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闇吸蝶図鑑  作者: 夜宵
8/13

008




闇吸いの決行日。


時間は消灯時間を迎えた21時過ぎ。



叶実と美青はあの時の万華鏡部屋にいた。



色とりどりに移り変わる万華鏡に

叶実が手を触れると、一瞬で病室を映し出した。


鏡の周りには、綿毛の仲間たちが沢山集まっている。




美青「凄い…莉々花ちゃんの病室だ」



莉々花ちゃんは綿毛におやすみ、と告げて

少しすると、寝息を立て始めた。




叶実「さぁ、綿毛。心の準備が出来たら吸いなさい。

なるべく苦しまないように羽に念じておいたけれど…

覚悟してね。すぐに楽になれるように願っているわ」




美青「綿毛、今までお疲れ様。莉々花ちゃんは

あなたと出会えて本当に救われたと思う。私も皆も、

この道を選んだ綿毛を誇りに思ってるからね。

だからどうか…生まれ変わった大好きな彼女の傍で

一緒に笑っていられますように…」



美青は泣きながら別れを告げた。



綿毛の仲間たちも、一斉に鏡の前を飛び交う。




綿毛は、皆の思いを噛みしめるかのように

しばらく鏡の前から離れなかった。



そして、莉々花の髪をなでるように羽をゆっくり広げ、

左耳に移動し、花の蜜を吸うように口吻を耳の穴へ向けた。



綿毛の羽は、じわじわと、赤く染まっていく。


その身体は、苦しみからか、震えている。




数分後、病魔を吸いきった綿毛は

莉々花の枕元へと生き倒れた。



何か体に変化が生じたのか、莉々花は目を覚ました。



莉々花「…綿毛ちゃん!?」



飛び起きて綿毛を探す莉々花。


辺りを見渡した後、枕元に横たわる綿毛を見つける。




莉々花「…綿毛ちゃん!ねぇ!死んだら嫌だよ!」



血まみれになった綿毛を何とか助けようと

ティッシュを何枚も取って羽に置いた。



二人の別れの様子を、美青は泣きながら見ている。




叶実はお札を手に取り、鏡に一周こすりつけた。





すると、綿毛の声が聞こえるようになった。







綿毛「莉々花ちゃん、今まで辛い治療に負けずに

よく頑張ったね。偉かったね。もう大丈夫だよ。

これからはお外でも遊べるし、学校にも行ける。

夢がいっぱい叶うね」




莉々花「どうして莉々花のために!?嫌だよ!

綿毛ちゃんがいたから入院も楽しかったし、

治っても綿毛ちゃんがいなきゃ楽しくないよ!

嫌だ!お願い、死なないで!」





綿毛「私の寿命はもうすぐだった。だから何にも

気にしないで。あなたにはもっと楽しいことを

経験してほしいし、もっと長く笑っていてほしい。

私が望んでしたことだから。大丈夫だよ、

生まれ変わったら必ず莉々花ちゃんの傍に行く」





莉々花は大粒の涙を流し、ひくひくとする呼吸を

一生懸命に落ち着かせ、綿毛に別れを告げる。





莉々花「綿毛ちゃん…今まで本当に、本当に

ありがとう。いつも一緒にいてくれたから

頑張れたよ。痛くしちゃってごめんね。

絶対…絶対に莉々花の所に帰ってきてね。

ずっとずっと…待ってるから!大好きだよ」





綿毛「ありがとうね…私も大好きだよ。

必ず…必ず莉々花ちゃんの所に行くからね。

約束だよ…最期に…お話が出来てよかった…」




身体を震わせながら最期の力を振り絞って

思いを伝えた綿毛は、ついに力尽きた。





莉々花「嫌だ!嫌だよ!綿毛ちゃん!

綿毛ちゃんってば!!行かないで!!」




消灯時間を過ぎて静まり返る病室中に

莉々花の泣き叫ぶ声が響く。




看護師が病室へ向かう足音が聞こえ、

鏡の前にいた蝶たちは、鏡から病室へ入り、

綿毛の亡骸を取り囲んで運ぶ。




叶実・美青「綿毛!!!」




金色の座布団に運ばれた綿毛に、

二人は泣きながら労いの言葉をかける。





美青「綿毛…よく頑張ったね…」




叶実「あなたの願い通り、生まれ変わったら

あの子の近くにいられるように祈るわね」





叶実は綿毛が天国では苦しまず、これから

生まれ変わったら莉々花の元へと

行けるように、長い時間手を合わせて祈った。






羽が真っ赤に染まった綿毛の姿は、


ヒイロタテハに似ていた。





目が眩むような鮮やかな赤は、綿毛の

生命力の強さを現しているようだった。






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