第43話 ジェイドの魔宮③ 猫ちゃんの訓練
ジェイドの魔宮・二階層――
階段を下りた途端、巨人たちがわらわらと集まってきた。
迷宮の階層の最初は、モンスターハウスと相場は決まっているらしい。
最初から全力だ。
猫ちゃんに高身体強化を練らせてから満を持して階層を降りたので、猫ちゃん無双である。
巨人は何種類かいて、そのどれもがとにかく獲物を見つけたら一直線という感じで、知能がやたらに低い。
攻撃力だけは巨人に分があるものの、敏捷性、判断力ともに猫ちゃんの方が圧倒的に優っていた。
不意の一撃さえ食らわなければ、猫ちゃんのハイブーストで十分に勝機はあった。
だが、まだ高身体強化を長時間維持できないので戦闘時間はあまり長くない。
「猫ちゃん、接近戦!」
「んにゃ!」
拳を作り、ふたりで六メートルはあろうかという巨人の股下を駆け抜ける。
振り下ろされる棍棒を寸前で躱しながら、俺は内部破壊の拳と砲弾拳を使い分けて戦った。
「にゃにゃっ!」
「ウガアアアアァァァァァァッ!!!」
いまの猫ちゃんなら、お得意の猫パンチで巨人の足を叩き折るくらいはあっさりとできた。
一瞬でも体が硬直すれば十分で、そこに留めに内部破壊するなり、巨人の体の一部を砲弾にするなりして蹴散らしていった。
ニニアンはというと、自慢の弓がひゅんひゅんと音を立てている。
巨人たちの腕を軽やかにかいくぐりながら、足元から巨人の頭部を貫き破壊していた。
単眼のサイクロプス、赤肌悪鬼のオーガ、毛むくじゃらのトロールといった巨人群。
彼らは好戦的で、目が合うなりまっすぐに突っ込んでくる。
気を抜くと危険だが、スキュラと比べればはるかにやりやすい相手ではある。
なにせ巨人は攻撃にかなりの比重を傾けている分、防御は紙のようなものだ。
スキュラに弾かれたニニアンの矢でも、あっさりと魔力障壁を貫通していた。
「アルー」
「なにー?」
「疲れたー」
猫ちゃんが巨人との戦闘を途中で切り上げて、トコトコと寄ってくる。
それが撤退の合図だ。
「よぉし、猫ちゃんが燃料切れだから、撤収! 撤収!」
下りた階段を上ってはいけないというルールはない。
一階層に上がると巨人は追って来れない。
巨体が狭い階段を通らないのだ。
どうやって迷宮に入ったのだろうか。
真相は闇の中だ。
一階層に戻った俺たちは、火を熾して食事を済ませた。
外の様子はわからないが、腹時計が夕方頃だと告げている。
猫ちゃんは夕飯をたらふく食べると、お腹を膨らませてごろんと寝転がった。
「食べてすぐ寝ると牛になるよ」
「にゃ?」
猫ちゃんは首だけこちらに向けて、小首を傾げた。
「うしー? ミィニャがー?」
「猫は猫だ。それ以外の何物でもない」
「間違えた。こんな可愛らしい猫ちゃんにたくさんご飯を食べさせてぶくぶく太らせたら、しまいには豚になっちゃうな」
「ぶーぶー? ミィニャがー?」
「猫は猫だ。太らせたら……豚みたいになるかもしれない」
「ぽんぽんおっきいねー」
猫ちゃんの膨れたお腹をぺろんと撫でると、「にひゃひゃー!」と笑い転げた。
猫ちゃんとくつろぎタイムを過ごしつつ、ニニアンとは真面目な話をする。
「軍隊はどうやらスキュラをやっつけたみたいだね。向こうにはスキュラを倒せるくらいの戦力があるってこと、だよね?」
「その可能性もある。大量の人間の気配は数を減らしていない。もしくはやり過ごしたのかもしれない」
「もし返り討ちにしていたらやばいよね。後ろから強敵が迫ってくるわけだ。軍隊の中に宮廷魔術師がいたのかもしれないな」
「いま魔力を探っても、強い感じはしない。でもそれは、狡猾に隠しているから、かもしれない」
「近くに行けば、強いかどうかはわかるんだけどな」
「私もそう。接触するのか?」
「うーん……やめとこう。向こうに気づかれるし、宮廷魔術師なら接触しない方がいいな。この迷宮をこさえた人間も元宮廷魔術師なんだよ」
「人間の中でも魔術をそこそこ使えるやつはいるもの。私は出会ったことないが」
「師匠を罠に嵌めて、一瞬でも追い込んだんだぞ。この迷宮に名を冠してる男は」
「あの男が弱いだけ。私は違う」
ふんと、ニニアンは張り合うように鼻を鳴らした。
何を根拠に言うのだろうか。
俺からしてみればニニアンは師匠の下位互換なのに。
これは直接言ったらショックだろうな。
思っても言わないのが大人のマナー。
「ねー、アルー、ねーねー、アルー、えほんー」
「ちょっと待ってねー、いまダンディな大人の会話中だから。猫ちゃんは大人しく転がされててねー」
「むー」
首の下を撫でたり耳の後ろをカリカリしてあやしているのに、猫ちゃんは目は細めてはいるが納得いかなそうに眉根を寄せている。
「軍隊の移動速度が遅いのは迷宮を端から端までマッピングしているからだと思う。こっちにとってはそのほうが都合がいい。ここに拠点を置いて二階層の巨人を相手に猫ちゃんの身体強化を鍛えられるしね。あと数日はいけるかな」
「人間の塊は動きが鈍重。だけど、目指そうと思えばここまですぐにくる」
ニニアンはあくまで楽観視はしないようだ。
「じゃあ決議を取りまーす。異議あるひとー」
「いぎー」
「異議?」
猫ちゃんが頭を揺らしながら「いぎーいぎー」と真似している。
たぶん、意味は分かっていないと思われる。
ニニアンの方は、なんで私に聞くの? とふてぶてしく思っていそうな顔だ。
いや、会議ですけど?
「異議がないようなので、軍隊が近づくまでは二階層入り口で巨人退治をしたいと思います。猫ちゃんの高身体強化の訓練と、俺の超身体強化の訓練も合わせて行いますのでそのつもりで」
「私も訓練する。連携」
ニニアンがつまらなそうに手を挙げて、そう言った。
つまらなそうなのは表情筋が硬いだけでいつもどおりか。
笑ったところを見たことがないしな。
「技能に付与魔術とか細工・調合があるんだから、それも役立てればいいのに」
「あるが、何の役に立つ?」
「たとえば魔力を回復する薬を調合するとか、加護の付いた装備品を作るとか、戦闘中に能力を底上げする付与魔術を唱えるとか、やり方はたくさんあるでしょ」
「……そうかもしれない」
目から鱗と言わんばかりに、ニニアンの目がいつもより気持ち大きめに開かれた。
表情がちょっとだけ動いたような気がするのは見間違いではないだろう。
ニニアンは寝転がって尻尾をいじっていた猫ちゃんを自分の膝の上に招き乗せ、猫ちゃんの弱点である耳の後ろを掻きはじめた。
「うにゃう~」
「…………」
ニニアンは無表情で猫ちゃんの反応を眺めている。
それ楽しいの? と聞きたくなった。
俺が猫ちゃんをあやすのを見て会得したのだろう。
猫ちゃんはふにゃふにゃになって、ニニアンの腕の中でされるがままとなっている。
くっ、嫁を寝取られた気分だ!
ニニアンは見た目美少女だが、性別は男だし、いつ毒牙が猫ちゃんに向かうかわからない。
太ももが露わになった短めのスカートを履いてようが男なのだ。
膝を揃えて股を閉じている座り方とか、猫ちゃんをあやしているうちについつい足の開きが大きくなって俺の位置から奥の陰りが気になったりとかしても、やはり男なのだ。
背筋を伸ばした姿がピシッとして綺麗だとか、膝に乗せた猫ちゃんを愛でる様子がマジで女性にしか見えないとか、だがおと(以下略)。
エルフは性欲が薄いらしいが、時期的なもので高ぶるときがあるかもしれない。
荒ぶったニニアンがおのれの猛りを猫ちゃんで静めようとするかもしれない。
でも、騎乗される俺の姿しか想像できないのはなぜだろう……。だが(略)。
性別に関して、ニニアンには鬼門だった。
男を認めたくないのか。
もしくは心が女だから、男の体の自分を忌避しているのかもしれない。
さもありなん。
エルフは魔力に優れるゆえに、体つきが心に引っ張られるように成長する。
女性らしい体つきになったのも、ニニアンの心が女である証拠なのだ。
最初に釘を刺されて以来、ニニアンの性別に関しては聞き辛くなっている。
どこかのタイミングで聞いてみるべきか。
もっと仲良くならなければ聞けないだろうな。
親密度はどれくらいあげればいいのか。
鑑定スキルがあるのに、恋愛パラメーターは用意してくれないのか。
右上にハートマークが表示されたりしないのか。
くっ……これは恋愛ゲームじゃない、現実なのだ!
しかしてあとどれくらい仲良くなればいいのだろうか。
ちらりと、猫ちゃんとじゃれるニニアンを見てみる。
俺がニニアンに引き寄せられて、じゃれることができたら聞けるかもしれない。
ニニアンはどうやら小動物系が好きなようだ。
俺もブリッ子すればいけるはずだ。
中身は三十代おっさんだから、真実の目を持つものからすればイタさは尋常ではない。
そしてニニアンは、数少ない鑑定スキルを持つ存在だ。
すでに詰んでいるようだ。
師匠を追う理由も、もっと詳しく聞いてみたい。
少なくとも、最初の頃のような棘は俺たちに向けられていない。
触れる優しさすべてに当たり散らした思春期は通過したみたいだ。
こちらの言葉にも納得がいけば従う余裕も生まれ始めた。
だが距離を縮めたかと言ったら、そうではないだろう。
猫ちゃんとはスキンシップを過分にするくせに、俺に対しては手を伸ばしても届かない距離を常に維持している。
やはり中身三十代のおっさんだということを警戒されているのかもしれない。
俺だってロリババアを素直に抱き締められるかと聞かれたら、ちょっと迷う。
最終的には「合法ロリだ!」と叫んで、がっしと抱き締める自分が容易に想像できた。
そんな自分がちょっぴり好きだ。
猫ちゃんの場合、警戒心さえなんとかすれば愛でるのは容易い。
警戒心露わに絶対に近づいてこない野良猫ではない。
餌をちらつかせればホイホイつられる飼い猫である。
ニニアンの膝の上で仰向けになって、猫ちゃんはくたっとしている。
そのまま眠ってしまったようだ。
「できること、やってみる」
猫ちゃんがすぅすぅと寝息を立てた頃、腕の中の猫ちゃんを見下ろしてニニアンがぼそりと呟いた。
何を指して言ったのか一瞬わからなかった。
会話を思い返して、たぶん、付与魔術や細工術のことだろうと思い至る。
その決意が空回りしないことを祈るばかりである。
翌朝、準備を整え二階層に再チャレンジである。
軍隊は昨日と同じ位置をうろうろしているようなので、まだ余裕はあるだろう。
そのまま撤退してくれれば言うことないのだが。
「トイレー」
モンスターハウスを片付けている最中、トコトコと俺の前までやって来て猫ちゃんは言った。
「トイレかー、もうちょっと我慢できるー?」
「むりー」
「無理かー、それだと急がなきゃなー。漏らしてもいいけど、癖になると困るしなー。どれぐらいもつ?」
「ちょっとー」
「ちょっとかー、猶予は残されてないかー。殲滅するまで我慢してー」
「むりかもー」
「無理かー」
魔力の節約とも言ってられない。
家族旅行に車で遠出したお父さんが一度は直面する問題である。
近場にパーキングエリアはないのである。
尿意も巨人も待ってはくれないのだ。
轟雷や爆裂といった大技を使って、近場の巨人たちを迅速無差別に屠って行く。
「出ちゃった……」
「マジかー、ほんとに限界だったかー」
足を開いた猫ちゃんの足元に、水溜りができている。
猫ちゃんはしゅんと耳を伏せている。
尻尾もいつもより力なくうなだれているように見えた。
「ニニアン、あとは任せた」
「何を?」
「巨人全部」
「……それは無理」
さすがニニアン。
言葉の裏側にある意図をまったく読んでくれないぜ。
「数十秒でいいから!」
「それならできなくもない」
猫ちゃんは棒立ちになっている。
猫ちゃんの後ろに迫っていた巨人を駆け寄ってぶっ飛ばし、お漏らし猫ちゃんに水魔術を掛ける。
濡れ猫になったのは一瞬で、すぐに汚れを落として水気を飛ばす。
洗濯や浄化のときにいつもやっていることだ。
濡れていないのを触って確認している猫ちゃんを引き寄せて、その場からニニアンの側まで撤退する。
「もー、トイレしたくなったら早めに言うように言ってあったでしょー」
「でも我慢したー。ミィニャえらくない?」
「漏らしちゃったから偉くない」
「むー……」
猫ちゃんの耳がペタンと力なく倒れた。
「よしよし、今度は間に合うようにすぐ言うんだよ」
「わかったー」
髪を撫でると、耳がピンと力を取り戻した。
猫ちゃんの髪はいつの間にか背中にかかるくらいに伸びていた。
俺も髪が目にかかるようになり、邪魔になりつつある。
どこかで散髪できればいいのだが……。
それにしても、猫ちゃんは感情表現が耳と尻尾に出るのでわかりやすい。
というか獣人全般が感情表現豊かだ。
獣人とギャンブルをしたら、さぞいいカモになることだろう。
ニニアンとは大違いである。
ちっとも喜んでいなさそうな顔をして無言で猫ちゃんを撫で続けるからな。
そんなこんなで巨人は片手間に倒していった。
さすが獣人だけあって猫ちゃんの敏捷性はこの三人の中でも抜きん出ている。
耳をぴくぴく動かし、鼻ですんすん嗅ぎ分けるので、危機察知能力は抜群だ。
尿意という憂いもなくなった今、巨人たちの攻撃などそのうち目を瞑っていたって避けられそうだ。
猫ちゃんは最近とみに本能系技能ばかりが育っていっている気がしなくもないが、これでいいのだろうか?
いや、よくあるまい。反語!
昼前に休憩を取り、一度一階層に戻った。
軍隊が心なしか近づいてきていた。
そろそろ次の階層を目指す頃合かもしれない。
夕方頃には二階層の入り口周辺の巨人をあらかた一掃した。
とりあえず一階層に戻って、拠点で休んだ。
次に降りても、入り口付近には巨人が出てこないだろう。
ここ数日で二階層を歩き回らずして、エリアの二割か三割程度の巨人を殲滅したはずだ。
昨日はニニアンに猫ちゃんを寝取られたので、今日は渡すまいと夕食が終わってすぐに猫ちゃんをはっしと抱きしめた。
「アルー? なにー?」
「昨日はニニアンと一緒に寝たから、今日は俺と寝ようね」
「いいよー」
猫ちゃんは耳をぴくぴく動かし、くすぐったそうだ。
ぐりぐりと頭を擦り付けてくる。
ウチの猫ちゃんは気持ちよければ誰とでも寝てしまう。
それだけ聞くととんだ〇ッチだな。
「その前に身体強化の訓練やっちゃおうか」
「んにゃ」
猫ちゃんと両手を結び、目を閉じる。
手を通じ、魔力をゆっくりと猫ちゃんに流し、行き渡らせる。
流し過ぎると猫ちゃんがプチッと破裂してしまうので、常に細心の注意を払っている。
猫ちゃんの魔力をゆっくりと引き出して、身体の隅々まで行き渡らせていく。
ある程度慣れてきたら、体内に入っている俺の魔力を追い出す訓練をする。
自分の魔力を操らなければできないことで、もし俺の魔力を追い出すくらいになったら、ほぼ自分の魔力を掌握したことになる。
属性魔術は種族柄苦手としているが、敏捷性やら身体機能はいまと比べ物にならないくらい上がるはずだ。
「ふんむー!」
今の猫ちゃんは、まったく動かない壁を顔を赤くして押しているのと一緒だ。
まだまだ先は長い。
一朝一夕でできる訓練なら、俺だって苦労はしない。
体内の細部まで魔力を流す感覚に慣れさせて、これまで魔力操作を行ってきた。
高身体強化は、魔力を操作する訓練が特に必要だ。
魔力の押し合いがひと段落ついたら、次に体の中で魔力を集める訓練に移る。
「右手に集めて」
「むぅ~」
猫ちゃんが眉根を寄せて、右手に魔力を集めている。
俺はその補助をするだけだ。
感覚的には補助輪に近い。
自分ひとりでは完璧に集められないから、俺が手を添えてやることでうまくいったときの感覚を体に馴染ませているのだ。
魔力移動ができるようになれば、自転車に乗るように無意識に操作できるようになる。
「次は左足」
「むむぅ~」
この魔力操作がスムーズにいくと、身体強化はマスターだ。
高身体強化は、猫ちゃんの中に眠っている魔力を起こし、大量の魔力を引き出した上で魔力操作を行うことである。
俺の課題である超身体強化は、眠っている魔力のさらに深い部分から魔力を引き出すことにある。
眠りにも深さがある。
意識して掘り返せる部分というのは実は表面的なものにすぎず、本来はもっと深いところまで手を伸ばそうと思えば伸ばせるのだ。
種族的に、エルフはそういうのが得意だ。
精神の底には淀んだ濃密な魔力がのたうっている。
これは誰にでもあるものだが、その誰しもが九割九分、一生涯引き出すことなく終わる。
もちろんただで引き出せるはずもなく、体が慣れないうちは反動で筋肉痛を十倍きつくしたような痛みに襲われることもある。
猫ちゃんが頑張る横で、俺はこれらに耐えているのだ。
もちろん弱音は吐かないけどな。
「次はお耳~」
「むむむむぅ~……にゃふ」
集中していた猫ちゃんの集中力がぷつりと切れ、ぐったりとしてしまった。
猫ちゃんの中にある魔力をすべて絞り出したことで、体力の限界が訪れたのだ。
力尽きるように寝てしまったが、猫ちゃんの魔力槽は翌朝少しだけ大きくなっているはずだ。
魔力切れの猫ちゃんがぽてりと倒れてすやすやと眠ったところで、俺も軽く体を伸ばして眠ることにする。
「ニニアンは、そういえば寝ないの?」
「寝ているときもある。エルフは人族のように長く眠る習慣も、必要もないだけ」
「そうなんだ……ふわぁ……なんか師匠からも聞いたことがあるような、ないような……」
欠伸をしつつ、天使の寝顔の猫ちゃんのすぐ横に寝そべった。
手を伸ばして猫ちゃんの体を抱き寄せる。
小さい体で体温はかなり高い。
猫ちゃんと一緒に使っている毛布を、首まで引っ張り上げて目を瞑った。
「おやすみ……」
「……ああ」
ゆっくりと意識の底に落ちていった。
俺も疲労困憊だ。
疲れたときは、いつもほどよく眠れた。
猫ちゃんほのぼの回。
一階層につき一話にしようと思っていたけど、
文字数が安定しないのでやめました。
いまも予定の半分で区切っています。




