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異世界突撃部隊 ゼロゼロワンワン  作者: 拝 印篭
第二章【ブエナビスタ】二等兵
31/42

31. トリプルスレッド!

 病み上がりに徹夜でどさ回り。

 死ぬわっ!

 阿鼻叫喚の地獄絵図


 と、いう程でもないものの、周囲の状況は、射程内に居たほぼ全員が失神KO。ハカセに至っては、ぴくぴくと痙攣しているものの、完璧に戦闘不能状態。巻き添えを喰らった女指揮官も白目をむいているし、ダックスに至っては、すけきよ状態でKOである。しかも、射程外にいた筈の者達も、あまりの事態に腰を抜かして戦闘不能である。


 つまり、現時点で無事生き残っている、と言っていいのは、俺達三人だけである。


「一旦中断して、負傷者を運び出す。お前たちはそこで待機していなさい」


 そう言って審判団が、負傷者を訓練場から担ぎ出す。どこに居たのやら? と、感心するほどの人数がハカセを、アファムを、その他負傷者を運び出す。そして、三分も経たないうちに、訓練所には俺、サイト、シロの三人と審判だけが残された。


「さて、ここで諸君らに問う。このまま闘い続けるのか? それとも、誰か一人に勝利を献上し、幕とするのか? 貴官らは、充分その才能を見せつけてくれた。本来の目的である優秀な戦士の選抜という目的については既に達したとみなして構わない。が、用意された士官枠は一つのみ。無難に分け合うというならば、他の者にも、何らかの優遇措置を考える。どうであろうか?」


 審判の問いかけに、一瞬心が揺らいだのは事実だ。リスク無くリターンがあるならば、重畳というものである。が、ここまでで倒れて行った者達の心情を考えれば、俺達だけがその恩恵を受けるのは筋が違うように思ってしまう。それは、他の二人も同様の思いらしく、互いに目くばせをして後、共に


「「「続けます!」」」


 と、意志表示をしたのであった。


「ならば、何も問うまい。この後、最終的な勝者のみに最後の士官へのチケットを進呈する」


 そう言って戦闘の舞台より退出した審判は、その時点よりの再開を促した。


「再開!」


 と、同時に三人が中央に殺到。サイトが剣を、シロが短刀を、そして、俺が拳を、それぞれ「敵」にぶつけようと繰り出す。一見、俺が不利のようだが、この場では俺だけがLV4。サイトがLV2、シロがLV3で他のステータスも考えるとほぼ互角という処であろうか? 


(とは言え、リーチ差はいかんともし難いか)

 そう考えた俺は、作戦を変更し、掴みにかかるや、投げ技を狙いに行った。狙いは、リーチの短いシロ!


「くっ! だが見え見えでゴザルよ! 判っていればそうそう簡単には」


 言いかけた処で完全にホールドした。並みの技では簡単に受け身を取られてしまうので、又下、しかも、デリケートな部分に指を突っ込むという裏技仕様だ。


「ひっ!」


 そのままキャプチュードの態勢から途中の変化で脳天より地面に叩き付ける。本邦初公開、オリジナル技のキャプチュードボムだ!


「ぐぁっ!」


 どすん! と、まともに喰らったものの、それでも最低限の受け身を取ったのか、完全には決まったとは言えない。ここは追撃といきたい所ではあるが、あえて狙いをサイトに変える。なぜなら、


「うおぉぉぉぉぉぉっ!」


 漁夫の利を狙って二人纏めて一刀両断を狙ってきたサイトが大振りの一撃を放ってきたからである。


 これを蟹ばさみで足元から崩しあわよくば膝を破壊しようとしたのだが、


「まだまだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 既に起き上がったシロのエルボーに狙われた為、不完全な所で立ち上がらざるを得なかった。

 しかし、シロの攻撃は、サイトに命中し、彼の膝にダメージを与えたようだ。チャンス!


 俺は二人同時にドロップキックを放ち、二人纏めて吹っ飛ばす。それぞれ一回転して止まった先で、今度は立ち上がり際のサイトの膝に低空ドロップキック! 膝を抱え悶絶するサイトを後目に、後ろから近づいてきたシロの後頭部にオーバーヘッドキック! さしものシロも昏倒する。

 

 ここで決める! シロを抱えた俺は、ハイジャンプを発動させると、空中でキン肉ドライバー(川上ドライバー)の体制に入った。決まれば一撃でKOできる大技である。だが、この場で無視されたもう一人が黙っている筈もなく、


「ノーラぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 サイトの投げた剣を躱す為に態勢を崩してしまった。これを見逃す程シロも甘くはない。


「こなくそぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 無理やり態勢を入れ替えられて、俺が、シロにキン肉ドライバーを喰らう羽目となった。


 地面にバウンドする程叩き付けられた俺は、もはや、天を仰ぎ見る以外出来る事はなく、


 完全に大の字で失神KO負けを喰らったのであった。




 ◇◆◇◆



 やがて、目が覚めると、決着はついていた。


 結局、俺が自爆した直後に、安心しきったシロの後頭部を、剣を失ったサイトが両の拳を叩き付け、完全KOで下したのだとか。俺が負けてから僅か3秒後のこと、結局、勝敗を決めたのは、執念の差だったのかも知れない。


「おめでとう。サイト。君が准尉になる権利を獲得した」


 教官が、目録を渡しながらサイトを労うと、サイトは、渡された目録を抱きしめ、涙を流していた。


「これで、これであいつと肩を並べることができる……」


 奴の思い人は士官学校出の士官である。同じ場に立って戦場に行くには最低でも士官の地位が必要なのであった。平民の出のサイトがそれを実現するには、ここで勝つ以外に道は無かったのだ。元々、彼女の実家からも良くは思われていなかったサイトは、それでも、同じ士官になれなければ、交際まかりならんとのお達しに反発し、この訓練に参加して最後のチャンスに賭けたのだ。


「あーあ、結局、俺の負けか。もう少しいけるかと思ったんだがなぁ」


 独り語ちてサイトを見やる俺だったが、気分自体は悪くなかった。


「これで、俺は一兵卒か……」

「いやいや、何を言ってるんだ君は? 元々、君の士官推薦は決まってたんだぞ!」


 教官に言われた俺は、


「へ?」


 ものっそい間抜けな声を出してしまったのだとさ。

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