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美青「綺麗…グラデーションになってる!」
美青は叶実の後ろに回って蝶の写真を撮る。
スマホで画像検索をすると、
【オオカバマダラ】という蝶が表示された。
美青「オオカバマダラ!そっくりだね」
叶実「この子は優子さんの闇吸いをしたの。
おかえり、お疲れ様」
蝶は叶実が差し出した人差し指へと移動する。
叶実はスマホを取り出して電話をかけ始めた。
テーブルに置かれたスマホの画面には
【花村 夕緋】と表示されている。
スピーカーに設定されたスマホからは
呼び出し音だけが流れる。
このまま出るまで切らないつもりだ。
そして、10コール以上流れてから
ようやく通話になった。
叶実「いい度胸してるじゃない。私からの電話に
すぐに出ないで待たせるなんて」
夕緋「ごめん…今出先でさ…」
叶実「ふーん。せっかく卒業おめでとうって
言おうと連絡したのに、気分悪いわ」
叶実は優子に話を聞いたとは言わず、
適当に会話を持たせるようにして
通話をしたまま万華鏡部屋へと移動した。
美青も琥珀を抱き抱えて後をついて行く。
夕緋「ごめんって。来週から大学の近くに借りた
アパートに引っ越すから、それまでに叶実には
会いに行くつもりだったよ」
叶実は鏡にスマホをあてて一周こすりつける。
すると、鏡に一人の青年が映った。
後ろにはファミリーレストランが見え、
目の前には大きな海がある。
夕緋は海風にうたれながら通話をしている。
誰かと会っているようだ。
叶実「手土産持ってきなさいよ、じゃっ」
夕緋「ちょっと待ってよ、叶実!おい!!
どう考えても俺が貰う立場じゃない?」
夕緋が話している途中に電話を切り、
鏡から蝶を夕緋の元へ向かわせた。
美青「冷たすぎ!まだ話してたじゃん!」
叶実「居場所が知りたかっただけだもの。
あいつに用なんてない」
美青「ひど…」
二人は蝶の様子を鏡越しに見つめる。
蝶はスマホを耳から話した隙に
夕緋の左耳に止まった。
そして、花の蜜を吸うように、
口吻を耳の穴へ向けた。
夕緋の脳内には、
海風と共に優子の記憶が押し寄せた。




