7_カラスアゲハの縁結び
強い日差しが照りつける季節。
夏休みの時期になり、連日暑い中でも
参拝客が普段より増えている。
美青は夏休み期間のみ、
平日は全て出勤することになった。
今日も授与所で接客対応をしている。
昼時で客足が落ち着いた頃、
一組のカップルが絵馬を二つ購入して
肩を寄せ合いながら願いを書いている。
叶実「知らないのかしら…。うちはカップルで
来ると別れることで有名なんだけど。ネットで
縁切り神社として名を馳せているくらいなのに」
美青「えー!知らなかった…縁結びのお守りを
買ったご参拝の方がお礼参りに来ているけど…
こう言ったらなんだけど、人によるのかな?」
叶実「美青。良縁に恵まれたいならば、まずは
悪縁を断ち切らないと。環境をクリーンにして
やっと新たな縁に結び付くものなのよ」
美青「そうだね…環境を整えないと、いい出会いも
舞い巡って来ないよね。あの二人、どうなるかな?」
叶実「さあ。聞こえが悪いから、噂に打ち勝って
縁結び神社だと言いふらしてほしいものだわ」
美青はその後も、縁切りで有名な神社だと知らずに
仲良く願いを書き、絵馬を結ぶカップルの姿を
複雑な思いで見つめていた。
彼らとすれ違うように一人の男性が訪れ、
長い時間手を合わせて祈り、
絵馬と縁結びのお守りを買った。
そして、迷いなくさっと願いを書き、
絵馬を掛けて帰っていく。
誰かを想う気持ちがひしひしと感じられて、
美青は彼の願いが叶うますように、と
そっと心の中で祈った。
あれから数週間が経ち、
お祓いを依頼したいという夫婦がやってきた。
美青はその男に見覚えがあった。
禰宜が対応している隙に、
叶実に耳打ちをする。
美青「ねぇ…あの男の人、覚えてない!?
少し前に若い女の子と絵馬を書いていたの…
ここは縁切り神社なのにって話したじゃん!」
叶実「あー、あの男。なるほど、あの子は
遊ばれてたってことね…。どうりで右肩に
生霊が憑いているわけだわ」
美青「それでお祓いに…自業自得じゃん!」
叶実「彼女の声が聞きたいわ。生霊って、
本人は自覚がないの。ここまでになるって
相当彼女に恨まれているってことだから」
叶実はお札を取り出し、近くを舞っていた
蝶の羽に数回擦り付けた。
叶実「あの男の右肩へ止まってちょうだい」
蝶は迷うことなく男の元へと飛んでいった。
そして蝶が右肩に止まった瞬間
女性の姿がはっきりと見えるようになった。
虚ろな表情で、右半身にもたれかかっている。
蝶は彼女の左耳に止まり、
花の蜜を吸うように、口吻を耳の穴へ向ける。
すると、蝶の翅は鮮やかな青緑へと変色した。
まるで孔雀のような美しい色をしている。
その姿は、カラスアゲハそのものだった。
叶実は蝶を呼び寄せ、手鏡を一周させた。
鏡には、彼女の心の声が映し出された。




