007
翌日の放課後
美青が校門を潜ると、あの白い蝶が
花壇の花に止まって待っていた。
美青「ちゃんと待っていてくれたんだね!
ありがとう!行こっか!」
蝶は花から離れて美青の肩に乗った。
進路変更の際は美青の前を飛んで案内した。
目的地の病院が見えてきた時、
毎日神社に通うおばあちゃんが入っていくのが見えた。
美青「あの!こんにちは!」
祖母「あらあなた…叶望神社の…こんにちは。
誰かのお見舞いに来たの?」
美青「春菜 美青です!毎日神社に
お参りしに来ていたので、何か出来ることがないかなと…」
祖母「わざわざ病院に!?ありがとうね。せっかくだから
うちの孫の話し相手になってくれないかしら。いつも私か
両親がお見舞いだから喜ぶと思うわ!」
美青「はい!是非お会いしたいです!」
おばあちゃんは嬉しそうに手招きをして案内してくれた。
病室に着くと、小学生くらいの女の子が
ベットに横になりながら一人でテレビを見ていた。
祖母「莉々花!今日は莉々花に会いに
ばぁばのお友達に来てもらったよ!」
美青「莉々花ちゃん、初めまして。美青っていいます。
今日は莉々花ちゃんのことを応援しにきたんだ」
莉々花「こんにちは!お姉ちゃん、綿毛ちゃんと
友達なの?綿毛ちゃんの飼い主?」
莉々花は美青の肩に止まっている蝶を指さしながら
そう言った。
美青「綿毛ちゃん!可愛いお名前だね!綿毛ちゃん、
よく私がバイトしてる神社に遊びに来るんだよ。きっと
莉々花ちゃんの体がよくなるようにお願いに来てるんだね」
綿毛は、莉々花の前を何往復か舞ってから肩に乗った。
莉々花「綿毛ちゃん、毎日会いに来てくれるんだよ!
莉々花の話をいっぱい聞いてくれて、一緒に折り紙して…
ちゃんと莉々花の話、伝わってるのかな。だから神社に
行って病気が治るようにお願いしてくれてるのかな。
一度でいいからお話出来たらいいのにな…」
莉々花は綿毛の気持ちが聞きたくて、
少し悲しい顔をしながら肩に乗る姿を見つめる。
美青はその様子を切なそうに眺めていた。
それからは病気のこと、治ったらやりたいことなど、
莉々花が叶えたいと願う、未来への希望を
時間が許すまで聞き続けた。
美青はその足で、綿毛と神社へ向かった。
ドアが開いた音に気付いた叶実は、玄関まで迎えに行った。
叶実「お疲れ様。病院、どうだった?」
美青「ありがとう。莉々花ちゃんっていうんだけどね、
凄くいい子だった。病気のことも前向きに捉えていて
完治したらやりたいことが沢山あって…あの子の目の輝きには
希望に満ち溢れていて、絶対負けないって意志が現れていた。
この子の名前、綿毛ちゃんって名付けてた。かわいいよね。
言葉が通じないはずなのに、まるで通じているかのように
見えた。いつも莉々花ちゃんだけが話しているから、
綿毛の気持ちが聞いてみたい、話してみたいって思ってる。
蝶花楼さん…私は綿毛の思いを叶えてあげたい。
だって、会話が出来ないってだけで、彼女達は親友だもの。
先が見えている綿毛が、まだ生きられるはずの彼女の病気を
背負いたいって気持ちを汲んであげてほしい。
私からもお願いします」
真剣な綿毛と美青の思いに、叶実は根負けした。
叶実「美青ならそう言うと思ってた。綿毛、あなた
本当にいいのね?」
綿毛は叶実の問いに羽を一度だけ開き、顔を見ている。
叶実「決意は固いわね…わかったわ。闇吸いの決行は
五日後の日曜日。その日まで…悔いなく生きなさい。
心変わりがあればすぐに私に言うこと。死んでから
恨まれたらたまったもんじゃないもの」
美青「よかったね!綿毛。最後の五日間、蝶の仲間や
莉々花ちゃんといっぱい思い出作りするんだよ!」
綿毛は嬉しそうに二人の周囲を舞った。
残された五日間は、親しかった蝶の元へと
挨拶に周り、その他は莉々花と過ごした。
タイムリミットが近付くにつれて、
莉々花の笑顔にほんの少しの罪悪感を覚えていた。
全ては大好きな彼女を救うため。
その気持ちは揺るがなかったが、
綿毛はこの時間がずっと続けばいいのに、と思っていた。




