2.君に出会えた奇跡!
<異世界転移三日目>
ギロチンチョークでこの森に来てから4匹目のウサギを仕留めた所、
【パラパパッパッパッパー♪】
という音楽がどこからともなく聞こえて来た。とはいえ、現状どうすることも出来ないので、取りあえずスルーして夕食の準備である。
既に慣れてしまったたき火の用意の後、獲物のモモ肉をそこらに生えてた香草と炙っていると、
ガサガサっ!
と、木々をかき分けて何かが出てくる気配がした。何事か! 感じとしては、ウサギよりも大きな気配。あれより大きな動物、熊とかとなると俺の手にも余る。やっべーっ! と、警戒していると、またしても、
ガサガサっ!
と、すぐ傍で木々が揺れる。そして、遂に音の主が現れた。
それは……
「すんげー美少女」が、小汚い恰好で俺の目の前に転がりこんで来た。
もう一回言うぞ!
「すんげー美少女」が、小汚い恰好で俺の目の前に転がりこんで来た。
遂に、第一次異世界原住民との接触。しかも、いきなり美少女とか、ひゃっほーい♡ テンション上げ上げぇぇぇぇっ!
薄い青の髪の色、意外に長い髪を後ろで束ねただけのもっさい髪型でありながら、それが魅力をスポイルするどころか、顔だちの美形さをより強調していて、眼福である。大きく見開いた瞳の色も澄んだスカイブルー。そして、何よりも目を引くのは、シェパードのような犬耳! そして、ふっさふさの尻尾がふるふるしてるのとか!! もう、レアリティに星3つ付いた獣人さまである! もうそれだけでもごちそうさん! って感じなのに、更に更に、俺好みの小柄なボディに服の上からでも良くわかる程の二つの胸の膨らみは(推定G以上!!)何でもできる証拠なの♡ (特にパイ○りとか希望!) 歳の頃は十六、七といった所か?
身なりは、粗末なカーキ色の薄汚れたタンクトップが、おっきなパイ乙をチョー強調していて、同色のズボンと腰に巻いたポンチョいう色気の無い服装のギャップ萌え狙いらしい。実際よく見ると、かなり小汚い上に、体臭もかなり匂う。だが、そこがいいっ!
俺的にはかなりツボで、直球どストライクである。是非ともお近づきになりたいわぁ!
と、思っていた所、むこうからファーストコンタクトを図ってきた。
「おなかペコい~」 ぐぎゅるるるるら~
どうやら、今夜は俺、モモ肉はお預けになりそうだ。とほほ。
◇◆◇◆
ハグハグ、もぐもぐ、ごっきゅん!
青髪の美少女にたった今ドロップしたばかりのウサギのモモ肉を炙って提供したところ、それだけでは足りなかったようで、両手を広げてすんげーいい笑顔でおかわりを催促された。仕方ないので、パンの木に生えていたコッペパンをバッグから取り出した。
三個目を食べ始めたところで、生暖かい目で見ていただけの俺も一つ自分で食べ始めた。少女はそこで喉につっかえたのか、顔を赤黒くして苦しみ始めた。そこらの木に生っている果実を取って水分を補給していた俺は水場をまだ発見できていなかったため、只背中をさすってやる位しかなかったのだが、何かを見つけるや、すっくと立ち上がった彼女は、突然近くに生えていた竹藪に突進すると、手にした大振りの鉈のようなもので竹を斬りはじめた。
すわ! ご乱心!?
俺は、前田○明が日本刀趣味に目覚めた頃、休みの日に近所の竹藪で竹を試し斬りして回り近所の人に胡乱気な目で見られていた、という心温まるエピソードを思い出してほっこりしてしまった。
どうやら、水分を求めているのだという事は判ったのだが、竹を斬って水を汲みにでも行く気であろうか? 随分と気の長い話だと、生暖かい目で見ていると、斬った竹からざばざばと水が出てくるではないか! 竹の節から節までの間に水分がたっぷり詰まっていたのか、節のすぐ下辺りから斬った竹からその水をこくこくと飲み始めた。
そんな水分補給法があったのか! 昨日から水を飲みたかった俺は少女に鉈を借りて俺の分を確保すると横で一緒に飲み始めた。
ん!? あまーい!
竹の中に入っていた水は、只の水ではなかった。ライチのようなほのかな香りがしていて、しかも、僅かに塩気もあるのか、なんか熱中症にも良さそうな感じであった。ソルテ○ライチを水で少し薄めたような味で非常に俺好みの味である。この竹といい、コッペパンといい、そのまま商品になりそうな食材が簡単に採れることといい、何なんだろうね。この森?
ごくごく、いずれにしても、丸二日ぶりに水分補給出来たのは僥倖であった。
「「はぁ~」」
ひと心地付いた俺達は二人並んでまったりとした時間を共有していた。こうして並んでいると長年連れ添った熟年夫婦のような、全て分かり合えたような、心地いい時間の共有が……
「え~っと、どちらさま~?」
どうやら錯覚だったようだ。
散々飲み食いしといて、そりゃねーよ!
※ギロチンチョーク
プロレスラーの対バーリトゥーダー迎撃用技。マウントを取った状態で二の腕を使って気管を圧迫する技。プロレス的には反則技である。
※前田日明の刀趣味
本文中のエピソードは実話である!?
この話を聞いた時、筆者はマジで噴いた。