00 過去/始まりの日。
◇ 彼女は、昔から本をよく読んでいた。
× 幼馴染みの彼女は、昔から面白いものが好きだった。
○ 幼馴染みの彼は、昔からゲームが好きだった。
△ 友達の彼は、昔から空想ばかりしていた。
☆ 従弟の彼は、昔から空を見るのが好きだった。
彼らはある年の夏に出会い、ひとつの世界を創り出した。
こんな話があったら素敵。――彼女は『夢』を。
こんな物があったら面白い。――彼女は『形』を。
こんなゲームがあったらかっこいい。――彼は『理』を。
こんな世界があったら楽しい。――彼は『人』を。
こんな星があったら最高。――彼は『場』を。
星に暦、大陸に海、国や建物、組織や人、動植物、歴史に流通、時間に理。
考えることが楽しくて、彼らは夢中になった。
でも、楽しい夏もやがて終わる。
八月の終わりに、来年また会おうと約束して彼らは別れた。
――それなのに。
その年の冬に、ひとりが欠けた。
欠けたのは彼だったのに、彼にとって消えたのは四人のほうだった。
彼は空を見上げた。
「……みんな、どこに行ったの?」
彼のもとには五人で作った世界だけが残り、彼はいつかやってくる仲間のためにその世界を作り続けた。