20. 鑑定LV1~9!
『鑑定LV1~9』
そうだ! これだ! これが欲しかったんだ!
ありとあらゆるチーレム物の基礎となるスキル。幾万、幾億のスキルを持とうがこれが無かったら、チーレム物は成らず!
彼を知り、己を知れば百戦危うからず、と言う。そして、このスキルさえあればそれがいとも簡単に叶うのである。敵も己も仲間もみんな丸裸! プライバシー? そんなものはクソ喰らえだ! 嗚呼素晴らしきかな。鑑定!!
他のスキルなんぞ飾りですよ! エロイ人はそれを理解しとるんとですよ! 後のスキルはこれを取った後考えればいい。と、言う訳で、軍に入隊してスキル課へ行こう! と、相成った。
街門を抜けて俺達は軍事基地へとテケ車でひた走っているのであるが、行けども行けども基地らしきものは見えない。港の側にあるのかと思っていたがさに非ず。もうすぐ滝まで来てしまうというのに基地のある場所が分からないのである。
「なぁ、基地ってどこにあるんだよ?」
と、聞いてもぷすーと笑うばかりで誰も教えてはくれない。
事、ここに至ってある一つの仮説がひらめいた。が、時既に遅し。テケ車は滝に突っ込んで行く!
「うわーっ!!」
と、身構えるも、衝撃は無い。普通はあの規模の滝の水量が百メートルも落下してきたら「首」くらい簡単に折れそうな物である。いくら馬車の屋根があるからって、普通のキャンパス地である。一発で幌が支柱ごと倒壊する図しか浮かばない。それなのに、何の衝撃も無く滝の裏に入って行けるのである。つまり、
「幻影か!?」
そして、基地の場所というのも、俺の予想通りなら、滝の裏側!
「……その通り。そして、ようこそ我らが【ブエナビスタ秘密基地】に」
そこは、天然の鍾乳洞だったのだろうか? 奇岩の多く見られる外周部を百メートル程も進むとアスファルト敷の道路に替わりその奥には百メートルはあろうかという巨大なコンクリートの柱が何本も天井を支えている。そして、その周囲に建物が幾棟も建っている。その周囲には、訓練中だろう人影も多く、凄い数の人が居る気配がしている。
「まるで、ジャブローだな……」
「邪武郎?」
「この施設は、元々巨大なドラゴンが棲む住処だったそうです。それを退治したのが、先程銅像をご覧になったノラ○ロ様です。かの御仁は住処から出てこないドラゴンを住処ごと巨大な炎魔法で焼いたと言われております。そして、残った鍾乳洞の外壁が高熱でとても丈夫になったことを確認したお付の賢者様がこの地を人の住む地にすることを提案したのだそうです」
「……元々は外の滝もその時の攻撃によって出来たものだそうだ。元は上街の所は川が流れ込む湖になっていたそうだが、その時の攻撃で海に繋がる大滝が出来たということだ。滝壺が深くえぐられた為港湾設備としても都合の良い港が作れたことも発展に寄与している」
そんな凄まじい攻撃魔法がこの世界にはあるんだな。テケ車とか、マグダランとか、ああいうのが仲間なら滅多な事は起こらないだろうと高を括ってたけど、やっぱり物騒な世界なんだろうな、ここも。
「ともあれ、ようやく到着でありますな。吾輩は帰還報告をしてくるでありますから、こちらで御免!」
そう言ってテケ車の砲台から顔を出していたレイジィは、テケ車から飛び降りると、付近の建物へと走って行った。
「……帰還報告は、一番下っ端の仕事。現在は同階級のマロン、メロンの方が先任である為レイジィが行っているが、本当にノーラが我が隊に入隊するならば次にこの仕事をするのは貴様になる。覚えておくといい」
ふむ。そういうシステムがやっぱあるんだな。ムサイ男共の言う事を聞くのは業腹だが、美少女たちの下働きならある意味御褒美、ゲフンゲフン!
「とりあえず、ノーラさんは入隊手続きが先やで! また代筆してあげるから一緒にいこ!」
「今度は間違えないでくれよ」
ぴーぴーと鳴ってもいない口笛を吹いてごまかそうとすんなや!
◇◆◇◆
と、いうわけで、入隊手続きの窓口である。
「取りあえず、入管の方から話は聞いてる。何でも凄い数のスキル持ちになる可能性を秘めた麒麟児がやって来たとか、すんごいテンションだったぞ」
「いやいや、俺なんかそんなぁ~」てれてれ
「ノーラさんは凄いんですよ! 【大森林】の魔獣、ウサ大将を一人で武器も持たずに何羽も倒していたくらいですから!」
あれって、そんな名称があったんだ。美味かったもんな。ウサ大将。
「ほほう。あれは討伐出来れば兵士として一人前という物差しになるような魔獣だ。それを素手でとは、なかなかどうして素晴らしい。これなら直ぐにも出世して吾輩など超えてしまうかもしれんな?」
と、宣うランカー上等兵。ん? ランカーって?
「もしかして街門で会ったランカー氏って?」
「うむ。吾輩の弟であるな。本当は非番であったのだが、弟が凄いテンションで『今から凄い麒麟児がそっちへ入隊手続きに行くから』と連絡を受けてな。変な輩に目を付けられては大変と思ったのだろうな。と、言う訳で秘密厳守で受け付けてやるから、あっちの個室で話をしようぞ。そちらのメロン嬢もいっしょにな」
うーん。人の情けが染み入るぜ!
ともあれ、いよいよ入隊手続きか。運命の決断。大丈夫か? 俺!




