第1話 悪の怪人・ミナ☆ゴロシー!
気まぐれに更新をしていきます。のほほーんとした感じでいきます。気が向いたらお付き合いくださると幸いです。
おはよう。
こんにちは。
こんばんは。
ご機嫌よう、みなさん。
自称・ヒロインの……本名はシークレットで。メアリとでも呼んでください。
こんな女が突然出てきて、びっくりしてらっしゃるかと思いますが、まあ、しょうがないでしょう。なぜか、ヒロインではなく、私目線から、“戦隊ヒーローたちの日常”が描きたいという酔狂な人間がいたので。
えーっと……あ、そもそも、お前、ヒロインじゃないなら、誰だよ、とお思いの方がいらっしゃるかもしれないので、先に、私に与えられた役割、立場、スペックなどもろもろのことをお話しておこうかと思います。
……その前に、作品説明が必要ですかねぇ。
一言で言うとアレです。
“日曜日の戦隊ヒーロー”
コンセプトは
“今までとはひと味違う作品”
そうは言っても、主にターゲットにしているのはお子ちゃまたちですから、物語自体は、歴代の戦隊ヒーローものと大きな違いはないんですけどね。
そして、私は、世界征服を目論む悪の怪人、ミナ☆ゴロシーという、聞いてるだけでイラっとするふざけた名前をつけられてしまった集団の一員であり、実質的なナンバー2、という設定。
何が一番イラっとするかっていうと、コレですよ。星マーク。
まあ、お約束というか、なんというか、このミナ☆ゴロシー(重要なことだから、もう一度言っておきましょう。イライラすることこの上ないです)……この集団は、女は私だけで、後は、全員男です。
うわー。いいなー。逆ハーじゃん!
……なんて思った方、よく考えてみてください。ヒーローたちは、変身しても簡易的なスーツです。さらに言うなれば、普段は、ちゃんと人間のまともな格好をしています。しかし、悪の怪人って、お約束のように趣味が悪い。
顔を覆い隠す、鈍い色した、ガッタガタな形のお面だとか、鎧を不格好に崩したものだとか、わざわざ、人間からはかけ離れた姿をさせられているのです。それは、制作側の人間に指示されてのことなので、仕方ないと言えば、仕方ないのですが……。
あんなのに大勢囲まれたところで、萌えるわけないでしょう。
ってか、絶対に、ヒーローたちのスーツよりお金かけてるでしょ。お金かけてまで、わざわざ、不格好なものを作る心理が理解できないわ。こっちもスーツでいいじゃないの。
……あ、服で思い出した。もうひとつ、もの申したいことがある。
私のまわりの男たちは、全身──顔までも覆ってしまっている人が多いのに反して、釣り合いでも取ろうとしたのか、はたまた、経費削減のためか、私の衣装の布面積が極端なまでに少ない。
ノースリーブの黒い皮製の上着は、丈がちょーちょーちょーっ短く、おっぱいが下三分の一ほど見えていて、そのため、もちろん、下着は無着用。……ああ、このためのHカップ設定だったのか、と呆然としたのを覚えている。――あ、あくまでも、子供向け番組のため、ポロリとかは間違ってもナイ、です。これを初めて見た時、相当ビビりまくっていましたが、どんな動きをしても、決して見えることはありません。もちろん、制作側の都合です。
さらに、下は、おへそのちょうど下から、裾は超短いスカート。……ご安心を。こちらも、チラリはしません。肉弾戦ではなく、魔法使い設定だったのは、ポロリ、チラリ予防だったのですね。とは言っても、今流行りの魔女っ子アニメではないので、魔法使いと言えども、そんな可愛らしいものではないのですが。
で、その下は、ガーターベルトのロングブーツ。…………私、着ぐるみじゃダメだったんですか?
一体、戦隊ヒーローの悪役に何を求めたのでしょうか。
日本政府が、“青少年の教育上悪い”とされるものを片っ端から排除していっている、今日この頃。こんな卑猥な格好をした女が、国民の大半がお休みをいただく日曜日の、しかも、朝っぱらから、テレビに映りこんでていいんですか!? しかも、その番組は子ども向け番組!
日本政府のお偉い様方!
これは、由々しき事態ではないでしょうか!?
………………
…………
……ふう。これで、私の衣装の布面積が少しでも増えてくれると嬉しいのですが。
もう、歩くたびに、まわりから視線が突き刺さって、痛いのなんのって。もう、泣きそうにもなりますよ。夜な夜な、男たちのオカズに自分が使われているんじゃないかと思うと、部屋に一人で閉じこもって、ネットの世界へと旅立ちたいくらいです。
この悪の集団(もう、名前は言いませんよ)は、自分たちが趣味の悪い格好、痛い格好をしていることの自覚があるのに、自分たちではどうにもできないという苦悩、不満を抱えた同志でもあるわけです。
テレビの中では、度々、内輪もめだとか裏切り、見捨てるだなんてことが起こっていますが、実は、すごく堅い絆で結ばれており、週一での撮影の後、みんなで制作側へ衣装改善を求め、抗議する時なんかは特に、これ以上ないほどの団結力を発揮させます。へたしたら、ヒーローたちよりまとまりがあるかもしれません。時には、ボイコットを起こしたりもしたのですが、残念ながら、我々の要求が制作側に通ったことが一度たりともありません。
萌えるか萌えないかはさておき、そんな絆の堅い仲間の中、女が一人まぎれていたら、うっかり間違いが起こっちゃったり、それこそ、ヒロイン的扱いをされているんじゃないかと妄想する方もいらっしゃるかもしれませんが……。
そもそも、ヒロインというものは、ヒーロー(主人公・英雄)の女バージョンという解釈です。なら、私は、ダークヒロイン、アンチヒロインと言われるものじゃないか、と仲間がぽつりとこぼしたのですが、これも違います。ネットで調べてみたので、間違いありません。
ダークヒロインもアンチヒロインも同じ意味なのですが、これもまた、ダークヒーロー、アンチヒーローの女バージョン。ネットでは、長々と詳しく説明していたのですが、私の理解が間違ってなければ、要約すると“王道からずれたヒロイン”であり、あくまでも、ヒロイン的に描かれていなければならない。
ということは、ヒーロー側にいる、唯一の女の子であるあの子は、アンチヒロイン、ダークヒロインと言えるでしょう。
ダークヒロインの“ダーク”は、闇という意味でも、悪という意味でもない!
私の場合、ただの露出狂じゃないか!
もうひとつ言うとすれば、私たちは、あまりにも仲間意識が強すぎて、男、女という意識がない。……回りくどい言い方をしてみたけどね、ようは、私、女として見られてないの! だから、ヒロインどころか、オンナという言葉すら当てはまらない。なんということでしょうか……!
考えていると、どうも虚しくなってしまいます。
……考えるだけでも虚しいので、そろそろやめにしましょう。私がどんな人物かは、おわかりいただけましたよね。語れ、と言われたら、まだまだ、語れますよ。もう、不満だらけですもん。……あれ。これ、語るというより、愚痴ってるだけですね。
まあ、それは、おいておいて。“ヒーローたちの日常”をのぞきたいという話でしたよね。ヒーロー側はどうなっているか知りませんが……私たちが日曜日の朝以外は何をしているかをお教えすればいいんでしょうか。
先ほど、話にも出てきましたが、日曜日は、唯一、制作側の方たちとお会いできる機会ですので、撮影が終わると、できる限り、私たちの不満をぶつけ……いえ、抗議します。現場を追い出された後は、一週間分の食料などの必需品を買い溜めして、本拠地に戻ってくるっていうのがいつものパターンですかね。
撮影以外は基本的に自由行動です。しかし、見た目がすごいだけあって、悪目立ちしすぎるので、みんな、外出を好まず、だいたいは本拠地にいます。
そのうちの一日、撮影前日は、朝から会議をします。自由参加なのですが、出席率はほぼ100%です。議題は、もちろん、私たちの不満などをどのようにして、制作側に訴えかけるかです。そこでは、撮影の日から、会議の日までの間に考えた案やら、自分の理想とする衣装案、理想とするグループ名の提出、悪の集団改善に関する署名などが提出されます。
街頭で、一般人に対して、署名活動に協力を求めた強者がいましたが、たいした収穫はゼロで、それからは、自分たちで署名して提出しています。
一週間のほとんどを自分たちに対する処遇の改善に費やし、涙ぐましい努力をしていますが、なかなかに思うようにはいきません。ほんっと、世知辛い世の中ですねぇ……。