さな直立したウサギが上半身だけタキシードを着て、スマホを持ちながら走っているのです。

 「ああ、忙しい!忙しい!」

 そんなことをぶつぶつ言いながら公園内を走っているにもかかわらず、誰もそれを気にしていないのです。


 私の『正義の直観に基づく事件センサー』が反応します。

 ◎◎◎の鬼太○の髪の毛が一本立つというあれですよ!


 この日本、いや世界の裏側を知れば私の目の前にいるウサギそのものは『よくある話』の一つに過ぎないのですが、こういう不可思議な存在が結果的に事件の元になることも残念ながらよくある話なのです。

 そして、ウサギのオーラを冷静に見て、ウサギそのものは邪悪な存在でないことを確認します。もし、邪悪な相手だったらとっとと捕獲して『何の悪だくみをしているか優しく問いかける(物理)』と言う手もないではないのですが…。


 とっ捕まえるのは問題ありなので、私はウサギの後をそっと付いていくことにします。


 ウサギは気配を消した私に気付いた風もなくしばらく走った後、ゆるい斜面に差し掛かるとポンっと跳ね上がり、そのまま姿を消しました。

 どうやら、目には見えない『異世界?へのゲート』があるようです。

 本来なら明確に誰かがさらわれているわけでもないので、行っても帰れないリスクがあるようなこういう場合は『放置一択』なのですが、私の直観は『行くべき』だと囁きます。


 おそらく私が行かないとまずいことが起こるのでしょうし、帰る方法が私なら見つけられるのでしょう。

 一瞬だけ躊躇しますが、今までもほぼ一〇〇%適切だった『正義の直観』を信頼してダイビングします。


 ふわっとした浮遊感に包まれて、私は真っ暗な空間をしばし漂うことになりました。



 よっしゃ!意識を保ったまま無事着地です!!

 …無事着地したのはいいのですが、ウサギさんの姿が見当たりません。

 周りはやや開けた林のようで、日本の風景とは若干違っている気がします。


 うーむ、肝心のウサギさんがいないのではどうしたものでしょうか?

 …と思っていると、女の子の泣き声が聞こえてきます。


 気になって声の方に歩いていくと、猫耳の一二歳くらいに見える女の子がしゃがみこんでわんわん泣いています。

 そして、日記の冒頭の話にたどり着くわけです。

 何を聞いても『わからにゃい』のです。

 とは言え、かなり混乱しているようなので、まずは落ち着いてもらうことにします。




 女の子が正気を取り戻されました。

 ウサギを追いかけてきたらここに来てしまった…私と同じですがな!!

 ちなみにこの世界に『落っこちたショック』で飛んでいた記憶は戻ってきたようですが、名前は『明かせにゃい』のだそうです。なんでも『家族(家族となる者)』以外には真なる名を明かしてはいけにゃいのだそうで、猫耳だけを外に出したかわいい真っ赤な頭巾を被っているので『猫頭巾ちゃん』と呼んでほしいとのことです。


 なんでもお母さんに頼まれて、病気のおばあちゃんが早く元気になるようにお母さん手作りのお菓子を届けに行く途中、おかしなウサギが走るのを見て、ついつい追いかけてしまったのだそうです。

 ……えーと、『本家赤ずきん』と同じような設定…もとい、話の流れですね…。


 となると、私の役割はこの『猫頭巾ちゃん救出』なのでしょうか?

 モンバスお姉さんのモンバス魂に火が付きます。


 では、手掛かりになるウサギさんを探すか、それとも『正義の直観』に従って他の手掛かりを探した方がいいのでしょうか…そんなことを考えていると、なんと例のウサギさんが目の前に通りかかってくれたではないですか!!


 「はーい!そこのウサギのお兄さん!ちょっと聞きたいことがあるんだけどよろしいかしら?」

 「よろしくない!俺は忙しいんだ!!」

 「気持ちはわかるけど、一人の女の子の人生がかかっているの!取って食べたりしないから、少しだけ話をおねがい!プリーズ!」

 「何をいってるんだ!!お前の連れは食べる気満々だぞ!!」

 言われて振り向くと猫頭巾ちゃんがよだれをだらだら流しながらウサギさんを見ているではないですか!!!

 いやいや!!そんなことをしたら逃げられちゃうよ!!…あっ!逃げられた…。

 しかも、この調子なら捕まえてもまともに話も出来そうにありません…。


 「猫頭巾ちゃん、頼むよ!そんな風にウサギさんを見たらまともに話をしてくれないよ!」

 私が言うと猫頭巾ちゃんははっと自分のしたことに気づき、深くうなだれます。

 「ごめんにゃさい…。お腹が空いていたのでつい…。」


 仕方ないので、まずは腹ごしらえをすることにします。

 モンバス標準装備の『◎次元ポケッ◎』の中は空だったので、現地調達に切り替えます。

 うーむ、今度補充しないといけないですね。


 とりあえず、森の中を歩いたら出会った熊さん…が襲ってきやがったので、かかと落しで粉砕してお昼ご飯になってもらいました。

 先日受けたばかりの『サバイバル訓練』がいきなり役に立つとはびっくりです。


 とりあえず、血抜きと解体を手早く行い、バーベキューを行う傍ら、日持ちさせるために燻製作業を行います。

 ついでに木の実の採集や川で魚を槍で突いてゲットします。

 たくさんの食糧を確保して二人でほくほくしていると、日が沈みそうになったので、テントを張って野営の準備です。

 …なんだか、余分な作業をしてやたら時間がかかっているような気もしますが、『食料確保』は生存の基本です。


 こうして『サバイバル生活の一日目』は無事に終わり…なんだか話が変な方向にずれていっているのは気のせいでしょうか?


 (続く)


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