表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇吸蝶図鑑  作者: 夜宵
6/13

2_ヒイロタテハの最期




美青「はい、お待たせしました!今日は天丼と

麻婆豆腐です!…あのさ…もう少しリクエストの

組み合わせ、どうにかならない?今日なんて

和食と中華だよ!?麻婆豆腐なら餃子とかさ…」




叶実「食べたいものを率直にリクエストして

何が悪いの?美味しく食べるかどうかじゃない。

この間のカルボナーラと唐揚げもよかったけど

今日のメニューも絶品ね。美青、あなた本当に

天才だわ。今後もよろしくね」




美青「そ、そうですか…お気に召していただけて

何よりでございます…」




二人がたわいもない会話をしていると、

二匹の白い蝶が叶実の両耳にそれぞれ止まった。




叶実「どうしたの?」


蝶たちにそう声をかけた後、しばらく沈黙が続いた。


叶実にしか蝶の声は聞こえないため、

美青は何を話しているのかと不思議そうに見つめる。




長い沈黙の末、叶実は神妙な面持ちで口を開く。



叶実「私は反対よ。あなたがそこまでする必要ある?」



右耳に止まる蝶の方向に目だけを動かす。





美青「反対って…何があったの?」



美青からの問いに、叶実は深いため息をついた。




叶実「左耳の子は、毎日おばあちゃんが孫の病気が

治るように祈祷しに来ているのを見ていたんだって。

気になってお見舞いに向かう後をついていったら、

右耳の子が孫と一緒に遊んでいたらしいの」




美青「お孫さん…結構重い病気なの?」





叶実「急性骨髄性白血病…血液のガンね。発見が

遅くて、余命宣告もされて…あと一ヶ月みたい」




美青「そんな…おばあちゃんも何とかしたいよね。

それで、蝶花楼さんは、何を反対してるの?」




叶実「その子の病気の部分を吸い取って、

治してあげたいって言うの。そんな事したら

あなたが死ぬじゃないって伝えてるんだけど…」




美青「右耳の子にとっては大事な存在なんだね…」




叶実「この子の寿命ももう長くないから、

それなら病気ごとこの世から連れて行くって。

人間が耐えられないものを、こんな繊細で

儚い子が耐えられるはずがないじゃない。

苦しんで死ぬのをわかって、受け入れられない」




叶実の思いを聞いた右耳の蝶は、

どこか寂しそうに舞い、

美青の肩へと止まった。






叶実「はぁー…美青ならわかってくれるって

言ってるわよ。全く諦める気はないみたいね」




美青は肩に止まる蝶に目を向けた。



蝶は、何かを説明しているように

慌ただしく羽を動かし続ける。



言葉は伝わらずとも、懸命に思いを伝える

蝶の姿に胸を打たれた美青は、




美青「明日の放課後、この子とお孫さんに

会いに行ってみる。毎日来てるおばあちゃんは

一人しか居ないから顔もわかるし、少し

お話を聞いてみようかなと思うんだけど…」




叶実「……わかった。私の気持ちは変わらないと

思うけれど、それでもいいなら好きにして」





美青「うん!じゃあ明日、学校まで私を

迎えに来てね。病院まで案内してもらわないと」




蝶は嬉しそうに美青の周囲を舞う。




美青「それじゃ、おやすみ!蝶花楼さん!」





叶実「おやすみ。ご馳走さま。帰り気をつけて」






美青の姿が見えなくなるまで見送った叶実は、

テーブルに腕を伸ばして右頬を付け、

左耳の蝶に向かってボソッと呟く。





叶実「残された方も辛いのよ、なかなか。

自分の為に犠牲になってくれたなんて…

そんなに悲しいことある?」




左耳の蝶は、叶実の手の甲に移動して

心配そうにゆっくり羽を開閉している。




叶実は何かを思い出したかのような表情をした後

顔をテーブルに伏せ、そのまま眠ってしまった。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ