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異世界突撃部隊 ゼロゼロワンワン  作者: 拝 印篭
第三章 【下街出張所】 准尉
36/42

36. HERO!

「あ~らぁ~、ちょっと、いいお・と・こ♡」

「いらっしゃ~い♡ ようこそ♡ おしぼりをど~ぞ♡」


 ここは、場末のキャバレー、と、言う訳ではない。


 恐ろしい事に、俺の新しい赴任先である。


 尚、先の台詞に脳内で全ての文字に濁点を付けて再生して欲しい。そうすると、現実に俺が聞いた台詞に近いニュアンスになるかと思う。

 

 なぜかというと、


 認めたくはないが、これを俺に向かって言った奴は、どちらも男、男であった。それも、マッチョ。暑苦しい筋肉をセーラーに包み込んでいた。衣装自体は、モー娘の「ザ ピース」の衣装みたいな爽やかな感じなのに、それを台無しにする暑苦しさ。まぁ、ブーメラン一丁って事は無くて良かったが。


「「や゛~ね゛~男女(おとめ)どよ゛んで~」」


 うん、聞き辛い。普通に書くぞ!


「「ようこそ、『ブエナビスタ王都防衛隊デモ警護班』へ♡」」




◇◆◇◆




 と、言う訳で、新たな赴任先にようやく辿り着いた。


「わたしは、ジョセフィーヌ特務曹長」

「わたしは、フランシーン特戦軍曹」


「「ふたりは、ピュアピュア!! マックスハード(ゲイ)」」


 うざっ!


 っていうか、こいつら、俺の部下になるの~?


 どうしよう!?



「あ~らぁ、到着したようね~」


「「イエッス マム!」」


 と、二人が突然敬礼を俺の後ろに現れた第三者に捧げる。ふりむくとそこには……

 うきゃーっ!


「ようこそ、地獄の一丁目へ。わたしがここの責任者、リッピー=ロジャヲ大尉よ~♡」


 その威容は、あまりにも衝撃的であった。耳を見れば俺らと同じコポルトと分かるが、それ以外のアイコンがあまりと言えばあんまりなパーツでデコされている。


 ブラチナブロンドに、細面というか、馬面で眠そうな目元をどっぷりと盛ったまつげとアイシャドーで飾り、見た目、不健康そうに見える。唇が分厚く、なんか、いかりや長介の女装、というかギャル化といった雰囲気で、色白の化粧もばっちりなのに、ご丁寧に鼻毛だけが多量にはみ出しているという、人という種の不快指数を最大限に上げる実験でも行っているような姿である。なまじ、姿が人間寄りなのが最悪! 


 俺、かえりたい。


「脅威の新人が入るって聞いてたけど、なかなかかわゆい坊やだわねぃ♡ さあ! 淑女たち♡ 新たな仲間にわたしたちのお城を御案内して差し上げて~♡」


「「イエッス マム!」」


 俺は、さっきの二人に両脇を抱えられ連行されていく。どなどな。




◇◆◇◆




「ここは、王都で行われるデモ行進の時に市民たちを混乱と熱狂から守護する、言わばモラルの最終防衛ラインってとこかしら♡」


 多分、この世界で一番モラルの崩壊したお顔の大尉殿が道すがら説明してくれる。


「もっとも、ここは、厳密に言うと軍ではないの。軍の外郭団体という感じかしら。負傷兵の再就職先という体裁で作られた第三セクターなのよね♡」


 大尉殿の説明に、俺は納得する。だから軍としての所属が書いて無い訳なんだな。


「かく言うわたし自身も、10年程海軍に所属していたんだけど、あの、エルダ海戦で負傷して、ここへ転属して来たのよ」


 そう言う大尉殿自身は、成程、義足を付けてひょこ、ひょこ、と歩いて行く。


「と、おっしゃるということは、大尉殿は海兵でありますか?」


「や~ね~。大尉殿なんて、他人行儀な。リッピーって呼んで♡」


 だが、断る! 

 しかし、本当に所属や階級は関係ないんだな。両脇を抱える怪人(おかま)も、どうやら先任という以外に特別威張ろうと言う感覚も無くすれ違う隊員に挨拶している。もっとも、された方は恐怖の感情に支配されているようだが。


 それにしても、マッチョ率多いな。ここじゃ俺、ほんとに「貧弱な坊や」だよ。


 そうして、連れて来られたグラウンドでは、二班に分かれて訓練が行われていた。


『『『『『ひーよこまめがーほうさくだーよー、へぃほっへぃほっへぃほっへぃほっ』』』』』


 と、歌いながらランニングする一団と、


「一列横隊!」


 の、掛け声と共に盾を構えて整列の訓練をする一団だ。


「集合♡」


 ジョセフィーヌのキモ艶めかしい合図と共に一斉にこちらへ向けて集合する全団員。その余りのスピードに俺は面喰った。


「どうかしら? ここの子猫ちゃんたちの錬度は?」


「凄い! 俺、自分らはここまで出来ておりませんでした」


 受けた事があるから分かる錬度である。俺らがキャンプでやってた事なんて、ホントに遊んでるだけだったんだなぁ。


「それが判ればこの場は合格ねん♡ みーんなーっ! この子がわたしたちの新しいお友達、ノーラ准尉よーっ♡ 仲良くしてあげてねーっ♡」


『『『『『イエッス マム!』』』』』


「それでは、訓練に戻れっ!」


 そして、フランシーンのいかつい声が解散を命じると、即座に元の位置に戻り訓練を再開する。


「それじゃあ、あたしたちは、ここのボスの所に行きましょうか?」


 ロジャヲ大尉が俺に向かって言った台詞は、ある意味今日一番の驚きだった。


「大尉が責任者ではないので?」


「まぁっ! 体位だなんて(ぽっ) わたしよりも凄いお方がいらっしゃるのよ♡」


 そう言って、俺達四人は、基地の敷地から外へと出て行く。ジョセ、フラも付いてくるのね。


 しばらく歩くと、どうやら一杯飲み屋がある。そういえば、結局酒はこっち来てから飲んでないなぁと思っていた。あの晩餐の時も酒は出ていない。こちらでは食前酒の習慣も余り無いのかな? そう思いつつ通過しようとしてたら、


「ちょっと、ちょっと! どこいくの? こっちよ、こっち♡」


 と、店の中へ誘われた。まさか勤務時間に飲み屋とは…… 半ば呆れていると、奥の座敷で一人酒をしている老人と目が合った。そこに居たのは、犬耳付けた藤原義明である。


「こちらが、『ブエナビスタ王都防衛隊デモ警護班』の真のドン。トーヴェ=タチバナ元大将閣下よ」


「おいおい、今じゃあ、バイク屋兼一杯飲み屋の店主ってだけだよ。そんな大仰な肩書で紹介してくれんな」

 

 と、外見からは想像も出来ない位の人懐っこいはなし方で俺の方に挨拶をしてきた。


「俺は聞いた通り、この店の店主、トーヴェ=タチバナだ。まあ、店はいい所にあると思うんで、帰りがてら寄ってって給料落としてってくれると僥倖だわな。がっはっは!」


「御挨拶遅れました。この度、『ブエナビスタ王都防衛隊デモ警護班』に配属されました。ノーラ准尉であります。以後お見知りおきを」


「ほう☆ お前さんがあの(・・)……よしっ! お前らこいつを可愛がってやれよ!」


「「「イエッス! ミ・ロード!」」」


 いや、こいつらに可愛がられるとか、人生しゅうりょーのお知らせっぽいんだが。


「今日は、俺のおごりだ! 旨い物食わせてやるから一杯ひっかけていけや!」


 そう言って立ち上がると串を打った肉を炭火に乗せ焼き始めた。


「気が付いたかしら? この方がかの『バルテオ海戦』の英雄、タチバナ提督よ♡」


 成程、確か教本に出ていたな。二倍の敵に半包囲された状態から各個撃破して勝利した、ラインハルトみたいな人だったな。今はリタイヤして健在だったのか。


「さーて、先ずは、ポン酒とこいつで乾杯といこう!」


 そう言って取り出したあて(・・)は……


「いかゲソのピーナッツバターあえだ。まぁーずいぞー!」


「「「「ひーっ!」」」」


 俺とおかまーずの心が図らずも一体化した夜となった。




 サブタイトルのHEROってのは、キムタクのドラマじゃありません。

 一応芝居の方で有名な奴なんですが、まぁその辺りは今回の話だけではちょっと判りづらいですね。


 まぁ、今回はかつてのHEROと邂逅したという事で。

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