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紡「これは何?結って誰なの?説明して」
駆「いや、あの…これは…」
紡「不倫ならこの結って子を訴えないと」
美青「待って下さい!結さんは、彼に奥さんが
いることを知らないと思います!蝶花楼さん…
結さんの記憶を、奥さんに見てもらわない?」
叶実「そうね…」
叶実は手鏡を紡に持たせ、
結の記憶をもう一度再生した。
奥さん「こんな若い子…どうやって騙したの?
それにこの日は私が思い立ってアウトレットに
連れていってと言った日だわ。電話が鳴って
慌ててトイレに行ったのも、それだったのね」
美青「今の、聞こえました?もしかしたら別に
彼女がいるのかもってところ…既婚者だって
知っていたら彼女なんて言わないと思います」
紡「確かにそうね。それに、そのことを
怖くて聞けないと言ってる。この様子では
結婚しているとは知らないわね…。危うく
この子を追い詰めるところだったわ」
叶実「全て白状するなら祓ってあげる。但し、
少しでも取り繕うもんなら他の霊も憑ける。
私は嘘にすぐ気が付くわよ。どうする?」
駆は余程身体が辛いのか、
半泣きになって答えた。
駆「わかった…嘘はつかないから祓ってくれ!
結は俺の店に会社の飲み会で来て、幹事だった。
上司が酔っぱらって吐いて座布団を汚したのを、
後日結が代わりの座布団を買ってお詫びに来て…
俺は結婚していることを隠して食事に誘った。
それから何度か会って、付き合い始めた。
つい出来心で…本気じゃないんだ!俺には
紡しかいないんだ!見捨てないでくれよ!」
紡「女の貴重な時間を食い荒らしておいて
本気じゃない?どうせなら彼女を庇うくらい
したらどう?どこまでも自己中で最低な男ね!
俺の店?何言ってるの?オーナーは私よ。
私が一から作り上げ会社です。逆上せるな!
あんたは私と結婚して社員から店長になれたの。
お客様に手を出す従業員なんて雇えないわ。
茅切 駆、あなたを今日限りで解雇にします。
そして、茅切の名を名乗れるのも今日までよ」
駆「そんな…ちょっと待ってくれよ!!」
紡「私があんたに買い与えた車を売って
全額を結さんへの慰謝料に充てるわ。
どう?職と家と妻を一気に失った気分は。
これが出来心、とやらの代償よ。
お嬢さん達、縁結びのお守りを頂ける?
たった今、厄祓いが出来たところなの」
美青「はい!こちらへどうぞ!」
紡は、高いヒールをカツカツと鳴らして
颯爽と帰って行った。
彼女の背中は、夫の不倫が数分前に
発覚したとは思えないほど清々しく、
凛としていた。
後日、
紡は昼食時に結の会社へ出向き、
結を食事に誘った。
婚姻関係にあったことを伝え、
元夫が傷付けたことを謝罪し、
小切手を差し出した。
紡は、
紡「奪われた時間を金で償わせただけ。
当然の権利、堂々と生きていくのよ。
そして、今度こそ幸せになってね」
それだけを言い残して会計を済ませ、
足早に帰っていった。
小切手には
【金壱阡萬園也】と書かれていた。




