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異世界旅行は落ち着かない  作者: 多真樹
第一部 幼年時代
51/204

第51話 エルフと討伐隊

 魔物とは違った微小な魔力を持つ集団が、大森林に足を踏み入れた。

 おそらく、ソウスケが口を酸っぱくして言っていた、自分(エルフ)を狙う討伐隊だろう。

 ニシェル=ニシェスは、ぶるっと震えた。

 人族が怖いのではない。

 怖い思い出が思い起こされて、嫌な汗が出たのだ。


 長寿とはいえ、怖いものは怖い。

 裸で見世物になったときの、自分を見下ろす目、目、目……。

 いまでも思い出すたびに嫌な気分になった。

 目が覚めた瞬間、ニシェルは半狂乱になって観客を街ごと吹き飛ばしたが、記憶に刻み込まれた嫌な思い出は拭い様がない。


 生き物自体の強さは大したことがない。

 魔物の群れと比べると、吹いたら消し飛んでしまうくらいに弱々しい魔力だ。

 彼らがこの森で長生きできるはずもない。

 ニシェルは、彼らとの接触をしないと決めていた。

 ソウスケに深く関わることで、人族はいろんな面を持つことを知った。

 中には理解し合える人族もいるかもしれないが、楽観的に考えられそうになかった。


 ソウスケは人族だが、信頼できる。

 だが人族のすべてが亜人族に対して友好的とは限らない。

 ニシェルは森を出てから人族の住む土地で起こったことを思い出していた。

 それはもう、穏やかとは言い難い歓待ぶりだった。


 大森林に入ってきた人族が魔物の洗礼を受けて生き残るかどうかは、知ったことではない。

 ニシェルは大霊峰に移動することにした。

 始めから決めていたことだ。

 人族から敵意を向けられたら、すぐさま拠点を移す。

 人族とは相容れない。

 もうソウスケとも会えないかもしれないが、彼が成長したら、自ら会いに来るだろう。

 再会を楽しみにしよう。


 ここ数カ月のうちで、大森林も静かになったものだ。

 金獅子をソウスケは倒してしまったし、廃村の魔術師がどうやら石化魔牛を捕獲して連れ去ったようなのだ。

 他にもソウスケと、手当たり次第大森林の魔物を狩っていった。

 今残っているのは、凶暴性の低い魔物か単なる雑魚でしかない。

 しかしそんな魔物にさえ、人族は苦戦するだろう。


 ニシェルはあっという間に森を抜け、大霊峰の垂直な崖を登った。

 まずは五合目あたりで体を鍛えようか。

 魔力の濃い土地で体を慣らすことによって、魔力槽は拡張し、身体強化にもつながる。

 人族のソウスケを大森林で鍛えたのは、そういう理由があった。

 それでも大霊峰は二合目までしか登ることを許さなかった。

 いくらエルフの自分でも、五合目以上は死を覚悟しなければならないだろう。


 四合目あたりの赤茶けた岩肌を上っていると、ニシェルの足元が突然爆ぜた。

 一瞬早く飛び退かねば、軽く足を吹っ飛ばされていただろう。

 攻撃を仕掛けてきたのは、岩と一体化した熊だった。

 岩石熊。

 地面が爆ぜたのは、そこに岩が途轍もない速さで飛来したからだ。

 神経が嫌でも研ぎ澄まされていく。


 大霊峰では、魔物を視認する前に殺されることもある。

 一時も気を抜けないのだ。

 ニシェルは音もなく地を蹴った。

 少し離れた場所に、ニシェルは立った。

 勝負はついていた。


 矢を三矢撃ち込んだ。

 向こうが先手必勝で来るのなら、こちらも似たようなことをするまでだ。

 岩の肌を貫いた三本の矢が、岩石熊を完全に仕留めていた。

 ゆっくりと後ろに倒れていく巨体に背を向け、五合目を目指して登りだした。





 しとしとと、葉を打つ音ばかりが聞こえていた。

 他には四十人近い足音。

 しかしその足取りは重い。


 冒険者の副リーダーを先頭に、討伐隊は大森林に踏み込んでいた。

 彼らの表情は一様に暗かった。


「……これほどとは」


 冒険者のひとりが呟いた。

 ベテランと呼べる風格の男だったが、その顔は絶望に彩られていた。

 先ほど遭遇した六本足の魔獣を倒すのに、四人の死人が出ていた。

 冒険者がふたり、農民がふたり。

 最初の遭遇でその犠牲は、安くない上に割に合わなかった。


 出会い頭に振り下ろされた六本足の魔物の腕に、為すすべなく農民が潰された。

 人とは思えない姿になって飛び散ったものを目の当たりにして、魔物を前にして吐く者すらいた。

 衝撃的だった。

 人の背をゆうに超える五メートル近くの体格に、振り下ろされる腕の強さ。魔物の動きが鈍いのだけが救いだった。


 所詮農作業しか知らない農民は、現れた魔物の異様さに一様に立ち竦んだ。

 六本のうち、二本は大地に立つため、二本は周囲の木々を掴むために使い、空いた二本が魔物の武器として振るわれた。


 かろうじて動けた冒険者が六本腕に飛びかかった。

 横に薙ぎ払われた鞭のような腕に、ふたりが木の葉のように吹っ飛んだ。

 折れるような、砕けるような音が聞こえたので、即死だったはずだ。

 十人が斬りかかり、突きかかった。

 それでも仕留めることはできず、魔物が暴れた拍子に農民のひとりが叩き潰された。


 なんとか倒したものの、最初から犠牲を出してしまい、討伐隊は暗澹たるものだった。

 死者を弔おうにも遺体が形を成していない。

 大森林の魔物の強さを完全に見誤っていたのだ。

 最初に遭遇した魔物は討伐レベルはBに届く、と冒険者は考えていた。

 自分たちはCランクの冒険者で、苦戦は必至だった。

 この大森林をねぐらにするエルフを討伐なんて、更に困難に違いない。


 奥へ奥へと進んでいく。

 足場は悪く、木の幹を乗り越えるのも一苦労だ。

 止まない雨によって、泥で足を取られ、木の幹は滑るのだ。

 こんな中で戦闘ができるとも思えない。

 冒険者のリーダーは撤退を考え始めた。

 しかし、判断が遅かったらしい。


「ま、魔物だぁ!」


 討伐隊の真ん中あたりから声が上がった。

 横合いから急襲されたようだ。


「リザードマンだ! 数は三十以上!」


 リザードマンと言えば武装した魔物だ。

 人間に勝る体格に、武器を扱う知能を持つ。

 それに戦闘意欲が高い。

 一体だけでも何人かで囲んで倒す必要があるのに、同数でぶつかれば全滅しかねない相手だ。


「くそっ! 退却だ!」


 冒険者のリーダーが声を上げた。

 農民はもう、武器を放り出して逃げ出している。

 冒険者がリザードマンに当たっているが、戦況を硬直に持ち込み、逃げる時間を稼ぐので精いっぱいだ。

 決死の思いで戦い、ある者は倒れ、ある者は押し返した。

 脳裏に浮かんだのは、楽して金儲けができるはずもないという一抹の後悔だった。


 討伐隊のうち、村に生還した人間は、十人に満たなかった。

 大森林に出発してから、ほんの三時間しか経っていなかった。

登場人物紹介第6弾


 名前 / イラン

 種族 / 人間族

 性別 / 男

 年齢 / 八歳

 職業 / 剣士


 武器・剣 / 魔剣ラウド+8

 属性 / 闇

 スキル / 魔力吸収 魔術を断ち、対象の魔力を著しく奪う。

       精神干渉・混乱 対象の精神に混乱を与える。

       気力減退効果 対象の気力を著しく下げる。


※アルからパクった。この剣で世界を取る気でいる。

 脅して奪ったもので世界とか(笑)


 装備・腕 / 風の篭手+5

 属性 / 風

 スキル / 風魔術防御・弱


※師匠からもらった武具。まだ装備できない。ぶかぶかなので。


 アルを目の敵にする村長の息子。

 成長したらキリっとしたイケメンになるだろう。爆発しろ。

 剣術だけで成り上がろうとする野心家。脳筋?

 成長したリエラは性奴隷にすると決めている。爆発しろ。

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