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闇吸蝶図鑑  作者: 夜宵
24/35

6_オオカバマダラの巣立ち





季節は梅雨になり、雨の日が続く。


美青と琥珀は、窓から紫陽花を眺めていた。



美青「琥珀、晴れたら近くで紫陽花を見ようね」



琥珀は美青の膝の上に乗って

嬉しそうにお腹を見せる。



そこへすかさず叶実が現れ、顔を埋めた。



叶実「猫吸い…至福の時間だわ」



琥珀は嫌がることなく得意げな顔をしている。




梅雨空とは長い付き合いになりそうだが、

琥珀がいればあっという間に梅雨が明けそうだ。




琥珀を囲んで愛でていると、

外から叶実を呼ぶ声がした。



「叶実ちゃーん!花村です!」




美青「こんな土砂降りに…知り合い?」



叶実「幼馴染の…お母さん。行ってくる」



この大雨では濡れて風邪をひいてしまうと心配し、

タオルを持って外へと歩いて行った。



美青は叶実が少し間を置いて「お母さん」と

言ったことが引っかかっていた。




30分程話をして部屋に戻ってきた叶実は、

無言でソファにもたれかかる。


いい話ではないことは、顔を見て分かった。



美青「どうしたの?暗い顔して…」



美青からの問いに、叶実は頬に手をついて

花村さんとの会話を教えてくれた。








叶実「私の幼馴染、夕緋(ゆうひ)が高校を卒業して

来週には進学先付近に借りた部屋に引っ越すんだって。

それで…彼にとってはいずれ知るべき話をしたの」



美青「いずれ知るべき話…?」



叶実「さっき来た人は、夕緋のおばあちゃんなの。

本当の母親は、夕緋の姉にあたる人。16歳の時に

夕緋を産んで、退院したその日…彼を置いて

行方を(くら)ませたのよ」



美青「嘘…普通にお母さんに見えたよ、若くて。

じゃあ、夕緋さんは本当の母親はお姉さんだって

知らずに育ってきたんだね」




叶実「そう。優子さん、周りの親と比べて、老けて

見られたら彼がかわいそうだからって、見た目にも

気を遣っていたし、本当に大事に育てていたわ。


だからこそ…事実を話すタイミングをずっと

見計らっていたんだと思う。だって黙っていたら、

彼が結婚する時が来たらわかってしまうもの。

何で今まで話さなかったんだって言うでしょうね。


私はこれ以上にないタイミングだったと思う。

来週には独り立ちするんだから」




美青「私もそう思うよ。卒業式を避けてくれたのは

本当に愛を感じる。お祝いの日に伝えられたら

それこそショックが更に大きかったと思う。

夕緋さん…話をしたら落ち込んでいたって?」




叶実「その場では、本当のことを話してくれて

ありがとうって、それだけを言って寝たみたい。

でも今日朝ご飯を作って呼びに行ったら居なくて、

連絡したら今日は戻らない、心配しないでって。

昨日の今日だもの。心配するに決まっているわ」




美青「最悪の事態も考えちゃうよ、自分の人生に

関わることだし、姉だと思っていた人が本当は

母親だったなんて…冷静になれないよね」




叶実「そのクソ姉は、夕緋が大きくなってきてから

夕緋を捨てたのなんて覚えていないような顔をして

たまに実家に帰ってくるようになったの。それも、

小さい子供を二人連れて…。来るたびに違う男を

連れてくるみたいだから、シングルマザーね。

今も親になりきれず、女として生きているのよ」




美青「ずっと行方不明のままでいてくれた方が

よかったじゃん。罪悪感とか全くないんだね。

どうかしてるよ、普通じゃない」




叶実「優子さんは何度も来るなって言ったけど、

どうして?って。優子さんに押し付けておいて

感謝もない。子供が子供を産む、の典型例よ」






叶実がはぁ…と深いため息をつくと

オレンジと赤色の羽をした蝶が飛んできた。



蝶は、普段髪を下ろしている叶実が

珍しく一つに結った髪飾りの上に止まる。














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