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118  怪盗との遭遇 その6

 「待て!それは我が娘リリム!!貴様、どうやってかどわかした?!

 いや、そもそもそれは本物なのか?!!!」

 悪魔王は信じられないものを見る眼で娘と邪神を見やる。


 「ふっふっふ、疑うなら『鑑定』をすればいいでしょう。いかがですか?」

 ニャントロホテップの言葉につられて小山内もついつい鑑定をしてしまう。


◎リリム ??歳 大悪魔 女 悪魔王の娘  

レベル:222

HP  B+ 

MP  A+ 


攻撃力: B+ 

(以下略)


 (本物だよ?!!)

 「くっ!やはり本物か!!」

 リリムが本物の悪魔王の娘だとわかり、小山内は心の中で驚愕の叫びを上げ、イブリースは愕然となった。


 「くっ!私をどうするつもりなのですか?!」

 いつの間にか『亀甲縛り』にされていたリリムがおびえる眼でニャントロホテップを見やる。


 「ふっふっふっふ、邪神のすることと言ったらこうなのですよ♪」

 言うなり、ニャントロホテップはさらにシルクハットから何かを引きずり出す。


 「「「「メエエエエエ!!!」」」」

 凄まじい瘴気を放ちながら出てきた真っ黒い軟体状の怪物はあっという間にイブリースよりも二回り以上も大きくなり、いくつもの口から鳴き声を上げた。


 うねうねと動き続けている漆黒の木のような化け物は頭のような部分から大量に生えた触手が蠢き、その周りのたくさんの口が閉じたり開いたりを繰り返している。

 そして十数本の蹄の付いた足がせわしなく動き続けている。


 「はっはっはっは、これぞ『名状しがたき黒山羊』さんなのですよ♪悪魔王さん、こいつの実力はあなたならお分かりですよね♪」

 イブリースは完全に固まってしまった。

 ニャントロホテップだけでもとんでもない難敵だが、『黒山羊』も自分に匹敵しかねない怪物だ。彼らを相手にして愛娘を取り戻せる自信はイブリースにはとてもなかった。


 「さて、触手だらけの怪物が美女にすることと言えば、一つですよね♪

 皆様お待ちかねの『18禁の展開』にこれから突入です!!」


 (((((なんだってーー!!!!)))))


 「待つのにゃ!!」

 あまりの展開にトラミが異を唱える。


 「いかににゃんでも抵抗のできない美少女にそんにゃことをしてはいけないのにゃ!」

 「トラミさん、あなたの優しいお気持ちはわかります。しかーし!相手は悪辣極まりない悪魔王なのですよ。天使さんを救うために『仕方なく』こういうことをするのです。

 しかも、『15禁の残虐行為』ではなく、相手に『傷一つつけない』行動です。

 背に腹は代えられなく、『やむを得ず』やっているのです。どうか、ご理解ください。」


 「そうなのにゃ、それなら仕方ないのにゃ。それでは、せめてこのビデオカメラだけでも用意させてもらうのにゃ。」

 ((((そんなもの用意するなよ!!))))


 猫耳少女をあっさり説得してしまった邪神の狡猾さと、その後の猫耳少女のトンデモ行動に全員が絶句する。



 「き、貴様!そんな汚い行動を取るなんぞ、恥を知れ!!」

 ついにこらえきれなくなってイブリースが邪神を睨みながら叫ぶ。


 「はあ、そもそも最初に人質を取ったあなたにそんなことを言われたくありません。

 それに、私は『邪神』ですよ♪邪神なんだから、どんな悪い行動を取ったって当然のことじゃありませんか♪」

 完全に開き直って邪神は肩をすくませる。


 「それでは、ショータイムの始まりと行きましょうか♪」

 邪神の言葉と同時に『黒山羊』が触手をうねうねさせながらリリムに近づいていく。

 ビデオカメラを回し始めたトラミ以外は全く動けないでいた。


 突如、バリーーンという破壊音と共に結界に穴が開いた。

 同時に中に駆けこんできた銀色の人影は周りの状況を見て、動きを止めた。


 「『SOS』通信を受け取って来たんだけど、これは一体どういう状況なのかしら?」

 シードラゴンマスクはトラミに語りかける。

 「かくかくしかじか…というわけなのにゃ♪」

 トラミの説明を聞いているうちに、シードラゴンマスクから発せられる怒りのオーラがどんどん強くなっていく。


 前回会った時より発せられるオーラがずっと強くなっていることを感じ、小山内が思わず鑑定を発動させる。


◎石川瀬利亜 18歳 人間 女 A級モンスターバスター(実質超A級)  

レベル:1111

MP  SSSSS(笑)ただし、魔法は使えません。


攻撃力: SS

防御力: SS

素早さ: SSS

知力:  S(知識以上に回転が非常に速い)

精神力: SSSSSS( 何事も『気合い』でなんとかします!(`・ω・´)キリッ! )

技能: 古武術  拳銃  交渉術 料理 他

【称号】 ゴメラキラー 無敵のシードラゴン モンスターバスター一〇星

【特記事項】 もともと非常に強いが、スーパーヒロインモードに入ると『熱く燃え盛る正義の心(気合い)』の影響で、スピード、攻撃力、防御力などがさらに大きくアップし、手が付けられなくなります。どんなゴメラでも誰よりも早く倒せます!


 (この人、1年後の瀬利亜さんだよ?!!レベルも能力もすごく高くなっているよ!!

 そもそもMPとか、精神力が悪魔王や邪神よりずっと多いってどういうこと?!!)


 「ええと、とりあえず一番悪い奴はそこの悪魔王だとはわかりました。ですが……。」

 シードラゴンマスクはここで一旦言葉を切る。


 「ニャントロさんはずい分と好き放題しておられたようですね。」

 シードラゴンマスクの目に灯った危険すぎる光に邪神と黒山羊は気圧されて後ずさる。


 「待ってください!!こうでもしないとあの『いたいけな天使さん』が悪魔王に傷つけられるかもしれなかったんです!!」

 黒山羊と共に完璧な土下座の態勢で邪神がシードラゴンマスクに説明する。


 「まあ、人質を取った段階までは何とか許容できますが、その後、いたいけな少女たちの眼前で『18禁な行動』を取ろうとされたことは言い逃れができるとは思わないでくださいね。」

 目だけが笑っていない危険な笑顔を向けられて、邪神は冷や汗をだらだら流しながら土下座のまま後ずさる。


 「待ってください!それより、諸悪の根源の悪魔王を何とかしましょう!!人質の安全確保が最優先だと思われます!!!」

 「確かにそうだわね。さて、悪魔王さん♪そちらの人質を解放していただけるかしら?」

 邪神に向ける以上の『危険な笑顔』を向けられて、イブリースはミリエルを解放した後、震え上がっている。



 「さて、続いてはニャントロさん……逃げたわね!」

 瀬利亜の視線が悪魔王に向いている隙にニャントロと黒山羊は姿をくらましていた。


 「では、悪魔王さんには二度と人界に攻めてこないように『説得(物理)』作業をさせていただきましょうか?」


 こうして、穴の開いた結界内でしばし『18禁(H的な意味でない)な説得』が行われた後、悪魔王親子は魔界に帰ったそうだ。



 小山内が気づいた時にはシードラゴンマスクはトラミを伴い高笑いと共に姿を消した。

 また、それと前後して怪盗ファントムキャットと小さな天使もいつの間にかいなくなっていた。


 呪いがなくなったと思しき悪魔の絵は…迫力のない凡庸な絵になっていた。


 「事件は一応解決したようだが、どうするね?」

 完全に気の抜けた顔をしている荒神坊が小山内に語りかける。


 「この絵を持って帰ってもこれが悪魔の絵だとは信じてもらえないでしょうね。絵は怪盗に盗まれた…そういうことにでもしましょうか?」

 小山内が肩を竦めて言った。





 怪盗ファントムキャットは悪魔の絵を盗んだのを最後に姿を現さなくなった。

 小山内はファントムキャットがらみの事件から外れ、本来の能力を生かして活躍している。


 天使ミリエルは仕事を全うしたということで天界に帰っていった。

 都は普通の女子高生に戻り、何気ない日常生活を送っている。


 今日も学校から帰宅すると…。


 「都、トラミちゃん、おやつよ♪」

 母親がおやつを用意してくれた……。


 「にゃっはっはっは、相変わらずお母様のおやつは絶品なのにゃ♪」

 (…ええと、どうしてトラミちゃんがまだいるのかしら…。)


 今日も都は平和な日常を送るのであった。



怪盗編はこれで終了です。

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