101 風流院大学入試 その3
細かい登場人物が多いので、作者の混乱を防ぐための、登場人物紹介
ブリギッタ・ド・シュトラウス: 風流院高校元生徒会長・如月隼人の姉。幻魔界皇太子。瀬利亜と二人で大害獣ゴメラ軍団を何度か退治した魔法戦士。
氷室雪菜: 雪女一族の姫である氷室琴美の従姉で、護衛役でもある雪女のスーパーレディ。
マリーザ・アルヴァネーゼ: アメリカ最強のスーパーヒロインにして、シードラゴンマスク最強のライバルと目されている、『クールビューティ』な美女。
石川 瀬利亜 : 風流院高校に通う女生徒である石川瀬利亜は超常事件を解決するモンスターバスターである。
しかしてその実体は熱く燃え盛る正義の心のある限り「どんな(大怪獣)ゴメラでも、だれよりも早く倒せる」無敵のスーパーヒロインシードラゴンマスクである。
今日も瀬利亜は愉快な仲間たちを増やすために風流院大学・異文化交流部(モンスターバスター育成部)の試験官を務めるのであった。
「おお、受験番号111番のブリギッタ・ド・シュトラウスさん、かなりしっかり書かれているようですね。
…フムフム…異文化交流学部で幅広い知識と視点を身に付けて、故国をさらに素晴らしい国にされたいと…。
素晴らしいです!!ブリギッタさんは合格です!!」
「「「「えええええ?!!!!」」」」
「ちょっと待ってください!視野を広げて自分の国のためになりたいということ自体は素晴らしいことですが、いくらなんでもそれだけで合格というのでは不公平すぎませんか?!」
またしても先ほどの秀才風の眼鏡の男子受験生が叫んでいる。
(確かに答案だけで合格させたということであれば、秀才くんの言う通りではあるんだよね…)
かなり破天荒な空海姉もの瀬利亜試験官の発言にはびっくりしている。
「…仕方ないですねえ…。こちらの判断が間違いと思われると試験全体に影響が出そうです。
では、そちらの受験番号99番の小林小五郎くん。
ブリギッタさんと模擬試合をしてください。それで、どうしてブリギッタさんが合格なのかがはっきりするはずです。」
瀬利亜試験官が淡々と告げる。
それを聞いてブリギッタさんが顔色を変える。
「瀬利亜、待ってくれ!見た感じ、小林という青年は『情報系の能力者』のように見える。私とやりあったら気の毒なことになってしまいそうなんだが…。」
ブリギッタさんの発言に小林青年は固まる。うん、ブリギッタさんの発言は『小林青年では勝負にならない』と言っているようなもんだもんね。
ところで、ブリギッタさんの物言いだと、二人は知り合いのようだね。
(小林青年も弱くはなさそうだけど…ブリギッタさんとでは全然勝負にならなさそうだよ。)
空海姉も二人のオーラを見比べて肩をすくめている。
「そうだわねえ…。ブリちゃんの言うように『瞬殺の試合』が三試合も続くのはさすがに見栄えが悪いわよね…。」
ええええええ?!!!瀬利亜試験官!やっぱり瞬殺なんですか?!!!
「じゃあ、ブリギッタさん、マリーザさんと模擬戦をしてください。」
「ちょっと待ってくれ!いくらなんでも『アメリカ最強』のライトニングレディとやりあって勝てるわけないでしょ?!!!」
「「「「えええええええ?!!!!!」」」」
ブリギッタさんの爆弾発言に、会場が蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。
マリーザさんが『あの』ライトニングレディだって?!!!
雷撃と超高速移動を武器に数々の怪物や怪獣などを一撃必殺で屠ってきた無敵のスーパーヒロインで、先日のスーパーヒーローオリンピックでは『世界最強』とも目されているあのシードラゴンマスク様と互角の戦いを繰り広げたことでさらに名を上げたと評判だ。
「大丈夫、大丈夫。無理に勝つ必要はないから。これは模擬戦で、実力を見るための試合だから。ある程度いい勝負になったら、そこで終わりにするから。
それに、試合の模様は録画しておいて、後で『航くん』に見せようかなと思うのよね。」
「よっしゃあ!!乗ったあ!!」
ブリギッタさんは『航くん』という名前を聞いたとたんにすごくやる気を見せていた。
「あらあ、そちらの二人で模擬戦をするのだったら、試合場にものすごく強力な結界を張る必要がありそうね。」
いつの間にか金髪の長身のものすごい美女がニコニコしながら瀬利亜試験官の隣に立っている。
…人が来るような気配はしなかったのだけれど…。
「アルテア学長。ちょうどいいところに来られました。結界をお願いします。」
瀬利亜試験官の声に会場が静まりかえる。
この胸のすごく大きな美女が学長……。
(天空!この人、スーパーヒーローオリンピックに出ていたよね?!!)
空海姉の言う通り、この超絶美女はモンスターバスター最高峰一二星の一人にして、世界最高の魔法使い『大魔女リディア』だ!
…でも、ゆるふわなこの美女からはすごい人オーラが一切感じられないのだけれど…。
ほとんどの男子受験生がアルテア学長に見とれる中、ライトニング・レディとブリギッタさんは一〇メートルくらいの距離を取って向かい合った。
「では、結界を張ります♪」
ニコニコしながらアルテア学長が懐に手を入れると、七人のアルテア学長が飛び出してきた。
ええええええ??!!!!
そして八人のアルテア学長から凄まじい魔力が迸り、ライトニング・レディとブリギッタさんを囲むようにほぼ透明なガラス状のものが二人を包み込んだ。
「この結界内なら二人とも全力を出して大丈夫だよ♪」
八人のアルテア学長がニコニコしながら宣言する。
(懐から出てきた七人の大魔女は『魔道人形』だよ!!しかもその魔道人形も本物と同じくらいの強力な魔法を使えるなんて、なんて反則な存在なんだろう!)
先ほどの氷室さんを除いて、ほとんどの受験生がアルテア学長のあまりにも強大な魔力を感じて固まってしまっている。
さらに結界内ではブリギッタさんとライトニングレディの双方の全身から凄まじい闘気が迸っている。
「模擬戦でここまでの強敵と対峙できるとは思わなかったよ!全力で行かせてもらう!!」
ブリギッタさんの纏っていた闘気が鎧の形を取り、全身を覆っていく。
虹色に光る全身鎧の戦士が巨大な両手剣を持って構えている。
「素晴らしい!戦闘力もさることながら、こちらに向かわれる前向きな意欲が前面に出られてますね!いざ勝負!」
ライトニングレディもいつに間にかスーパーヒロインスーツに着替え終わっており、こちらも見ただけで震えがくるような圧倒的な闘気を放っている。
(…ライトニングレディはさっきまではここまで凄まじい闘気を完全に隠していたのね…。剛田脳筋君じゃ瞬殺されて当たり前だわね。天空も何年も必死で頑張らないととてもここまでのレベルには到達しようがないわね。)
空海姉、このレベルに到達できるうんぬん以前に二人と対戦したら瞬殺されるビジョンしか出てこないのだけれど。
「では、スタート!」
瀬利亜試験官の合図とともに結界内の二人の闘気はさらに爆発的に上昇した。
凄まじい閃光が講堂内を覆った後、俺たちの眼前では虹色の戦士が片膝をつき、ライトニングレディが戦士を睨みながら立っている。
「驚いたな。あれを紙一重でかわされるとは?!あなたはすでにアメリカ三銃士並みの力があるようだ。今度は『全力』で行っても大丈夫そうだね。」
ライトニングレディが薄く笑う。
「いやいや、今のでも直撃を喰らっていたら死んでたかもしれないよ。そちらが全力なら、こちらも全てを出しきらないと死んでしまうかもしれないね。」
ブリギッタさんも妙に嬉しそうに答えている。
「では、行くぞ!」
「いざ、勝負!!」
ライトニングレディの右手とブリギッタさんの剣が先ほどよりもさらにまぶしい閃光を放つと、講堂がぶつかり合う、二人の闘気で大きく揺れた。
「はい!そこまで!!」
瀬利亜試験官が停止の合図をしたのは双方が攻撃をかわし合った後のようだった。
「二人ともすごくいい試合をしてくれました。世界最強の戦士の一人を相手に真っ向勝負ができるブリギッタさんが試験に合格するのは当然だと多くの人が納得できる試合だと思います。
…ついでに言えば、同じ会場にいるだけで意識が飛ばされそうになるくらいの圧力のあるこの講堂で、現時点で気絶していない受験者が…65名おられます。
ということで、65名の受験者の皆様は合格です!おめでとうございます!!」
ええええええ?!!!そんな決め方があるの?!!
(天空!やったじゃん!!合格だよ!!)
…ええと、確かに合格できたようなんですが、なんか納得いかないんですけど?!!




