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異世界突撃部隊 ゼロゼロワンワン  作者: 拝 印篭
第一章【大森林】風来無宿 
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8.死人の丘!

 <異世界転移六日目>



 どこかの集落へと向かう小道に出た俺達は、道なりに歩いていた所で、あまりにも不快な光景を見つけてしまった。


 それは、無数の骨、骨、骨である。明らかに人を焼いてそのまま放置したかのような地獄絵図。ちょっとした丘の如くうず高く積み上げられた人骨(犬耳の痕跡があるから、俺達と同じ種族であるのだろうことは予想がつくが)の山だった。


「伝染病を防ぐ為に御遺体を焼いてそのまま処置出来ずに放置したんやね」


「つまり、これって」


「1年前にエースコック帝国の侵略を受けて全滅した国境の村。西果て(さいはて)の村やね。激戦の地で、軍人200人と軍属の住民800人程が2千人以上のオークに攻め入られて自害したと言われてるんや。それでも、住民一丸となってオークの方にも大打撃を与えて撃退したことで、当時新聞にも闘いへ臨む際の決意のお手本として絶賛されとった。とはいえ、大勢のお人を亡くした悲劇には違いないんや。なのに、まさか一年経っても未だにこんな風に放置された状態だったなんて……」


 メロンはぽろぽろと涙を流していた。

 俺自身も初めて目の当りにする遺体の山に思考停止してしまったようで、ようやく動き出せるになったのは、小一時間が経過した後だった。





「この辺りは確かに国境地帯やけど、軍が進軍するには森を抜けなきゃいけないから決して楽ではない進軍コースだと思われていたんやよ。北にある内海を横断した方が船で補給物資も運べるから確実に楽だったんやけど。でも、数年前から内海を縄張りにしたドラゴンが現れて、軍艦だろうが飛龍だろうが全部襲われて事実上通行不可能になってもうたんや。互いに行き来出来ないから事実上の休戦状態だったんやけど、一年前にオークが森を抜けて直接首都に進軍しようとしたんやよ」


「しかし、こんな狭い道しか無い森を大軍で抜けるとか、悪手としか思えないんだが?」


「確かにね。実際この村を襲った時に糧食を住民の機転で失い、次の集落へ行くまでの間に細い道で分断されて各個撃破されて全滅したんやから、オークにとっても無駄死にだった戦いな筈なんやよ」


「それにしても詳しいな」


「まあ、当事者の一人やし、うちが軍に召集された切っ掛けになった事件やしね……」


 それ以上、何も詳しい話を言う事もなくメロンはこの件に関して口を閉ざした。彼女の語った真意が判るのは、もう少し後、俺たちが無事保護されて、彼女の身内と出会ってからのことである。


「どちらにしろ、首都に行くには反対方向へ移動すればいい筈やよ。その間にうちの小隊と合流出来るかも知れないんで、もう後は迷う事は無いで~」


 空元気だろうが、勤めて明るく振舞おうとしているメロンの顔を立てて俺も陽気に振舞ってみる。


「つまり、もしかしたら君の妹に会えるかも知れない訳だ! テンション上がるぅー!」


「! 駄目やよ! うちと違うて妹のマロンはおぼこやから! ノーラさんはうちのバディになるお人なんやから、妹に色目使ったら駄目なんやからね!」


 強い口調で拒否られた。そこまで言われると反論したくなるなぁ。


「だーいじょうぶ! 妹は【別腹】だから!」


「だーかーらー! 食べちゃらめぇ~っ!!」


 などと、二人でいちゃこらしながら、道なりに東上を初めてすぐに異常事態に気が付いた。


「付けられてるぞ!」


「うそ! この辺りに人が居る筈無いのに!? はっ! もしかして、友軍?」


 いや、それは無いな。さっきから殺気がぷんぷんしてやがる。洒落じゃないぞ! より正確に言うと明確な害意ってやつだ。敵意を持った相手がどうやって攻撃をしてやろうかと算段してる雰囲気だ。しかも複数。


「少なくとも敵意を持ってることは確実だ。つまりは、動物の類じゃぁ無い」


 そこまでメロンに語った所で巨大な何かが目の前に現れた。数は5。それぞれ、武装した猪がこちらに向けて威嚇するような態度でこちらに語り掛けてきた。


「ありったけの食い物をよこしやがれ!」


 野盗の類かよ! 俺が少し心の中で落胆していると、横でメロンが尋常じゃない位ガタガタと震えだした。


 「お、オーク軍の残党!!」


 なるほど、こいつらがオークか。剛毛の生えた豚が鎧付けて二足歩行しているような姿は、見様によってはコミカルに見えるが、その体格は、小さな個体でも2M級、体重は3、400キロはありそうな体格である。二人がかりで一匹なら戦えそうであるが、よりによって5匹かよ! どう見ても、全滅エンドしか見えてこねぇ!


「さっさと食い物を出しやがれ! 殺すぞ!」


 と、いきり立っている。


「な、なに言ってるの、か、わからないよ~」


 え? もしかして、意志の疎通が出来てない? こんなに判りやすく話してるのに?

 とりあえず、俺自身は意志の疎通が出来ている様なので、語り掛けてみることにした。


「食い物なら分けてやる。だからちょっとだけ話を聞いてくれないかな?」


 返答は意外すぎるものだった。


「「「「「「しゃ! しゃべったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」」」


 オークはおろか、メロンにまでドン引きされた。

 あれ? また「やっちまったぁ!」か?



※オーク


 言わずと知れた姫騎士の恋人(?)オークさんです。

 この作品では、豚、猪の獣人の総称をオークと定義します。

 猪のように精悍なタイプの者たちは兵士になり戦う者が多く他にも

 ランドレース

 ヨークシャー

 パークシャー

 などなどの種族が約8800万人住まう一大帝国「エースコック帝国」にほぼ集まって生息している。

 他種族の雌を襲って繁殖するという説があるが、完全なガセであるとか。

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