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異世界突撃部隊 ゼロゼロワンワン  作者: 拝 印篭
第二章【ブエナビスタ】二等兵
32/42

32. リミット5イヤーズ!

 国王ウィリアム二世陛下は、臣下の中でも、お気に入りの一人、陸軍の最高責任者であるブルーノ=ブルペイジ中将を執務室に招いて雑談を交わしていた。


「そういえば、あの若者。確か、ノーラとか言ったか? 彼の者は今、どうしておるか?」


「は、現在は、初期教導の最中でございます。あと、二週間後には全過程を終了し、ご命令の通り、デモ警護班に編入予定でございます」


「うむ、かの者達に交わり、ここへ編入させた真意に気が付き課題を突破できれば、将来の軍の中枢を担うに相応しい事を証明することが出来るのう」


「ですが、それこそが厳しい最大の試練でありましょう。何しろ、歴代の士官の中でもこの課題をクリアできた者は、陛下を筆頭にワントナック卿、某、そして、ドギー大尉の僅か4名のみ、地力の他に天運にも恵まれなければこれを突破することは難しいとなれば、過大評価は禁物でありましょうぞ」


「だが、何分にも、彼の者は『神喚者』である。それなりの期待をしてもバチは当たらんのではないか?」


「む、確かに」


 そうして考えを巡らせたブル中将は、それでも、スペックは一人前の彼らの多くが最後の課題を突破できなかった事実に思い至り、天を仰ぎ見る。窓から見える青空は、夏の近ずく様を証明するものである。もし彼がこの試練を突破できるようなら、隙を見つけて、また彼らと宴席を設けてみたいものである。


「のう、ブルよ。余をのけ者にして宴席を設けようなどと考えてはおるまいな?」


「めっそうもございません! もちろん陛下もご一緒に」


「ふん。語るに落ちておるぞ」


 そう、咎めながらも楽しそうに笑む国王の胸の内は、いかなものか。ブル連隊長の眼力をしても見抜く事の出来ない、一期上の先輩士官だった頃から二人の間にあった人としての格の差であろうか? と、益体もない事を考えるブルーノであった。


「それはそうと、ミリスの娘子たちの様子はどうじゃ? あの後、不自由などしておらぬだろうか?」


「そちらについても、今は何も問題ないかと。現在は、来る再来月の『軍事パレード』に向けて訓練を積んでいる所でございます」


「ふむ、彼女らの部隊が本格始動すれば、余が願っていた軍を超えた『軍』が実現できる。年端もいかぬ乙女たちに困難を与えるのは忍びないが、最早手段を選んでいる段階では無いのだ」


「は、委細承知致しております。今『黄金の鐘』計画の成否が国家幾百年の計ということも、メロン嬢を筆頭に全隊員が理解しておりますれば」


「ふむ、辛い役目を押し付けて済まぬ。最早、我が国の『敵』は、オーク達だけではないのだ。何としてもより高次の敵からの理不尽な暴力に備える必要がある」


「それは、重々承知しております。それにしても、あと、五年、ですか」


 ブルーノは遠い目をしながらかつて、国王と共に戦地に赴いた際の、あの出来事に思いを馳せる。


 そう、


 この世界の真実を知ってしまったあの日の出来事を……




◇◆◇◆


  


「それにしても、サイトが優勝するとは。正直まぁ厳しいだろうなと本音では思ってただけに意外だったねぇ」


「同意、同意」


 意識を取り戻したアファムとハカセを見舞いに三人で医務室に入った俺たちは、そこで結末を報告した処だ。周囲には、まだ治療中の若い兵士たちが大勢いる。その光景に改めてハカセの自爆攻撃の恐ろしさを思い知った次第である。


「まぁ、俺たちとサイトではモチベーションが違ったという事だな。どうしても勝たなきゃいけない訳じゃない俺と、既に修行という目的を達したシロとでは、後の無いサイトの執念には敵わなかったという事だ」


「それにしても、拙者とサイト殿がこの決勝で二人共レベルアップするとは思ってもいなかったでゴザル。ノーラ殿はどれだけ経験値を貯め込んでおったのでござろうな?」


 シロの言う通り、俺に勝ったシロがLV4になった直後にサイトがシロを仕留めたおかげで、サイトの方もLV4までアップしている。当人はLV3になっただけのつもりなので、真実を知った時の驚きが目に浮かぶようである。どうやら、これも俺の持つ『経験値三倍』のスキルがパーティーメンバーに適用された結果であるらしい。そして、当の本人はというと、


「いやー、優勝にLVアップのおまけまで付いてくるとは、ほーんと、もうけたぜ!」


 と、ほくほくであった。


「くっそ! このリア充めが! 爆発しろー!」


 と、言う周囲のやっかみすら心地よい風であろう。


「いやいや、それをお前が言うのかよ!? 国民的英雄の伴侶たるお前が!」


 うん。てへぺろー♡


「お貴族様の御令嬢といい仲でこの度士官となって晴れて交際を認められたサイト君からそんな僻みみたいなお言葉をいただくとはなぁ(笑)」


「いやいや、そちらのお姫様の方が格上のお貴族様じゃないか? しかも、あちらから伴侶として求められたんだろう? 俺はあいつにどんな苦労して求愛したか!」


「……どうしてそんな事までご存じなんでしょうかねぇ?」


「そりゃあ、王都じゃ今や大フィーバーだしなぁ! 週刊宝玉の別冊『英雄メロン様初めての純愛』特集号読ませてもらったぜぇ!(ルイ○に無理やり読まされたんだけどな)」


「くっ! だが、お前たちのただれた関係も王スポで読ませてもらったぜぇ!(字の勉強がてらなぁ)」


「まったく、お前んとこの巨乳お嬢様、うらやましいぜ! 俺だってモフモフしてぇーっ!(怒)」

「何を言うか! 貧乳はステータスだ! 俺だってぺたぺたしてぇーぜ!(怒)」


「な、なんというか」

「当人には聞かせられない」

「物騒な話題に巻き込まないで欲しいでゴザルぅ~」


「「ふっふっふ(笑)」」


 どがっ!! 


 俺とサイトは同時に相手に一撃を加えた。ものの見事なクロスカウンターだ。


 こうして、俺とサイトは同時に昏倒。医務室のスタッフの仕事を増やしてしまい、後でこってり絞られた。



 そんな感じでじゃれあっている間に、後の訓練期間は瞬く間に過ぎてしまった。

 こうして、みんなとはそれぞれ別の道を行く事となるのであるが、この期間に培った信頼関係は、俺にとってかけがえのない財産となった。いずれまた、交わることもあるかとは思うが、そのときにはまた、こんな風に笑い合いたいものだ。


 第82期 新兵育成キャンプ 完了


 最終昇進成績

 中尉昇進者 2名

 准尉昇進者 3名


 



 


※週刊宝玉、王スポ(タブロイド判)


 王都において人気の週刊紙誌。基本下世話な記事を掲載する下品な雑誌として心ある人々からは眉を顰められるような存在であるが、現在の発行数は、それぞれ30万部以上を誇る国内でも最多の読者を持つ雑誌の代名詞。



 第二章 完結です。ここまでお読み下さりありがとうございました。


 この後も、サイトやシロ、アファム、ハカセを始め、今章で登場したキャラクターたちは、軍の中で色々と活躍してくれる事でしょう。

 しかし、このお話はノーラを始めとした0011小隊のお話であり、彼らが後のち重要な役割で出てくることは基本ありません。

 まぁ、酔狂な方がいて、彼らを主役とした話を作りたいという場合でも、筆者は特に制限を加えることはしないと思います。まぁ、無いでしょうが。


 次章、「なろう}ではかなり異質な話となるかも知れません。ここで詳しく内容を語ることはしませんが、第三勢力の尻尾位は出てくるかも知れません。

 果たして、ノーラはいろんな人達の期待に応える活躍をみせてくれるのでしょうか? そして、0011小隊のメンバーとの再会はいつか? 

 何よりも、筆者の腕で書ききる事ができるのか?


 色々おっかない第三章はなるべく早くお目見えさせたいと思っております。


 この作品に対するご意見、ご感想、募集しております。現状、あらゆる制限を加える予定はありません。簡単でも結構ですので、何卒宜しくお願い申し上げます。

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