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異世界旅行は落ち着かない  作者: 多真樹
第二部 少年時代 四章 愛憎喜劇
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第102話 メイドは見た

 マリノアはアルが戻ってくると言った約束の三ヶ月の間、必死に勉強した。

 彼女を陰ながら見守っていたベレノア邸付きメイドにしてベレノア公の妾の獣人女性たちは、その根気強さに、愛情の底知れなさにいつしか応援するようになった。


 自分たちは、領主をそこそこに務めるベレノア公の妾であり、彼が無類の獣人スキーであるがゆえにその愛におんぶにだっこだった。

 正妻と子息が別邸にいるらしいがほとんど会いに行かず、領主邸でメイドを兼任する五人の妾と日々楽しく暮らすのを望むような変わり者でもある。

 それぞれに子どもを儲け、現在妊娠中の妾がひとりいるため、そのひとりが子どもたちの世話を見ている。

 旦那様は獣耳の生えた子どもを愛していたし、妾である自分たちをいつまでも愛してくれた。

 その留まるところ知らない性欲を愛情で包み込んでご奉仕することを生き甲斐にしているわけだが、それが叶わずたったひとり努力するだけのマリノアを見ていると心配になる。

 愛されているという温かい熱情は生きる動力源になるから、それがない少女はいつか壊れてしまうのではないかという危惧を孕みながら日々を送っていた。


 他地域の語学を独力で学ぶマリノアのことを、最初は微笑ましく見守っていたメイドたち。

 ある日を境にマリノアの様子が変わったことに気づき不安を募らせた。

 アルと約束した三ヶ月を過ぎても、当人が一向に戻る気配がない所為だ。

 最初は獣人たちも、「遅いねぇ、心配だねぇ」と口にするにとどめていた。

 手紙を出しても届くのにひと月はかかる世界だ。

 日がずれることなんて珍しくもないと。


 しかしひと月ふた月と過ぎるにつれ、泣き腫らした目元をぐしぐしと拭いつつ、夜遅くまで机に向かっているマリノアをしのびなく思うようになった。

 あの頃のマリノアは強迫観念というやつに囚われていたのだろう。

 勉強をやめてしまえば二度とアルに会えないのではないか、と思い込んで、だから手当たり次第に学を頭に叩き込んでいた。

 当然メイドたちも「そんなことをしたって何も変わらない、マリノア自身の身体も労わって休みなさい」と諭した。

 だが完全に思い込んでしまっているマリノアに何を言っても届かなかった。

 獣人メイドたちはただただ、アルの一刻も早い帰還を待つばかりであった。





 マリノアと仲の良かったミルフィリアことミル姉さんは、獣人村で子育てに勤しんでいた。

 アルが旅立って半年ほどで出産。

 基本的にベレノア邸で勉強しているマリノアだが、月に一度は獣人村に様子を見に来て、村長となった熊さんといろいろ方針を考えることもしていた。

 しかしマリノアの表情はあまりよくなく、目の下に隈を作ってほとんど笑っていなかった。

 ミル姉さんの赤子を抱くときだけ優しい顔をするマリノア。

 しかし月に一度程度。

 ミル姉さんは村を離れることができず、マリノアの体調を心配することしかできなかった。


 誰にも相談できないまま、自分を追い詰めている少女に、獣人村の女たちは心を痛めた。

 犬系獣人の忠義心の高さは知っている。

 高いがゆえに落ちたときはひどい。

 それも知っていた。


 懐いていた幼い子供たちですら、鬼気迫るマリノアに近づいてはいけないと本能で察しているようだ。

 思いつく限りの方法で励まし、気を逸らそうとしたのだが、深い執念に囚われているマリノアには通じず、効果はあまりなかった。





 最終手段として、自分たちを囲っている旦那様に話を持っていった。

 青灰毛の猫獣人を襲ったと勘違いされてから、マリノアと旦那様を近づけないようにするのは暗黙の了解となっていたが、それでも本当に獣人メイドたちには手がなかったのだ。

 アルに似せた手作りの赤髪人形を見せたら、目の前でポロポロ泣きだす始末である。

 マリノアはひとつひとつ、自分とアルとの思い出を口にし、深く深く闇の底へと沈んで行くのがわかった。

 重症である。


 犬系獣人はもともと主人と認めたものに対する忠誠心が高く、褒めてもらうためにはなんでもやるところがある。

 一歩間違えると異常行動になるが、本人は至って真面目なのだ。

 別に犬系獣人に限ったことではない。

 猫系獣人は協調性がなさ過ぎて不和の種を撒くし、牛系獣人はおっとりするがゆえに自分の髪が燃えていてもすぐには気づかなかったりする。

 もちろん個体差があり、マリノアはどうやら犬系獣人の極端なほうであった。


 領主のボンジュール・べレノア・ハムバーグは愛妾たちから相談を受け、悩んだ末に「情報を集めて安心させるであります」と提案した。

 元々アルの足取りを追うために密偵を雇っていたが、何度か所在を見失っていた。

 最初の頃、昼間は普通に街道を行き、夜になると猫ちゃんを抱えて空を移動していたので、追いつけずにことごとく見失っていたのだ。

 幸い目指す場所はわかっていたので、彼が寄るだろう村や町に見当をつけて人を置いていたため完全に見失うことはなかった。


 その彼らだが、目的地の村に近づくと、完全に足取りを追えなくなってしまった。

 遭遇する魔物が強すぎて密偵に犠牲が多く出たのだ。

 村を呑み込んだ大森林。

 そして大森林の中で莫大な魔力を垂れ流す突如現れた迷宮。

 領主自ら組織した兵隊も、迷宮の入り口にすら辿り着けず、迷宮から涌く魔物に全滅に近い被害を出していた。

 魔窟が口を開けて侵入者を待っている。

 そんな中を、戦闘より尾行に長けただけの人間が飛び込んでいけるはずもなかった。


 そんなわけで見失った。

 迷宮は崩れ、魔物たちの生態系も緩やかに戻っているという報告を受けたのはしばらく後。

 アルたちが攻略した可能性があったが、そこからどこへ向かったのか追えないままだった。


 報告を受けたベレノア公は、ありのままをマリノアに伝えるのは憚られたようで、自分のところで留めておく選択をした。

 足跡を追えないとなると、別の方法を考えるしかない。

 そして、息子の家庭教師をマリノアにさせることに任せることにした。

 人と接し続けることで、わずかなりとも気が紛れれば、と思ったのだ。

 そこで選ばれたのが、愛妾たちの長子ティムであった。

 ティムの方もマリノアが大好きだ。

 小さいなりに雄だったのを見抜けなかったのは、親ゆえの盲目さだろう。

 家庭教師を始めると、朝晩狂ったように勉強に打ち込むマリノアの姿は少しずつ見られなくなった。

 もちろん他種族語の勉強は続けているが、ティムに教えるための教材も用意しなければならないため、思いつめる時間が減っていき、少しずつ正常に戻っていった。


 そしてアルが旅立って一年が過ぎようという頃、ティムを伴って獣人村へ出掛け、そのひと月後にマリノアは戻ってきた。

 最愛のご主人様の後ろにそっと寄り添い、とても幸福な顔をして……。





 馬車に乗ってベレノア邸に戻ってきたマリノアは、アルというご主人様の後ろを誇らしげに付き従っていた。

 ティムとミィナがその後に続いていたが、ティムはなんだか拗ねているような様子だった。

 中には察しの良い獣人メイドがいて、ティムが失恋したことにひっそりと気づく。


「マリノア、俺はボン坊と話してくるからそれ以外のことは任せたよ」

「あ……」


 尻尾と耳がぺたんと垂れ下がる。

 わかりやすいくらいに気落ちしていた。


「後で報告会だよ」

「は、はい!」


 項垂れた気持ちはアルの一言で回復したようで、ピンと天に向かって耳が伸びた。

 それ見ていた獣人メイドたちは、場所も考えずご主人様大好きオーラを発する少女に呆れた。

 しかし元気が戻っていて、嬉しくもあったのだ。

 ただ、赤茶髪の少年の素っ気ない態度に喉に引っかかった小骨のような不信感が拭えない。

 彼女たちはマリノアの味方だった。

 恋い焦がれる乙女を見守る先駆者たちだった。

 だから少女の恋が相応の報われ方をするべきだと常々思っていたのだ。


 少年は猫獣人のミィナの方が気になるらしく、青灰色の髪を撫でようと手を伸ばすが、たたたっとティムの手を取って走って行ってしまった。

 ミィナが向かった先には子どもたちの部屋がある。

 少年は空を掻いた自分の手を寂しそうに見下ろしているが、それなら隣で待ち侘びている忠犬を撫でてあげなさいよと獣人メイドは思った。

 しかし手は伸びず、ちょうど登場した旦那様に少年の顔が向いてしまったため、

 アルの態度は及第点に届かない。

 ならば追試だ。

 獣人メイドたちは見交わして頷き合った。





 マリノアは領主邸の秘書官と獣人村の収支について話し合った後、ニコニコしてアルの宿泊する部屋を整えていた。

 そんなものは獣人メイドたる自分たちの役目だと言ったのだが、マリノアは「わたしはアル様のメイドでもありますから」と嬉しそうに話すので、彼女の仕事を奪うわけにはいかないと引き下がるしかなかった。

 尻尾がパタパタと休まず振られている。

 「ふんふん♪」と鼻歌混じりだ。

 ひとりひと部屋でも問題のない部屋数なのだが、当然のように三人分の荷物も運び込んで、一緒の部屋で過ごす気らしかった。

 まるで新妻だなと、マリノアの様子を観察していた獣人メイドは思った。


 悪いことではないのだが、なんとも腑に落ちない。

 マリノアにはもっとふさわしい、強くてたくましい伴侶でもいいのにと思う。

 線の細いアルでは、獣人の好みからすると頼りない印象が強い。

 それは大平原での魔術師としてのアルを知らないからくる印象だった。

 たとえ九歳でも同い年の獣人ならもっと覇気に溢れているものだ。


 神経質かと思われるくらい、本日三度目のベッドメイクをしていたマリノアが、不意に顔を上げた。

 ピクッと耳を震わせ、鼻をすんとひと嗅ぎ。

 尻尾をパタパタ振るわせて、部屋を飛び出していった。

 満面の笑みで。


 アルはしばらく旦那様と話していたが、夕餉には肩を並べて談笑するまでになっていた。

 一時期は険悪な関係だったが、しばらくふたりきりで話して仲が回復したようだ。

 「男ってそういうところがあるよね」メイド仲間と囁き合う。

 夕食を終えて、ふたりはさっさと書斎に引っ込んでしまった。

 夜になってもアルとベレノア公は書斎から出てこなかった。

 暖炉の前で暖まりながら、一晩中笑い声とともに何やら談義に花を咲かせていた。

 お茶を持っていくと、「いずれは東に旅をしたい」だの「王国中から集めることが夢」だのと男同士で盛り上がっている。

 結局その日は部屋に戻らなかった。

 マリノアが折角ベッドを用意したのに、使われることがなかったのだ。


 翌朝になってマリノアの顔を見ると、少し眠そうだった。

 たぶん一晩中戻りを待っていたのだろう。

 大してアルと旦那様は揃って大きな欠伸を漏らした。

 顔も眠そうで、眠気が抜けきっていないようだ。

 そのだらしない顔に水をぶっかけてやりたいと獣人メイドたちは思った。


 日中、猫獣人のミィナが持ってきたぼーるという丸い道具を追いかけ、中庭を子どもたちが目の色を変えて走り回っていた。

 ミィナは九歳。

 我が子たちは、上から五歳、下はようやくよちよちと四つん這いで動き出した頃である。

 圧倒的な身体能力でもって子どもたちにぼーるとやらを渡さなかったミィナだが、途中旦那様と歩きながら庭を横切ったアルの一声で、子供達にもぼーるに触れる機会が与えられた。

 ミィナはつまらなそうに拗ねて木登りを始めてしまったが、子どもたちがぼーるを持って構って欲しそうにミィナに近づくと、しょうがないと言わんばかりに木を降りて仲良く遊び始めた。


 ミィナは猫獣人にしては面倒見のいい方だった。

 ちびっこを肩車して、ぼーるを持たせて逃げ回っていた。

 アルと一緒の時は甘えん坊だが、いつも甘えまくっている分、他の子には甘えさせてやろうと寛大になったのかもしれない。


 アルと旦那様は昼から出掛けた。

 マリノアはアルの後ろに影のように寄り添って一緒に出掛けて行った。

 そんな彼女に目もくれず、アルと旦那様はふたりで話し続けていた。

 「マリノアをもっと尊重してあげて!」と、少女の頑張りをつぶさに見てきた獣人メイドたちは心の中で叫ぶ。

 しかし報われることはなく、夕方頃に馬車が戻ってきた。

 旦那様が上座につき、その右手にアルが座り、その横にミィナ。

 マリノアはその隣だった。

 「せめて横に座らせて上げて!」と心の中で以下略。


 食事中も男ふたりにしかわからない会話を続け、マリノアに話題が振られることはなかった。

 男はひどい生き物だ。

 女の気持ちなんて汲みやしない。

 自分たちのことばっかり。

 そう思わずにはいられなかった。

 「旦那様も気を利かせればいいのに!」と心の以下略。


 アルは話しながらも、横のミィナの面倒を見ていた。

 マリノアはただ目の前にある料理を消化することに努めている様子だった。

 アルとミィナの仲は、旅の間にさらに深まった様子だ。

 残されたマリノアがひとりおいてきぼりではないか。

 獣人メイドたちの怒りがアルと察しの悪い旦那様に向けられた。

 みゅんみゅんと飛んでくる怨念に、我らの旦那様は終始首を傾げていた。


 食事が終わり、旦那様は部屋に引っ込んだ。

 アルはミィナと部屋で寝そべって休憩している。

 マリノアはにこにこと傍に寄り添っていた。

 今がその時と、愛妾メイドたちは夫のいる書斎に押しかけた。


「ひどいじゃないですか!」

「あんまりです!」

「もうちょっと気持ちを察してあげてください!」

「……なな、なんのことでありますか?」


 目を白黒させ、我らの旦那様は愛妾たちの顔を順繰りに眺めた。


「マリノアがどんなに心待ちにしていたか!

「男同士の話ならもっと短く済ませられたと思います!

「ふたりの時間を取らないであげて!


 旦那様は途端にアワアワし始め、汗を拭う仕草をする。

 困ったときの癖だと、ここにいる全員が知っていた。


「アル殿を独占していたのは申し訳ないでありますが、たぶんもう解決したのでありますよ」

「解決?」

「どういうことですか?

「アル殿の部屋をこっそりと覗いてみるといいであります」


 確信的な夫の言葉に背を押されるようにして、足音を忍ばせてアルたちの部屋にゾロゾロと向かった。

 扉を薄く開けてみると、ミィナが丸まって眠っている横で、アルとマリノアがベッドにいた。

 マリノアがアルを後ろから抱きしめて、話に花を咲かせている。

 楽しそうに話すマリノアを見て、獣人たちの溜飲は下がってしまった。

 アルは後ろから回されたマリノアの手に自分の手を重ねて、マリノアの話に相槌を打つ。

 これを見て仲を疑うものはいない。

 幸せの形がちゃんとそこにはあった。


「なんだ、マリノア嬉しそうね」

「あたしも旦那様にしてあげようかしら」

「それならわたしも!」

「みんな順番でやればいいじゃない」


 彼女たちは一様に公爵の愛妾だが、女たちの仲は良好だった。


「それにしてもあのアルって子、ちょっと生意気じゃない?」

「まったくだわ」

「子供のくせに王様みたい」

「そうとう性格悪いわね」

「マリノアも惚れた女の弱みってやつかしらね」

「身を張って奴隷から解放してくれたら誰だって悪い気はしないもの」

「そうよそうよ」


 獣人たちの溜飲は一応下がったが、アルの好感度は一向に上がらなかったという。





 翌朝、アルとマリノアが廊下を並んで歩いていた。


「マリノアってそういえば、別れたときより背が大っきくなってるね、当たり前だけど。それに、女性らしく成長してる」

「アル様の好みに合えばいいのですが」

「何言ってんのさ、マリノアの全部が俺の好みだよ」


 外で洗濯物を干しながら、「臭いこといってんじゃないわよ」と獣人メイドは思った。

 しかしマリノアの尻尾が高速で振り回され、すごい喜びようだ。

 もはや目で追えない。


「あ~、アルさまぁ、アル様の臭い~」


 すっかり甘えん坊モードに入ったマリノアの頭を撫で、耳の後ろをカリカリしてやる。

 気持ちいいのか肩を竦め、体を押し付けている。

 全身がふにふにのマリノアと抱き合っており、中庭で洗濯物を干しているメイドは若干気まずさを覚えた。


 お互いキュッと抱き合って、背中をさすりあっている。

 そのうち興奮してしまったのか、マリノアは息を荒げて絡みついている。

 だらしなく開いた口からよだれが垂れ堕ちそうになっていたので、アルが口を近づけて啜った。

 もうそんな関係なのね、と遠い目をするメイドだ。

 いや、幸せなのはいいことなんだけど。


 瞳が交差している。

 熱を帯びているお互いの瞳から、目が離せないようだ。

 「ください」と心細そうに言うマリノアの求めに、盛った少年が抗えるわけもなかった。

 誰もいないと思ってまったく。

 そのまま口を合わせ、舌を絡ませている。

 マリノアは甘い声でくぅんくぅんと鳴いて、アルの全てを受け入れている。

 征服されることを望み、全面的な信頼をご主人様に向けている。

 ご主人様との繋がりをより深く感じようとしている。

 げんなりした顔でその様子を見守っている。


「愛しています、アル様。これ以上ないくらいに、わたしは幸せです」

「俺だってマリノアに負けないくらい愛してる。俺は独占欲が強いのかもしれないと思っちゃうくらい、マリノアを手放したくないよ」


 いや、アホほど強いよと内心で突っ込む。

 唇が触れる。


「マリノアは俺のものだからね。今日しっかりと匂いを付けたんだから」

「はい、わたしはアル様の所有物です。他の人には触らせません」


 鼻先を甘えるように擦り付けている。

 じゃれるような時間がふたりを盛り上げる。

 よしよしとアルが犬耳をくにくにすると、マリノアは目を細めて喜んでいた。

 マリノアの桜色の唇を、アルが背伸びをして塞ぐ。


 盛った少年少女を柱の陰からじっと見つめる目が合った。

 ミィナだ。

 獣人メイドも気づく。

 しかし、タタタッと背中を向けて走り去って行くところだった。

 いつものようにアルにぶつかって、頭を擦り付けることはなかった。

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