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闇吸蝶図鑑  作者: 夜宵
23/35

023




正面玄関につくと、車いすに乗った

おばあさんと、鈴木さんが待っていた。



琥珀はカートのカバーをガリガリして

早く開けろ、と催促する。



そして、おばあさんが琥珀を呼ぶのと同時に

カバーが開き、琥珀はおばあさんの膝に

飛び乗った。



寂しかった、心配した、と会えなかった間の

気持ちを訴えかけるように、ニャー、ニャーと

泣き続ける琥珀。



おばあさんは琥珀が泣く度に

ごめんね、ごめんねと泣きながら抱きしめた。



しばらく久しぶりの再会を喜び合ってから、

施設に外出許可を取り、植物園に入場した。



おばあさんと琥珀は、二人で仲良く並んで

藤の花のトンネルの下を見上げる。


今年も、約束を果たすことが出来た。



おばあさん「琥珀、今年も一緒に見れたね。

一緒に見られたこと、皆に感謝しなきゃね」



琥珀「ニャッ!」



おばあさん「来年もまた、この景色を一緒に

見られるといいね…また来てくれるかい?」



琥珀「ニャーッ!」




琥珀は、いつも以上にしっかりと言葉の意味を

理解して返事をしているように見えた。





オオムラサキ。




その羽は黒く縁取られ、青紫色をしていて、

黄色と白の斑点が散りばめられている。



視界のギリギリまで広がる藤の花と、

その隙間から差してくる太陽の光。



おばあさんと琥珀の思い出の風景を

そのまま映し出していた。










その後、おばあさんと鈴木さんと、

今後についてを話し合った。



琥珀はこのまま叶望神社で暮らすことになった。


鈴木さんも家庭があり、おばあさんと同い年で

高齢の為、先を考えてお願いしたいとのことだった。


初めて会った叶実達に琥珀を任せてくれたのは、

以前叶望神社に参拝したことがあり、悩み事を

解決することが出来て、深い信頼があるからだそう。




そして、月に一回、琥珀と面会をする日を

設けることに決めた。



藤の花が咲く時期は、この植物園で会おう、と。


一緒に暮らせることが何よりの幸せだが、

将来を考えると、おばあさんと琥珀にとって

これが最善の選択だったのだろう。





おばあさんと会えたあの日から、琥珀は

以前よりも叶実と美青に心を開いた様子だ。




美青「はーい!ご飯出来ましたよー!!

今日はアジフライ定食です!」



叶実「アジフライはソースより、タルタル派なの。

さすが美青、いつ家から荷物を持ってくるの?」



美青「もーまたそれ!?私はしっかり旦那様を

探しますから!ここには住みません!」



叶実「そんなくだらないことはどうでもよくて、

あの消防士、捕まったそうよ。鈴木さんから

連絡が来たわ」



美青「くだらなくない!!って…本当に!?

よかったー…これで少し琥珀も安心できるね。

そういえば蝶は消防士に何をしたの?」



叶実「さぁ…鼓膜でも燃やしてやったんじゃない?

いくら消防士の名を背負っていても、体内では

消化できないものね。名乗る資格もない男よ」



美青「全然冗談に聞こえない…本当に鼓膜を?

あの消防士に…一体何をしたの?」



叶実「とにかく。もう捕まったことだし、私が

いる以上琥珀は安全よ。心配することないわ。

琥珀を狙う奴は一人残らず呪い殺してやる。

さて…いただきま…え、アジフライが一枚消えた…」




叶実と美青が後ろを見ると

琥珀がバレた!と言わんばかりの表情で

アジフライを咥えたまま固まっている。




叶実・美青「こら!琥珀ー!!」




琥珀の新天地は、賑やかで、暖かくて、

身の危険を感じることもなく、

これ以上にないほど安心できる場所だ。



運よく叶望神社を見つけられたのは


行く当てもなく彷徨う琥珀に

神が手を差し伸べてくれたのだろう。





この先何があっても守られ、

怯える必要のない、

琥珀にとっての終の住処を。

















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