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105 勇者 VS 勇者 その3

 「それでは、試合開始です!!」

 ニャントロ邪神の合図にしたがって、それぞれのチームが動き出す。


 クリムトチームは魔法剣士クリムトと賢者マライアが魔法を唱え始め、竜戦士ドゴンが青竜刀を振りかざして突っこんでいく。

 それに対してアルテアさんチームは……瀬利亜さんが橋本君を抱えると、涼しい顔でドゴンの攻撃を避けるように後方に素早く飛び退った。

 一撃で戦車をも砕きそうな凄まじい剣撃を仲間を抱えて余裕で躱すとは、瀬利亜さん半端ないっす!!


 一方、日本刀を脇に差し替えた神那岐さんはいつの間にか賢者マライアの眼前まで滑るように移動してきている。

 構え、闘気共に間違いなく超一流の剣士、それもおそらく俺たちのやりあった勇者剣士・アレン王子を上回るはずだ!

 呪文を詠唱途中だったマライアは愕然とし、今にもマライアが斬られようとしていることに気付いたクリムトは何とか剣を構えてマライアと神那岐さんの間に割り込んだ。


 その瞬間銀色の一閃がきらめき、神那岐さんが刀を鞘に納める。

 居合切りだ!!残念ながら俺の目には正確な太刀筋は見えなかったが、一体どうなった?!


 ピシッ!カランカランカラン!

 クリムトの持っていた勇者の剣が真ん中あたりで斬られ、先端が足下に落ちていった。


 「馬鹿な?!勇者の剣を斬れるような剣があるはずが?!!」

 クリムトはあまりのことに動きを止めてしまう。


 そしてその隙を神那岐さんは見逃さず、あっという間にクリムトの懐に潜り込む。

 「安心してください!峰打ちです!」

 神那岐さんは刀の峰でクリムトの胴に強烈な一撃を打ち込む。


 行動不能のダメージがいったという魔法のサインがあった後、神那岐さんは今度はマライアの眼前に躍り出る。

 マライアが何とか反撃の魔法を放つが、神那岐さんは魔法をすり抜けてマライアに行動不能のダメージを与える。


 「これで終わりですね。」

 淡々と告げる神那岐さんにクリムトとマライアは呆然としている。

 すげえ…。こんなすごい戦士見たことがない…。


 「そこまでです!!瀬利亜さんチームの勝利です!

 試合は終わりましたから、ドゴンさんと瀬利亜さんも試合を終了してください!」

 アルテアさんのアナウンスが闘技場内を響き渡る。

 見ると、いまだドゴンの猛攻を瀬利亜さんが橋本君を背中におぶったまま、躱したり、足で弾き飛ばしたりしている。何やってんのこの人達!!!


 「あああ!!いつの間にかクリムトとマライアがやられてしまっていたのか?!!

 このドゴン!不覚だ!!!」

 ドゴンがうなだれて、がっくりと肩を落とす。

 「大丈夫。あなたは良く戦ったわ。そして、あなたの仲間もすごく頑張ったのだと思うわ。

 …多分だけど…。」

 そう言って瀬利亜さんがドゴンに右手を差し出す。

 いいことを言っているようで、実はすごく適当なことを言っているよね。


 言われてドゴンが瀬利亜さんの手を取って立ち上がる。

 「戦士としても凄腕なだけでなく、相手に対する気遣いも素晴らしい!

 俺は真の戦士と戦っていたのだな。」

 ドゴンはなんとか他の二人と違い立ち直ったようだ。


 クリムトとマライアはというと…。

 勇者の剣が斬られ、さらに……マライアの魔法の杖まで斬られているよ!!

 これは、魔王との戦いに赤信号が点灯したよ!!

 そのことがはっきりとしているせいでクリムトもマライアも無言で立ち尽くしている。



 「はーい!そんなクリムト君に朗報です。こんなこともあろうかと私がひそかに開発しておいたものがあります。

 なんと、『勇者の剣リペアセット』です♪これで、どんなに激しく壊れた勇者の剣もバッチリ再生することができます♪」

 アルテアさん!!どうやったらそんな事態を想定できるんですか?!!それからそれ、本当に効くんですか?!!


 「おい!!そんな冗談を言っている場合じゃ…て、勝手にいじらないで…。」

 クリムトが我に返った時にはアルテアさんがクリムトの手から切れた勇者の剣をひょいと抜くと、アルテアさんが接着剤のようなものを刃に塗って、剣をくっつけてしまった。

 そしてパテのようなもので隙間を埋めて、魔法をかけると…。

 「じゃーーーん♪これで見事再生したよ♪」


 「そんなことで勇者の剣が再生するはずが!!……直ってるよ?!!!それも気のせいか剣にこもった魔力が強化されているんだけど?!!」

 勇者の剣を受け取ったクリムトが愕然としながら勇者の剣を凝視している。


 「なんと、リペアキットで修復すると『当社比約1.1倍』に強化されるのでした♪

 そうだ!!今回の参加賞として特別に『勇者の剣リペアキット・お徳用20個セット』をプレゼントするね♪」

 勇者の剣てそんなに簡単に切れたり、折れたりするものなの?!!どこから何を突っ込んだらいいかわからないんだけど?!!!


 「それから、マライアさんにも朗報です。こんなこともあろうかと私がひそかに開発しておいた『賢者の杖リペアセット』です♪これで、どんなに激しく壊れた賢者の杖もバッチリ再生することができます♪」

 これ以上何をどう突っ込んだらいいのでしょうか?!!!


 またしてもマライアの手から賢者の杖を抜き取ると、アルテアさんは素早く修復してしまった。


 「ほーら、これで大丈夫だよ♪」

 マライアは呆然としながらアルテアさんから賢者の杖を受け取っている。


 「そうだ!せっかくだからマライアさんにも『賢者の杖リペアキット・お徳用20個セット』をプレゼントするね。これで何があっても大丈夫だよ♪」

 賢者の杖が20回も折れるような事態てどんな状況なんでしょうか?


 結局、前以上にやる気溢れるドゴンと、半ば呆然としていたクリムトとマライアの三人は元の世界に帰還後、魔王を無事に退治したそうだ。

 その際、勇者の剣リペアキット、賢者の剣リペアキットともに大活躍したそうだ。

 どんな戦いをしたのか、想像もしたくないです。



 「さあ、続いては決勝戦です!!

 千早ちゃんがチートに強すぎるのと、橋本君は自身が足手まといになりすぎてトラウマになりそうなので、メンバーチェンジを行いました。

 格闘勇者の瀬利亜ちゃんはそのままです。

 新メンバーが強力な剣士にして異世界召喚勇者の伊集院聡君です。

 そして、優秀な魔法使いにして同じく異世界召喚勇者の三條院楓ちゃんです。

 これは普通に戦えばかなりいい試合になりそうです。」

 アルテアさんが対戦チームの紹介をしてくれる。

 新しい二人のメンバーは確かにただものではなさそうだが、神那岐さんに感じたほどの凄みまでは感じない。とは言え、先ほどの瀬利亜さんの驚異的な身体能力も踏まえると、非常な強敵なのは発揮ししている。

 俺たちが全力で戦っても勝てるかどうか怪しい相手だ。

 だからこそ、この戦いで大切なものをつかもうと俺は決めた。


 そして……。

 あっさり俺たちが勝った。

 …イケメン勇者の伊集院君と妖艶な美女の三條院さんは婚約者同士だったのだが、開始早々些細なことから痴話げんかを始めてしまったのだ。

 敵を前にして本気で痴話げんかをしたのじゃあ、よほど格下の相手でもないと負けちゃうよね。

 俺たちは瀬利亜さんを除く二人にあっさり攻撃を当てて試合が終了してしまった。


 「素晴らしい!さすがはチームワークがウリの勇者チームです!!

 相手チームの不和を見事に突いて勝利を収めるとはさすがです!!

 昼のチームワークはよさそうですが!『夜のチームワーク』もいいのでしょうか♪」

 ニャントロ邪神!!!何を言ってるの?!!

 そんなに嬉しい…いや、残念ながら夜は何もないです!!


 「残念ながら瀬利亜さんチームは敗退してしまいましたね。

 そちらのカップルさんも『夜のチームワーク』はよさそうなのですが…。」

 えええええええ?!!!!お二人さんが真っ赤になっているよ?!!!

 これは完全にデキちゃってるよ?!!!!!


 俺は一見両手に花に見えるけど、どちらとも友達以上恋人未満だからね?!!

 未だにD…ちくしょう!!!


 「ニャントロ君?いろいろ失言があったようだね♪」

 ニャントロ邪神の隣の席のアルテアさんが目が笑っていない笑顔のまま凄まじい戦闘オーラを発しているんだけど?!!!!

 解説・実況席は凄まじい閃光に包まれ、その閃光は闘技場一帯を覆った。


 俺たちの意識もそこで途切れていた…。




 気が付くと、俺たちは半壊した『魔王城』、正確には魔王四天王ゴルダムの根城に横たわっていた。

 「リリム、アージェ!しっかりしろ!!」

 傍に気絶していた二人を起こして、俺は少し前までの夢?の体験の話をした。

 なんと、二人とも俺と全く同じ体験をした記憶があるというのだ。


 「ふふふふ。私たちみんなで同じ夢を見たのね。」

 「そうだね。これは魔王を倒せるという瑞兆かもしれないね。」

 リリムとアージュも顔を見合わせて笑う。


 俺たちの倒したのはたかが四天王だったのかもしれない。

 だが、俺たちの全身にみなぎる気力がこれからのどんなこんなも切り抜けられると確信を持たせてくれていた。



 「素晴らしいわ!これは是が非でも魔王を粉砕して、世界平和を取り戻さないといけないわ!」

 ……どうして、瀬利亜さんまで胸を張って立っておられるのでしょうか?


 「石川はともかく、俺はこの旅には必要ないよね?!!」

 ……橋本君まで愕然として立ち尽くしています。


 こうして俺たちの旅は新たな仲間を加えて再開したのだった。

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