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異世界突撃部隊 ゼロゼロワンワン  作者: 拝 印篭
第一章【大森林】風来無宿 
9/42

9.フゴフゴ、ブヒヒー!

 <前回のあらすじっ!>


 遂に人里の痕跡を発見した俺とメロンは、そこでオーク軍の残党に囲まれてしまう。

 食糧を求めて俺達を襲う敵に対し、俺は必死のネゴシエイトを仕掛けんと挑んだが、意志の疎通が出来たことに当のオークはおろか味方のメロンにまでドン引きされる始末。


 ま~たしてもやっちまったか? 俺?



◇◆◇◆




「つまり、あんたらは戦友の菩提を弔う為と、遺品の回収をする為にこの地に留まっていたってわけか?」


「然り。出来る限りの軍属タグを回収して、軍に報告して、しかる後遺族に手渡してやりたいと願っての事だ」


 オーク軍の小隊長と名乗るガオジー氏は地面に胡坐をかき、俺に説明してくれた。

 周囲の部下たちと、メロンが胡乱気な目で見る中、俺とガオジー氏の話し合いはかれこれ一時間程続いていた。まぁ、半分はこの御仁の話が長い所為であるのだが。

 それにしても、全滅した友軍の後始末を敵地に残ってこの一年細々とやってきたとか、どこの横井さんだよ! 


「そういうことなら、この道から外れて一日程北に向かえば森の中で食糧の補充は出来ると思う。軍隊をどうこう出来る程ではないが、この五人位なら飲み食いに困る事も無いと思うよ。ちなみに、ウサギとパンの木がねらい目だな。ほら、これだ」


 と、言ってバッグから取り出したパンを見てオークたちは大興奮! ガオジーの許可を得たとたん我先にと争ってパンを喰い始めた。一瞬で無くなったけど。


「ありがたい。軍用食(レーション)が底を尽いて早三か月。たまに現れる動物を採って凌いでいたが、そうか、森の奥は危険だという認識であったが、その中間地点であればそんな食い物の取れる地域があるのだな」


 と、こちらもパンを喰いながら嬉しそうに独り言ちるガオジー氏の言葉に、他のオークもやや元気を取り戻したようで、仲間とハイタッチしながら喜んでいた。


 ちなみに、メロンから見ると俺とオークとの会話は


「フゴフゴ、ブヒヒー!」

 

 としか聞こえないそうだ。何でも、声帯の作りが違う為、お互いに相手種族の言葉は発音できないという認識であったそうな。政治的に交渉する時も通訳を介した筆談で行うのが常であるとか。きっと、俺のは転生によるチートなんだろうなぁ。

 おかげでメロンからも、俺のことを実はオークの間者か? と疑われてしまったそうだが、彼女の身の安全と引き換えに情報を提供した事を話すと、一安心したようで、オークには近づかないものの、俺に対する警戒は解いてくれた。そも、俺みたいなちっこいオークはいないと彼らが保障してくれた。


「貴殿らは部隊復帰を目指して東へ向かうのだな。ならばこの先三日程度の所には放棄された集落があり、そこの入り口付近に我等の同胞の遺体が放置されている。しばらくの間、そこを拠点に遺品を回収していたのでな。願わくば彼らの亡骸を貶めるような事は慎んでくれるとありがたい」


「わかった。それは人として約束しよう。諸君はこれからどうする?」


「元々、コポルト族に見つかりそうになったら撤収するつもりだった。食糧を補充したら本国へ帰還するつもりだ」


「それなら、万が一俺達の友軍に会っても戦闘にならないようミスリードすることを約束しよう。無事に本国に帰投出来ることを祈っている」


「かたじけない」


 正直、こんな会話の内容をメロンに説明できないな。ともあれ、全滅エンドしか見えない遭遇戦から、無事に交渉によって生還出来た事は喜ばしい。


「とりあえず、彼らは遺品を持って本国に帰還するそうだ。俺達とは逆方向に向かうのだから、普通に考えれば今後脅威になる事も無いだろう。ここは互いに出会った事は忘れて別れるのが吉というものだろうね」


 と、メロンを諭してこの場を去ることを提案する。流石に彼女もここで争う事の愚は理解できるらしく、俺に一任すると一言だけ言ってそれ以上は口を噤んでしまった。


「それでは、そろそろ我等は出立することとしよう。貴君らも無事仲間と合流できるよう祈っておる」


 と、ガオジー氏の挨拶を聞いて握手を交わしていたところ、


「敵襲! 敵襲ー!」


 と、オークの一人が騒ぎ出した。すわ! ばれたか? と、一瞬思ったが、事態はそれより深刻だった。

 俺達が森の方に足を踏み入れたところ、オークたちと比較しても更に倍以上の体格差のある四足の怪物が、巨大な嘴で先行していたオークの一人を鎧ごと噛み砕いていた所に遭遇してしまった。


「ぐ! キマイラだと!?」


 苦虫を噛み潰したような顔つきでガオジーが唸る。そして、俺の隣では、メロンがガタガタと震えていた。


「森の魔獣! こんな所で遭遇するなんて……どうすれば……」


 どうやら、俺達はこれまでのようだ。

 さらば、友よ! アディオスアミーゴ!


 



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