116 怪盗との遭遇 その4
机から出てきた猫耳娘はトラミと名乗り、どこぞの猫型ロボット(笑)のようなことを言っている。
「念のために『鑑定』していいですか?」
ミリエルがあえて鑑定することを宣言する。
雰囲気から嘘をついているようでもなく、全く悪意や邪気を感じないので、一応大丈夫とは思ったのだが、悪魔などが自分達を罠にかけるためにやっていたりするとまずいので『念のため』カマを掛けてみたのだ。もし、罠であれば当然それなりの反応があるはずなのだが…。
「『鑑定』したら、どうなるのにゃ?」
トラミはニコニコしながら聞いてくる。
((うん、これはシロだね。))
都とミリエルは顔を見合わせてうなずく。
「あなたの詳細な能力がわかるのですよ。」
「それはスゴイのにゃ!!ぜひやってほしいのにゃ!!」
◎ 石川 トラミ 7歳 猫娘型人造人間 女 2222年2月22日生まれ
レベル:222
HP A
MP A
攻撃力: B(魔法攻撃力又は未来の道具を使った攻撃力はS)
(以下略)
【称号】 『暴走系スーパー運転手』『暴走系スーパーヒロイン・ミラクルキャット』
【特記事項】 ※未来の世界の猫娘型人造人間。様々な未来の謎の道具(笑)を使いこな…してはいないが、『凶悪な破壊力』を発揮させている。なぜか魔法の精霊と契約し、魔法少女になることもできる。(※ただし、暴走系)
「おおっ?!!にゃんだかスゴイ気がするのにゃ!!」
((あちこちに暴走系という危険ワードがあるんですけど?!!))
素直に喜んでいるトラミをしり目に、都とトラミは再び目を合わせうなずいた。
「ええと、トラミちゃん?実は私たちは凶悪な悪魔、それも大悪魔や魔王とも言われるような存在と戦わなくてはいけないの。そんな危険なことにあなたを巻き込むわけにはいかないわ。
だから、せっかく呼ばせていただいたんだけど、帰ってもらって大丈夫なのよ。」
都は精神力を最大限使って、笑顔でトラミに話しかけた。
「にゃっはっはっは!安心するのにゃ♪さすがに私一人では限界があるのにゃが、頼りになる仲間やいざという時の『カプセル怪人』もいたりするのにゃ。
悪魔との戦いも、大船に乗ったつもりで任せてほしいのにゃ。」
「ええと、トラミちゃん?」
都は何とか説得を続けるが、トラミはドヤ顔で、自信満々に胸を張って『謎の道具』の説明を始める始末だ。
その間に、ミリエルは天界の上司に連絡を入れるが…。
『えええええ?!!!今のところ、送れる助っ人で最善なのがトラミちゃんなんですか?!
【暴走系】という言葉と、やけに強力な攻撃力に非常に不安を感じるんですが…。
ええ?!!【死なば諸共】?!!いえいえ、何をおっしゃって!ちょっと、通信を切らないでください!!!』
トントントン。突然部屋の扉がノックされる。
「都。人の声が聞こえるんだけど、友達が来てるの?」
『母さんだ!!トラミちゃんとの話が白熱してたから、声が下まで聞こえたんだよ?!』
『都!どうする、なんとか天使の魔法でごまかして…。』
「はい、お母様にゃのですね。おじゃましてますのにゃ♪」
((ええええええ??!!!!返事しちゃったよ!!!))
「ええと…少し変わったお友達なのね?」
部屋に入ってきた都の母はぴこぴこ動くトラミちゃんの耳と尻尾に目をやりながら小首をかしげている。
「ふっふっふ、実は都ちゃんを助けるために22世紀の未来から助っ人にやってきたのにゃ♪」
((言っちゃったよ!!!トンデモないことを暴露しちゃったよ!!!))
そして一〇分後、両親と都、トラミはダイニングで一緒にデザートとお茶を頂いていた。
「お母さまの手作りのレアチーズケーキは最高なのにゃ!!!」
父親の笑顔は若干ひきつっているような気がするが、母は満面の笑顔でニコニコしながらトラミと都と眺めている。
「都ちゃんの友達がワールドワイドになって、母さんも鼻が高いわ!」
(お母さん!状況適応能力が高過ぎるよね?!!)
「にゃっはっはっは!!都ちゃんのことは私にまかせるにゃ♪必ず大変なトラブルから『謎の道具』で救ってやるのにゃ♪」
(自分で『謎の道具』て言ってるよ?!!本人も道具のことをよく理解していないよね?!!)
本当にトラミを現場に連れて行っていいのか、都の不安は増すばかりであった…。
「なるほど、怪盗ファントムキャットは今日は『悪魔の絵』を盗みに来る予告をされているのですね。」
端正な顔の青年は見るからに禍々しい『悪魔の絵』をじっと見やっている。
なんでも魔界の悪魔たちの様子を芸術的に描いた傑作ということなのだが…。
「…この絵も呪われているような気がするんだよな…。」
荒神坊は嫌そうに悪魔の絵を見やっている。
「…ええと、今回は瀬利亜さんの代わりにあなたがお越しいただいたのですね。」
小山内は目の前の超絶美青年に話しかける。
「そうなのです。瀬利亜嬢は超難敵のスーパーモンスターズの怪人…ごほごほ!なにやら重大な用事があるということで、今回はどうしても抜けられないそうなのです。
代わりに私、小早川充が怪盗ファントムキャッツ捕縛の任に就いたわけなのですよ。」
口元の歯をキラッと光らせながら、やけにさわやかな笑顔で小早川は小山内に語りかけてくる。
『荒神坊さん。俺はすごく嫌な予感がするのですが…。』
小山内はこっそり荒神坊に話しかける。
『奇遇だな…。俺もこの人では前回クラスの悪魔が出てきたら対応できない気がするんだが…。』
荒神坊もこっそりと小山内に返事をする。
◎小早川 充 27歳 人間 男 風流院高校理事長 テーマパーク再生企業『遊作』社長
レベル:99
HP A
MP B
攻撃力: B(変身時はA)
(以下略)
【称号】 『テーマパーク再生王』『キャプテンゴージャス』
【特記事項】 ※超絶美形な超絶天然青年。非常に人はいいが、空気は読めない。
能力が高い割には『運が悪く』、結果的にトラブルメーカー。
鑑定してみた結果、特記事項にもあるように能力は荒神坊よりもかなり高いようだが、あの瀬利亜と比べると、相当落ちるようだ…。
嫌な予感がして、悪魔の絵を鑑定すると…。
◎悪魔の絵(呪われた絵)
市場価値は3億円。ただし、強力な悪魔の呪いがあるので、一刻も早く手放すべき!
(完全に呪われちゃってるよ!!今回の任務外してもらえませんかね?!!!)
「はっはっは!なかなか前衛的でアーティスティックな絵ですね♪これはかなりの価値がありそうですね♪」
そんな小山内の気持ちなど知らぬかのように小早川はニコニコしながら絵を眺めている。
(この人、絵が呪われていることに気付いていないよね?!この人に任せるのは不安しかないんだけど?!!!!)
『下山!モンスターバスター協会に連絡して、さらなる助っ人を要請してくれ!』
『ええ?!でも、二人もモンスターバスターがいるんでしょ…。』
『いいから、早く!!』
小山内はこっそり下山に指示を出し、下山は嫌々その指示に従っている。
そんな時、美術館の照明がいきなり切れて、あたりが真っ暗になる。
「くそ、とうとうファントムキャットが現れたか!!!」
小山内の叫びに小早川が反応する。
「任せたまえ!スーパー発光弾!」
小早川が懐から取り出した『前衛的なデザイン』の銃を撃つと、展示室内が閃光に照らし出される。
「この発光弾は五分くらいはこのまま輝いている。そして、普通の方法では消すことができない!同じ手は通用しないぞ!」
小早川の叫びに警官たちの動揺が収まるが、間もなく、全員の動きが止まる。
展示室内は一瞬のうちにデフォルメされた可愛らしい熊のぬいぐるみ風のゆるきゃらたちに埋め尽くされていたのだ!!




