1.異世界よいとこ!?
新作です。
はじめましての方は、はじめまして。
常連の方は、いつもご贔屓にありがとうございます。
しばらくご無沙汰していましたが、こんな悪巧みしていました。
昨今色々なストレスで現在の連載が続けられず、読者諸兄にはご迷惑をおかけしております。今回はなるだけストレスフリーで連載できるよう色々と実験的な要素を付加しておりますので、とりあえず目標は「続けられる」ことを目標にがんばってみたいと思います。
とりあえず、一話当たりは短いです。
こんな感じではありますが、お楽しみ下さい。
ご意見ご感想などいただけましたら幸いです。
今作品、決まっていないことが多いのでフィードバックの余地は大きいです。
<異世界転移二日目>
オラおっ死んじまったダァー♪
オラおっ死んじまったダァー♪
オラおっ死んじまったダァー♪
異世界に転生したダァー!
と、いうわけで神様に会ってチートい能力を貰ったという訳でもない俺、野浦義経(38)は、とりあえず、転生先の森の中を堂々放歌しながら歩いている。手持ちの小さなバッグを背にしょって、森の中で気が付いてから丸々一日こうして歩いているが、木々と小さな虫位しか会わない。
たしか、秋川のほとりで一人BBQを堪能してた筈だ。鮎の塩焼き! 思わぬ大漁にその場で焼き魚にして食って、ついでにしこたま買いこんだビールで飲んだくれて、眠くなって、その場で寝こけていたはずだ。
もしかして夢見心地の中で聞いたサイレンの音、あれって、増水の合図だったんじゃないかな? と、思っても今更である。
どうやら冷静に考えてみると、天候の急変による増水に巻き込まれて流されたということだろう。まあ、もうその場で死んでもいいやと半ば考えていたし、そこで命を落としたと考えて間違いないだろう。ところが、気が付けば全くの無傷。それどころか、濡れてさえいない。挙句、川の見えない森の中ときたもんだ。
無事なことに気が付いてから、森の中を彷徨って二日目である。それだけなら山の中で遭難しちまったのかとも思うが、あるはずの電線も無ければ、舗装された道路も無い。代わりに見た事も無い生き物やら、植物などなど、こうもいろいろと現実にここが地球ではないという証拠を見せられては認めざるを得ない。
たとえば、パンの木というのがある。クワ科の常緑高木で、熱帯地方に生育する樹木であり、実は食用にもなるという。しかし、あれは無味で焼いたり煮たりしないと食べられたものじゃなかったはずだ。しかも、まずい。しかるに、目の前にあるこの木に生っている実は一体何だ?
どう見てもコッペパンである。
木からもいでみた。味見もしてみた。塩気があってウマー!
普通にコッペパンの味である。やわらかでもちもちである。
この時点でまあ、地球の植生でないことは明白である。取りあえず全ての実をもいでバッグに詰め込んだ。
そして、この森に住む生物たちの珍妙さ。
二足歩行する生き物が多すぎ! 猪、ウサギ、キツネ、タヌキなど、軒並み遭遇した生き物は二本の足で立っていた。
最初に遭遇したのは二足歩行する野ウサギだった。
体高は一メートル程であろうか? 片目を失ったやさぐれたウサギだった。
いきなり、ジャンプしたかと思うとライダーキックを喰らわされた。
吹っ飛んだよ! 三メートル程。
いい所に貰った所為で俺の闘争本能に火が点いたぜ!
俺はこれでも90年代の活字プロレス全盛期を生き残った猛者だぜ! 俺に言わせれば、その時代のプロレスファンってのはある意味【世界最強の民族】である。日々強くなることだけを考え、ただひたすら技術革新を続ける毎日。それこそ、24時間プロレスの事だけを考えていた純粋な魂の持ち主。他人からはウザがられ、貶され、
「プロレスなんて八百長じゃねぇ?」
と、蔑まれ、笑われても、それでも折れなかった鋼の魂!
真の益荒男がその時代にはいくらでも居た。
そして、俺もそんな漢たちの端くれであった。
ウサギごときに遅れを取るものか!
瞬発力といい、キレといい、流石は野生の動物だが、いかんせん軽い。精々30キロって所か? 俺からしたらカモだな。
ぺっ!
唾を吐きながら二度目のライダーキックをウサ公が仕掛けてきた所、足をフンづかまえて回転しながら地面にびたーん! びたーん! と何度も叩き付けてやった。
往年のテレビドラマ「チャ○ピオン太」の必殺技「ダブルノックダウンQ」が炸裂!
まさか、こんな技を実際に使う機会があるとは思わなんだが。
それにしてもウサギとガチ格闘戦するとか、俺、トサカ先輩か!?
やがて、完全に沈黙したウサ公は突然光を放ち消滅した。
後に残ったものは、小さな宝石の様な物と、手羽先のような肉であった。
「な、なんだこりゃ!」
と、独り言ちたのが切っ掛けだったのか、いきなりヘルプの吹き出しみたいなものが件の手羽肉の隣に出現した。
「ウサギのモモ肉」
うん。そのまんまだった。
その後、スタッフがおいしくいただきました。しかし、死体が残らずドロップ品が残るとか、ゲームかっ!
幸い、愛用のジッポは無事だったのでたき火を熾して、適当に炙って食った。それだけで塩も何も無しだが、ジューシーで美味かった。
しかし、いきなり予備知識も、心の準備も、チュートリアルも無しの異世界生活スタートとか、ハードル高けぇよ! それとも、無手でも簡単に獣を狩れた所を見ると、この世界自体はイージーモードなんだろうか?
これらの事件の考察結果、俺が今居る場所が地球ではないなと判断できたわけであるが、いかんせん人がいない。食うには困らないし、俺はどこでも寝れるタイプなので、生活自体は問題ないが、何しろ寂しい。
俺は寂しいと死んでしまうタイプなのだ。ウサギさんなのだ。つまり、共食いなのだ。
さみしいよー!
と、言う訳で冒頭のような鼻歌でも歌ってなければやってられないのである。
異世界良いとこ 一度はおいで♪
酒は旨いし おねぇちゃんは美人だ♪(注 未確認)
ひゃ! ひゃ! ひゃっほーい❤
※90年代の活字プロレスファン
この世で一番敵に回してはいけない人種。ある意味世界最強の民族というのは筆者の本音である。
一日24時間をプロレスを考える為に使い、人体を破壊する方法を常に考え続ける。その実践の為に体を鍛え、口では、あらゆる手段で理論武装する。そして、何よりも、ウザい!