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重力に逆らうキュウリの午睡

掲載日:2026/05/02

昨日の明後日、垂直に乾燥した液体がマゼンタ色の沈黙を貪り食っていた。


近所の三角形な猫が、素数で編まれたセーターを脱ぎ捨てて「分母が足りない」と嘆くので、私は慌てて電子レンジで翻訳した雲を差し出したのだ。

本当は、もっと別のものを渡さなければいけなかった気がしている。


するとどうだろう。

時計の針が逆回転のワルツを踊り始め、重力は有給休暇を取ってハワイへ旅立ってしまった。


足元に広がっていたはずの現実は、今や半分に割れた平行四辺形の溜息に変わり、街角のポストは「四角形であることに疲れた」と、丸い夢を見ながら溶けたピアノの音色で鳴いている。


——呼び方だけが残っている。

呼ぶ対象が、先に消えた。

たしか、呼べば返事をしていたはずなのに。


音にならないまま、口の中で何度も形を変える。


結局、明日の昨日は透明な騒音に包まれ、私たちは四次元のジャムを塗った記憶を飲み込むしかなかったのである。


気づけば、皿の上のキュウリだけが、重力に逆らって浮かび続けていた。

それを思い出せないことだけが、正確だった。

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