第58話 転移の魔術師
戦闘の音は、離れている村の端からも聞こえた。
俺は雨の中、リエラを背負って村の中心へ向かっていた。
リエラをどこかに放置なんてしておけない。
傍にいるのが一番安全という結論に、ごく自然に行き当った。
目に届くところにいないと、いつまたイランに拉致られるかわかったものではないからな。
しかし、重い。
体重云々ではない。
八歳児が八歳児を背負って移動することに無理があるのだ。
村の端から端まで一キロはあるプロウ村を、とぼとぼと背負って歩くのは無理があった。
魔力がないと、背負って歩くだけでも膝を折りそうになる。
それでも下ろすことはできない。
意地だ。
負けてなるものか。
一向に目覚めないのも気になった。
失った血は治癒魔術で回復しているはずだ。
長くとも一時間で起きてほしい。
いまのところ、リエラを背負って師匠の戦いに口を出す気はない。
村を探り、魔術師がどこかに隠している魔力の根源を破壊する必要があるからだ。
それが異常な数の魔物を村に引き寄せているのだし、この大規模な魔力無効化エリアも、発動に莫大な魔力を使っているはずなのだ。
魔力を遮断するのに魔力で起動とか矛盾するかもしれないが、師匠に言わせれば発動と効果は別物、ということらしい。
村の中央に辿り着いた。
魔力を辿るような方法はできない。
遠目から監視していて、イランがよく寄っていた家屋に侵入してみる。
「ふむ……」
いまだ意識の戻らないリエラを椅子に座らせ、何の変哲もない部屋を調べた。
二部屋あり、奥の二部屋は寝室と書斎だった。
特に珍しくもない。
気になったのは、奥の二部屋は使われなくなって久しいのか、埃が白く積もっていたことだ。
「よく出入りするのに埃……」
まあ普通に想像がつく。
カモフラージュの家。
ここからどこかに通じる道があるのだ。
リエラを座らせた部屋に戻り、床に敷かれたカーペットをめくってみた。
「あらやっぱり」
円形の木の蓋があった。
ベタすぎて面白みに欠ける。
手をかざしたら壁が消え去ったり、物を動かすことで通路が開いたりしないのだろうか。
しないのだろうな。
この世界の人間には浪漫が欠けている気がする。
リエラを背負い直し、縦梯子を下りていく。
困難だったが、しばらくすると足が床に着いた。
発光石が床に等間隔で置かれているので、足元の心配はいらなかった。
魔術師がやりそうなことだ。
実益主義で面白みの欠片もない。
しばらく歩くことになった。
行きついた先に扉はなく、開けた円形の空間に出た。
中央に魔方陣が描かれている。
「ああ、もう。こんな簡単に」
魔方陣は赤く発光している。
魔方陣の至る所に紋様が描かれ、増幅器らしき杖と魔法石が四方に刺さっている。
俺はそれを蹴飛ばした。
発光が強くなり、ゆっくりと消えた。
体に魔力が戻ってくるのがわかる。
「こんな簡単でいいのかな……」
魔力無効化は解除したが、魔物を引き寄せるという魔力源も探して壊した方がいいだろう。
また魔物をけしかけられてはたまらない。
魔術師がどんな研究をおこなっていたのか結局わからずじまいだが、いまはリエラと自分、師匠の安全が第一だ。
持ち運びができたところで、魔力の塊は良い使われ方をしないだろう。
奥へ行く。
途中で魔力障壁に阻まれた。
この先には何かしらのアクセスが必要なのだ。
しかしその手段が俺にはない。
壁を壊して新しく道を作ってみようとしたが、うまく魔力が通らない。
魔術師対策も万全らしい。
別の分かれ道には『迷宮百階層入口』という看板を見つけて、男子として心くすぐられるものがあったが素通りした。
結局収穫はなく、俺は地上に戻っていた。
ただ帰るのも癪だから、この家の持ち主に嫌がらせをしてやろう。
泥水を大量に生み出し、梯子の続く穴へと流し込んでいく。
いっぱいまで埋まったかな? と思ったところで硬化をかける。
蓋一杯まで土で埋めてしまう。
リエラを背負って外に出ると、少し離れた別の軒先に入った。
そこから魔術師の隠れ家に向けて爆風を放つ。
家ごと吹き飛ばすと、そこを更地にしてしまう。
植物なんかも植え替えて、途中で拾ってきた魔封石を適当に埋めて回る。
これで地下を探すのが難しくなった。
魔力を辿ろうにも魔封石に邪魔をされる。
嫌がらせとしては最上級ではないだろうか?
自己満足しつつ、師匠の元へ向かうことにした。
この勝負、俺たちの勝ちだ。
そう思っていた時期が俺にもありました。
満身創痍の師匠が、魔物の群れに囲まれている。
囲まれているといっても、大半はボロ屑のように死体として散らばっているので、師匠が自分に与えられた傷の何十倍もやり返していることが窺えた。
それを遠目に、魔物を使役する魔術師が立っている。
風が吹けば今にも倒れそうな痩身の青年だ。
研究一筋で後は知ったこっちゃないと言わんばかりのふてぶてしさがある。
俺はリエラを安全な場所に隠すと、足音と気配を風の魔術で消した。
なるべく魔力も抑えて、移動する。
正面から打ち倒すのも憧れるが、元凶を取り除くなら暗殺が一番適している。
背後からの急所への一撃。
それですべてが終わるなら、俺は躊躇わない。
屋敷での最初の殺しが思い出される。
不意の急襲で水魔術を鋭利なカッターの様に繰り出し、暗殺者を返り討ちにした。
あのときは無我夢中で、威力なんか制御できなかった。
しかし今度はうまくやれる。
水の魔術を超高圧縮し、背後からの超至近距離攻撃で、すべて片が付く。
俺は雨音に紛れて、ゆっくりと魔術師の背後に近づいていく。
気持ちは乱れていない。
呼吸も落ち着いている。
心臓だけがバクバクうるさい。
手も震えてる。
足もガクガクする。
あ、目がくらくらしてきた。
つんと鼻の奥が痛い。
ず、頭痛まで……!
ああ、風邪の初期症状みたいだ。
狩りをするときと一緒だ。
人と獣の命の取り合い。
それが人と人に置き換わっただけ。
それが難しいんだよ、と自分にツッコミを入れる。
でも殺人者の技能で同族への殺意を軽減しているはずなのだ。
大丈夫。いける。
背中が近づいてきた。
呼吸を止める。手に集中。
手を魔術師の背中にかざす。
殺る!
水圧レーザーを打ち込んだ。
ローブのど真ん中を貫いた。
「やった!」
「いや、やってないし」
横手から声が聞こえた。
振り向き様に詠唱が聞こえた。
咄嗟に土壁を出す。
同じ水圧レーザーが飛んできて、土壁をいとも容易く貫き、俺の真ん中に直撃した。
「くっ、ぅぅっ!」
激痛が走る。
油断が招いた結果だ。
水圧レーザーは体の真ん中を貫き、俺は呼吸が止まった。
仰向けに倒れながら、やっぱり人殺しは苦手だ、と思った。
「ソウスケ……」
師匠の声がする。
その師匠の声も苦しそうだ。
魔物を相手に大立ち回りしている。
魔物が木端微塵になったり、原型を留めないほど潰れたりしている。
師匠相手には力不足だ。
しかし魔力無効化の間に傷を負った分が後を引いているのか、全身が傷だらけだ。
俺の意識が途切れそうだ。
土壁が崩れる。
その先、魔術師は離れたところに立っていた。
「いまのはやばかったなあ、不意打ちなんて。転移が勝手に発動しちゃったじゃないか」
「チートだ……」
自動発動の魔術なんてずるすぎる。
それじゃあいくら狙っても当たらないじゃないか。
「当たらないと思ってるでしょ? そのとおり。ふふん。この魔術は自信作なんだよね」
「そうか。では実験してみるかのう」
魔物をすべて屠った師匠が、俺の前に立ち、魔術師と相対した。
「ソウスケ、死ぬほどの大怪我か? 大丈夫かの? わしは治癒魔術が苦手じゃから治せないが」
「だい、じょうぶ。封魔石を、腹に仕込んでおいたから」
俺は反転して仰向けになる。
腹のローブを開いてみると、封魔石を詰め込んだ袋に穴が開いていた。
水圧レーザーはこれで消失したが、衝撃は丸ごと腹部に当たり、呼吸が一瞬できなくなったのだ。
「なら平気じゃの。魔力を戻してくれたこと、感謝するぞ」
「気にしないで。師匠の活躍するところを間近で見たかったから」
「ならば存分に見せてやろうかの。エルフの魔術を」
師匠は両手を広げ、魔力を全開で放出した。
「エルフが本気ですよ。勘弁してほしいわあ。だいたいそっちの子供、イランが嫌ってる魔術師の子でしょ? なんでここに来てるのさ。イラン殺っちゃったの?」
「殺っちゃいました」
ウソです。
「嘘でしょ。だって向こうにイランの魔力が感じられるもん。というか不意打ちも魔力でバレバレだったけどね」
「さっきやばいとか言ってたじゃん」
「バ、バレバレだったからねー、ぴぴゅ~♪」
口笛を吹いて誤魔化している。飄々としているところとか、気が合いそうだ。
「では、準備ができた。参ろうかの」
師匠の体がゆらりとぶれる。
魔力の濃さが、空気すら歪めている。
師匠が手をかざした。
風のハンマーが魔術師を狙う。
魔術師が転移で避ける。
しかし続けざまにハンマーが襲う。
魔術師は転移で避ける。
ハンマーが襲う。避ける。襲う。避ける。襲う……。
その繰り返し。
一秒に三回は転移とハンマーを繰り返している。
目の回るような攻防。
しかも師匠の一方的な攻撃だ。
ボボボボボッと、音が途切れず聞こえてくる。
「ちょっ、まっ、てっ、こっ、れじゃっ、しゃべっ、れっ、ないっ!」
魔術師が何か言っているが、転移しながらなので音があちこちから途切れ途切れに聞こえてくる。
「どうしたどうした。まだ余裕そうじゃから、更に追加するかのう」
風槌に加え、水銃に炎鞭、礫雨が魔術師を襲う。
四つの魔術を同時に展開すること自体、人間魔術師にとって反則に近い。
魔術師の体に傷ができ始めた。
ローブの端が燃え、頭から水をかぶり、身体に痣を作り、ふらふらしている。
それでも避ける、避ける……。
「撤退!」
魔術師が叫ぶ。
「させるものか」
師匠が飛び上がり、森の方へ消える。
「頂上決戦か……」
残された俺は、雨に打たれながら言わずにはいれなかった。
自分に治癒魔術を施し、ゆっくりと起き上がる。
魔術師にとっては、魔力無効化を解かれた場所にいつまでも居続けるメリットはないのだろう。
魔術師として十分に強いが、エルフと比べると流石に霞む。
それに「撤退!」とか叫んでいたが、師匠から逃げられるとは思えない。
俺はよろよろと歩き、リエラを迎えに行った。
家屋の中で、リエラはまだ眠ったままだ。
穏やかな寝息が聞こえてくることに安堵を感じる。
リエラを担ぎ、家屋を出る。
師匠が追い詰めるのを待って、どこかに隠れていたほうがいいだろうか。
魔術師の拠点も潰したし、村には魔物がうようよいて戻る気になれない。
師匠と合流して、このままエド父娘のいる領主の街を目指すしかないだろう。
思案する俺の目の前に、急に人が現れた。
地面に膝をつき、肩を上下させている。
体中ボロボロで、憐れみを誘う。
「も、もう降参!」
ぜえぜえと喘ぎながら声を発したのに、彼は吹っ飛んで仰向けに転がった。
師匠が風の槌をぶつけたのだ。
「げ、げふぅっ……も、もう魔力残ってないから。戦えないから」
よろよろと両手を雨雲に向けるが、それを聞き入れてやるほどお人好しではない。
魔術師の頭上に頭ほどもある大きさの礫が流星のように降ってきた。
彼は悲鳴を上げて転移し、礫をなんとか避ける。
避けた先は炎に包まれ、聞くに堪えない悲鳴とともにまた転移する。
俺はその間、リエラを屋根のあるところに下ろした。
師匠が俺の隣に立つ。
「魔力が残ってないと言っていたのは嘘じゃのう。人族はすぐ嘘を吐くから嫌いじゃ」
かなり師匠の私怨が混じっていたが、この魔術師に対する態度は同感である。
隙を見せたら反撃に出てくる類の人間だからだ。
俺も狙おう。
水圧レーザーの照準を魔術師に合わせた。
そして放つ。
しかし師匠の魔術ごと、それらは斬り捨てられた。
「二対一とか卑怯すぎだぞ! 弱い者いじめだ!」
イランが折れた魔剣を構えて、魔術師をかばうように立っていた。
顔が赤く腫れて、髪も顔も服も泥だらけだ。
それでも転移の魔術師のために馳せ参じたのだ。
「おお、イラン、いいところに。これ以上やられたら僕死んでたよ」
「先生、思ってたよりも弱いんだな」
「いやいや! 途中までは押してたんだからね? 魔力無効化で閉じ込めて魔物に襲わせるところまでは完璧だったんだよ! どこかのおバカな生徒がやられて無効化魔方陣を壊されるような愚を犯さなければ勝ってたんだから!」
「先生、言い訳かっこ悪い」
「ああ! ずるいよ、そうやって責任転嫁するの! げふ、げほっ!」
血反吐垂らしながらもいつもの調子を忘れない魔術師は、意外と大物かもしれない。
「それで、二対二になったわけだけど、イランくん的にはこの状況をどう見るの?」
「超不利。悔しいけど勝ち目なし。オレの魔剣だってこの有様だ」
「そうか、奇遇だね。僕もそう思ってたところだよ」
なんだかんだで仲の良い関係を築いているのだろう。
こちらはこちらで、師匠と俺の意見は一致しているが。
「ソウスケ、わしは魔術師をヤるが」
「俺はもちろんイランをヤっちまいます」
お互いに顔を見合わせ、にやりと笑う。
「逃げることもときには必要だと僕は考えるんだ。命あっての物種って言うでしょ?」
「戦略的撤退ってやつだろ。依存はねーよ」
「じゃあ、僕の体のどこかを掴んで」
「わかった」
「ちょっと長い詠唱をするから、その間盾になってよ」
「いいだろう。やってやるぜ」
魔術師が何かを唱え出した。
俺たちはそれを最後のあがきと捉えたが、詠唱の完成を待つ義理はない。
俺は地面を巻き上げて、土石流を見舞った。
師匠は素早く矢を射って、そのひとつひとつに莫大な魔力を込めた。
触れた瞬間に爆発するやつだ。
イランは落ち着いていた。
折れた剣の届く範囲も短くなっている。
しかし彼は、嗤ったのだ。
「こい、こいよ! 全部叩き伏せてやる!」
土石流を切り裂いた。
飛んできた矢を一瞬で叩き落とし、魔力を魔剣で無効化した。
あの魔剣、もしかしたら封魔石で作られているのかもしれない。
「師匠、空気を奪います」
「ではわしは注意を引こうかの」
俺はイランと魔術師の周囲を炎で何重にも囲み、囲んだ中の酸素を一瞬で奪っていく。
師匠は炎の兵隊を作り出し、囲いから次々にイランへと仕向けた。
「がぁぁぁぁぁぁぁっ!」
イランが獣のように吼えている。
炎の中がどうなっているのか見えないが、爆発的な魔力を感じるから、イランが暴れ回っているのが容易に想像つく。
炎の兵隊を次々に斬り伏せ、炎の囲いにまで手が届くが、何重にもしてある。一枚二枚を剥がされたところで影響はない。
まるで悪役が主人公を追い詰めているようだが、気にしない。
悪いのはあっちなのだ。
詠唱が完成する前に、空気がなくなれば声も出せなくなる。
搦め手だが効果的だ。
じわじわと酸素を奪う。
俺は勝ちを確信した。
その瞬間、炎の壁が破られるのを感じた。
目を疑った。
炎の囲いを破って、折れた剣が飛んできたのだ。
それは俺を狙っており、仰け反って躱したが、気を抜いた一瞬だったのでやばかった。
空いた穴から空気が流れ込んでいく。
すぐに塞がったが、一呼吸には足りたはずだ。
「何が来ると思います?」
「ここにいる全員をどこかに飛ばすのじゃろうな」
「やっぱりそう思います?」
「転移の魔術師を名乗るのじゃ。狙ってくる相手ごとどこかに飛ばし、とりあえずの危機を回避する。そう考えるのが自然じゃな。得意な魔術を最後の切り札にしてくるじゃろうて」
嫌な予感がした。
「師匠、リエラを!」
「任せるのじゃ!」
気を失ったリエラに近いのは師匠の方だった。
俺の言葉に素早く反応してくれる。
俺は炎の囲いを一気に詰め、中にいるふたりを焼死体にする気で温度を上げた。
しかし、炎の中から魔力が一瞬にして消えた。
「ししょ――」
俺が振り返ったその瞬間、リエラの手を掴んだ師匠が消えた。
それだけではない。
家屋、木々、そういったものまで消えていく。
そして、俺もまた例外ではなく――
ぐにゃりと景色が歪む。
足元が急に不安定になった。
バランスを取ろうとしても、足元に地面がない。
上下左右がわからなくなり、景色が右から左に、映画のスクリーンの様に流れていく。
俺の手には誰の手も掴まれていない。
ひとりで不安になる。
俺はどこに向かっているのか。
海、空、山、町、平原、岩場、様々なスクリーンが流れていく。
そうして、俺は落ちた。
固い地面に叩きつけられた。
「ぐはっ!」
頬が地面にぴったりくっついている。
ここはどこだ。
全身を打った衝撃で痛みを感じつつ、起き上がろうとする。
しかし動かない。
全身が痺れてしまっていた。
うつ伏せの中、首も動かない。
目がチカチカする。
耳がジーンとして音も聞こえない。
唯一無事な嗅覚に、何かが触れてくる。
風に乗って鼻をかすめる異臭だ。
それも相当に強い。
気づけば鼻が曲がりそうな、顔をしかめてしまう臭いだ。
鉄と腐敗した臭い。
真っ白な視界に、なんとか視力が戻ってきた。
すると同じく寝そべっている人と目が合った。
あら奇遇。
地面のひんやりとした感じが心地いいですよね。
でもあなた、目玉がないですね。あれー?
それに顔が白いですねー。
ハエが口から出てきましたけど、気持ち悪くないんですか?
何も感じない? ああやっぱり! もしかしなくても死んでますよねー。
周りに目を向けると、倒れている彼の周りにも夥しい数の死体が転がっていた。
どれも武装し、苦痛に歪んだ顔をしている。
顔半分がない死体もある。
うげ……。
なんだ?
こんな場所は俺の記憶にはない。
見たところどこかの戦場らしいが。
風が乾いていて、気候が元いた村とは違った。
リエラは、師匠は、いったいどこに行ったのか。
俺は動かない体のまま、目だけを彷徨わせた。
ただ、死者の転がる景色を見つめることしかできなかった。
第一部 完
第1部完結です。
次回、第2部になります。
第2部ヒロインは獣耳です。
ミィナ「……にゃ?」
マリノア「な、なんですか? 人の犬耳をじろじろ見ないでください。恥ずかしいです……」




